23話 自分だけの価値
シン達は、大きな鳥居の前で一礼してから
神社の敷地内に入る
有名な神社な為に参拝客は多く
参道の両脇には屋台も多く出ていた
「なんか食べたい」
シンが周りを見ながら、そう言い出したので
「やめときなさいな」
「そうだよ、終わってから食べな」
「食べたい気持ちもわかるけど」
「その格好でこぼしたら大変よ」
周りに止められてシンはため息を漏らす
今から通る参道も
ここまでの道のりも沢山の屋台が出ていて
美味しい匂いがしている
普段食べない物が少し割高に感じる値段で売っている
なんか食べたいと全員は思っていたが、格好が格好だ
「もうすぐ着く」
「もうちょっとだから」
ルカ、ポーが先を案内していく
シンは先を見るとすれ違う人達がなんか見てくる気がする
ルカ、ポー、ウイはよく見られているし
リン、アヤノ、サリも気にしてはないけど見られている
カヤは店を興味深く見ていると店員とかに見られている
シンは、私は?と周りを見ると
周りからは見られてはいるけど
目線を逸らされたり、ギョッとして違う方向を見られる
シンはなんか見られ方が違う様な気がする
なんか変な物を見てるような視線だなと思って
少し変な気分になったが、食欲が湧いてきて
屋台に再度注目する
シンは美味しそうな匂いと
美味しそうな見た目にすぐに気を奪われて
なにを思っていたか忘れていった
「バレないかな」
「おそらくは大丈夫かなぁ」
サリ、カヤが話すとスッと全員が集まってくる
「さっきは周りを気にしていたけど
今は大丈夫よ」
「結構見られてる」
ウイ、ルカが言うとリン、ポーは少し不機嫌に
「まぁ、いつもの事ですけど」
「シンが勘違いしてくれるからいいけど」
「もうすぐ最大の障害にぶち当たるよ」
アヤノは少し先を見ながら言う
「今日は我慢させますわ、絶対」
「でも、大丈夫なの?」
リンはグッと力を込めて言うが
サリは心配そうにシンを見る
「大丈夫よ、すっごくお願いしたから」
「ウチも」
ウイ、アヤノは頷きながら言った
シンはアヤノの祖父がやっている鉄板焼き屋も
ウイの祖父がやっているホットドッグ屋も
寄らしてもらえなかった
行列がすごかったのもあるが
シンが立ち止まろうとすると
アヤノ達がシンの背中を押して先へと促した
シンが、なんで!なんでよ!って抗議しても
なんでもと返されたので
シンは、なんかもう虚しくなってきていた
シン達は参道を途中で外れて進むと
見えてきた細い道に入って進む
すると、とある建物の入り口にたどり着いた
和風作りのデカい建物で
シン達がお参りする為に目指していた本殿の
ちょうど真裏あたりに建っていた
「確かここのはずだけど」
入り口はデカくて玄関もホールの様に広いので
いいのかなって感じでポーが覗く
「どちら様ですか?」
和服姿の若い男性が中から声をかけてくる
「友達を探しにきました」
シンが言うと、和服姿の男性は少し戸惑って
「‥‥‥友達というのは?」
「龍族の双子よ」
エル、ヒルの事を名前を呼ばずにリンは答える
「この後に執り行われる神事の準備があり
申し訳ありませんが、会って頂くことが出来ません」
和服姿の男性は頭を下げて言ってきた
「少しも無理?」
「申し訳ありません」
ルカが食い下がったが
和服姿の男性は再度頭を下げてきた為に
「すいません
困らしてしまいました
失礼します」
シンが頭を下げた後
シン達は入り口から出て参道に向かって
細い道を歩いていく
「どうしようか」
先を歩いているシンが顔だけ振り向きながら言うと
皆は驚いた顔で止まっており、シンが前を向くと
「あたっ」
と何かにぶつかって止まる
シンは、さっきまでなにもなかったのにと思いながら
ぶつかった物を見ると
背の高い和服姿の髭を生やした年配男性がシンを見ていた
「すいません、よそ見をしてました」
シンは慌てて頭を下げて謝ると
髭を生やした年配男性は顔を横に振りながら
「すまんすまん
考え事をしておってな
こちらこそ前を見ておらんかった
ケガはないかね」
「はい、全然平気です」
