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20話 方向を変えたら見えた物

シンは耳当ての部分に白いフワフワがついて

猫耳のついたベッドホンをしながら

リビングで勉強をしていた


なんの曲を聴くでもなく

テキトーに1時間で終わる曲を流して

曲が終わる頃に休憩に入る

そんな感じでシンが問題を解いていると

問題集の上に携帯が置かれる


携帯には電話がかかってきているが

音もバイブも切っている為に画面のみが着信を知らせている

その画面には、お母さんと出ており

問題集の上に携帯を置いた人物をシンが見上げると

シンの母親が笑顔で携帯をかけていた

シンはベッドホンを外して、半眼で母親を見ながら


「なに?」

「今週にある試験の為に頑張ってるのはわかるけど

返事ぐらいしてあげなさい」


シンの母親は携帯を切って

キッチンでコーヒーの準備をしだす

シンは携帯を見ると

不在着信が10件、メッセージが50件くらいあった

シンは拗ねたように口を尖らせて

メッセージを見る所を開くとすぐに電話がかかってくる

シンはビックリするが、電話をスピーカーで取ると


〔ヤッホー!シン!〕

「昨日ぶりね、ポー」

〔あはは!昨日ぶり!シン!〕


このところ、毎日のように夜は全員で通話をしている

シンは相槌をテキトーにしながら勉強していた

たまにくる質問には話を聞いてない事もあり

勉強中なのでテキトーに頷いている事が多かったので


〔んでさ、昨日言ってたアレなんだけど〕


こういうのがくるとシンは思いっきり悩む

どれだっけ?なんだっけ?

焦ったように周りを見ると

コーヒーを用意した母親が半眼で携帯を見せてくる

画面には文化祭 テスト後と映し出されていた


「ああ、文化祭に行けないかって事?」

〔あれ?テストの日はアヤノの家に泊まるんだよね〕

〔そうだよ!ウチで打ち上げの後

皆んなで泊まるんだよね?〕

「‥‥‥は?」


アヤノが通話に参加してきて言った言葉に

シンが困惑していると

目の前で母親が携帯の画面をスクロールする


金曜日  シン テスト後 泊まり

土曜日  文化祭でもう1回泊まり

日曜日  文化祭後にお迎え

私はお父さんの所で2回休み


ガタッとシンは椅子から立ち上がって

母親を睨むが

母親はしれっと横を向いてコーヒーを飲んでいる

シンは携帯のスピーカーをOFFにし

話す所を押さえて、母親に向かって言う


「‥‥また私が知らない予定なんですが」

「たまには息抜きも必要だと思わない?」

「母さんの?私の?」

「シンよね」

「母さんが決めたの?」


シンの母親は携帯を指差してから、自分を指差して

両方と口パクで言ってくる

シンは椅子に座って、携帯のスピーカーをONにする

ウイが喋っていたのか声が響く


〔‥‥って、シンのお母さんが言ってたから

来るんだよね?〕

「私が知らない予定で動かないといけないみたいよ」

〔楽しみ〕

〔ね!〕

〔ねぇ〜〕


シンが拗ねたように答えると

ルカ、エル、ヒルが楽しそうな声で続ける


〔文化祭は1日目から入れるよ

本当は関係者以外無理なんだけど

リンとポーが申請してた〕


カヤが軽く言った言葉にシンは驚きながら


「いや、大丈夫なの?それ」

〔保護者がサインしてくれたからオッケーよ〕

〔コッチもだけど、シンの所もだよ

なんだったら

シンのお兄さんとお姉さん達のサインもあるし〕

「‥‥へぇ〜、そうなんだ」


リンとポーが返した言葉にシンが半眼で母親を見ると

母親は笑顔で手を振る


「わかったわよ

テストが終わったら電話すればいい?」

〔終わる時間に迎えに行くよ〕

「いや、学校に行ってるでしょ

終わるのは昼よ」


シンは

なんかどっかで聞いたような話をしているなと思いながら

アヤノに返すと


〔試験は中学の校舎でやるんですから

そのまま、私とポーが迎えに行くわよ〕

「いや、授業は?」

〔文化祭の準備で昼までだし、部活もないよ〕


リンとポーに言われてシンは黙り込む

なんかこの先は聞かない方が良かった気がするけど


「まさか‥‥ホントに?」


シンが言うと、今まで騒がしかった携帯が静かになる


「シンのメイド姿ね!

お姉ちゃん達もしてたし!

お母さんは楽しみにしてるわよ!」


シンの母親の言葉に

シンはやっぱりそうだったと天井を見上げると

携帯から歓声が上がる



シンは部屋に戻って

携帯の開いていないメッセージを見ると

携帯をベッドに軽く投げる

別に携帯が悪いわけではないが

メッセージに軽くムカついたので投げた


「アッチはこうで、コッチはこうか‥‥

まぁ、しょうがないよね」


そう呟いて

机に向かって金曜日にある試験の為に勉強を始める



試験の日

シンは始発で母親と一緒に開法学院に向かって出発し

校門で母親と別れる


「しっかりね」

「はぁい」

「ホラ、目を覚ます!」


母親に頭をチョップされ

シンは半