髭を生やした年配男性はふむっと髭を撫でながら
シン達を見ると
「こんな外れた場所でどうしたんじゃ?」
シンは、えっとと思いながら振り向いてリン達を見ると
あははっと笑ってシンを見てる
シンは髭を生やした年配男性を見ると
シンをジッと見ていたので
「友達と会いたかったんですけど、会えなくて」
「ほう、そりゃいかんな
その友達はどこにいるんじゃ?」
シンは、今さっき出てきた建物を指差して
「あそこにいると思うんですけど
神事の準備をしてるからって、会えませんでした」
「そりゃまた難儀な話だな」
髭を生やした年配男性は少し考えてから
シンを見て、少し微笑む
「少し力を貸してやりたいが、子供とはいえ
どこの誰とも知れん子に「シン・フジムラ」」
シンは髭を生やした年配男性の言葉に被せるように言う
「私は人族だから縛りはないので教えれます
後ろの子達は無理だけどいいですか?」
髭を生やした年配男性は微笑んだままシンを見て
ふむっと呟くと
「ついてきなさい
案内しようじゃないか」
髭を生やした年配男性は参道の方に少し歩いて
本殿の方にある細い道を曲がって歩いていく
「そんな所に道あったんだ
んっ?行こうよ」
シンが驚きながら、振り向いてリン達に言って、歩き出す
リン、ウイ、サリはハッーとため息をついて
「どうしたらいいんですのコレ」
「全然わからなかったわよ」
「さっきの時点で強引に入ればよかったかもね」
「魔力の使い方がすごかったね」
「自然すぎ」
カヤ、ルカが、いきなり出来た細い道を見ながら進んでいく
「シンを抱いて捕まえとけばよかったかも」
「無理なんじゃない?あの格好だし」
アヤノはポーの肩に手を置いた
シン達は髭を生やした年配男性の後をついていくと
さっきの建物入り口とは反対側にたどり着いた
「ここは誰にも言ってはいかんぞ」
そう言って
髭を生やした年配男性が建物の壁にめり込んでいった
「エッ、なに?」
シンは
年配男性がめり込んでいったあたりの壁を手で触ると
手がめり込んでいった
シンは目を反射的につぶって開けると
そこは少し暗い和室だった
「わっ!シンどいて」
カヤがシンの後ろから来たので、反射的に前に出る
「なにここ」
シンの後ろでは次から次へとリン達が壁から出てくる
シンが周りを見ると
シン達が出てきた和室の少し先の襖から光が漏れていた
その襖が、スッと開いて、見慣れた2人が入ってくる
「エル、ヒル」
シンが名前を呼ぶと
エッ!と声をあげたエル、ヒルと目が合う
「なんで!‥‥って、なんでいるの?」
「皆いるの、なんで?」
エル、ヒルは声の大きさに気をつけて喋り
シン達の姿を見てエルとヒルは目を伏せる
「なんかさ、変な‥‥どうしたの?」
シンが聞くと、エルとヒルは目を伏せたまんまで
お腹の前で手をグッと握る
「スゴイ姿ね」
「みんなもお揃いなんだ」
エル、ヒルは巫女装束の格好をしていて
シン達は着物姿だった
「後でさ、着替えようよ」
「そうそう、あるんでしょ」
ポー、カヤが気まずそうな雰囲気を崩したくて
明るく言うが、エルとヒルは目を伏せたままで言う
「絶対、写真って言った」
「送ってくるの待ってたのに」
アヤノが明るく笑いながら
「送るより見せに来た方が良いと思ってさ」
リン、ルカが内心で、バカ!って思いながら
何かを言う前にエル、ヒルが
「だから、着替えて待ってたのに!」
「時間ギリギリまでお願いして待ってたのに!」
「すっごくお願いしたから大丈夫だって!」
「みんなも大丈夫って言ってたのに!」
エル、ヒルは泣きそうになりながら
それをグッと耐えて言う
「ただでさえ、神事が駄目そうなのに」
「これぐらいはいけそうって思って」
エル、ヒルがグスッと鼻をすすりながら言うのを
聞いたシンは2人に聞こえるように
ため息を吐くと
「意味ないからって私が頼んだのよ」
エル、ヒルはシンを見て涙を流して聞く
「何がよ」
「なんの意味よ」
「だって初詣なのよ」
シンが少し拗ねたような顔で言った言葉に
エル、ヒルは?と言う顔をする
「私はね
あんまり細かい事は知らないけどいい?」
エル、ヒルは、うんと頷く
「エルとヒルが初詣にね
この格好で行きたいって言うから
全員で揃って写真撮らないと
意味ないじゃ無いって思ったのよ」
「でもさ、シン」
「‥‥だけどさ」
シンの言いたい事はわかるけど
といった感じでエル、ヒルがお腹の前で握った手を見る
その様子を見ながらシンは続ける
「今日の神事に集中して欲しいと思ったのよ
んで、全部終わった後で、みんなでハシャごうって
みんなとも話して決めたのよ」
「でも、写真」
「送って欲しかった」
シンの言葉に頷くも、エル、ヒルが拗ねたように呟く
シンは、エル、ヒルを見ながら腕組みをして
う〜〜っと唸って、天井を見て、足元を見る
エル、ヒルは変な行動を始めたシンを見て驚いていた
なになにって感じでシンを見ていると
シンは携帯を取り出す
シンは携帯をイジって
少し躊躇うが写し出された画面をエル、ヒルに見せる
エル、ヒルは口を開けて
顔を歪まして我慢するも爆笑する
シンが持っている携帯の画面には
飴を持ってブスッとするシンが映し出されていた
「‥‥‥‥ほらね、笑うじゃない」
ふぅと息吐いて、シンは携帯をしまう
エル、ヒルが、落ち込んだように見えるシンを見ながら
何か言う前に
「こんだけ‥‥こんだけ待たされたのよ!
ねぇわかる!めっちゃ楽しみにしてた!
本当に楽しみにしてたのよ!わかってよ!
絶対いい物だって!引き取り物だって言われてもさ!
アンタらは持ってるんでしょうけど
初めてだったのよ!わかる?
昨日からご飯も食べれないほど嬉しかったのよ!
初めての事だったし!待ちに待ったし!
本当に嬉しかったのよ‥‥」
今度は、シンがゆっくりと下を向いていく
シンはハッーと溜息をついて
「どうって聞いてもさ
みんな笑うしさ、飴持たされるしね
七五三って言われるしで、もういいやって
ご飯も食べれないしでさ
もうね、今年はね散々だから」
シンはハハっと乾いた笑いを出して
誰かが喋る前にエル、ヒルを指差して言う
「わかった!今年まで!今年までなのよ!
散々なのは!来年の初詣から良い年になるはずなんだから!
だから、初詣はキッチリやりたかったのよ!
私は
全員で1枚写真撮ったら、コレ脱いで
私服でまた来るつもりだったんだけど
エルとヒルが着てないんじゃね‥‥」
シンはズッと鼻をすすると後ろから
ごめん、シン、調子に乗ってとか聞こえ始めた
「いいのいいの
似合わないってわかったから
コレを早く脱いで、ご飯とかお菓子をめっちゃ食いたいの」
「「シン!」」
シンは大きな声を出したエル、ヒルを見ると
真剣な顔でシンを見ていた
「「もう少し聞いていい」」
「何よ」
エル、ヒルはあと少しでいいから、なんでもいいから
この我慢強い前向きな子から欲しかった
「シンってバレーの試合」
「緊張しなかったの」
シンは、ズッと鼻をすすって
エル、ヒルに両手を差し出す
「手を出しなさいよ」
エルは右手、ヒルは左手を出すとシンは手を掴む
「「つめた!」」
「コレでも少しあったかい方よ
試合がある時はもっと冷たくなるし
緊張したりするとこうなるのよ、いつも」
「「でもコレじゃ」」
「色々と言われたけどね
私は冷たい方が気合が入るのよ
みんなは冷たい方が駄目って言うけど
‥‥‥私は冷たい方がスゴイ調子がいいのよ」
エル、ヒルは望んだ物が贅沢すぎたので
少しだけでも欲しいと思ったら、まさかの答えだった
少しの間、2人はシンの手をギュッと握っていると
エル、ヒルが来た方向から声が聞こえてきた
「誰と話してるの?2人とも準備があるのに」
エル、ヒルは
欲しかった物をくれた手が離れていくのをジッと見ていた
シン達は、ヤバっと言って、出てきた壁へとめり込んでいく
「ん?2人で喋っていたの?コッチにいらっしゃい」
エル、ヒルの後ろの部屋から顔を出した若い女性は
エル、ヒルを呼ぶ
エル、ヒルは
さっきまで欲しかった物を掴んでいた手を見て
グッと握り込む
「「絶対に!絶対に逃さないから」」
2人は笑って、呼ばれた方へ小走りで向かった




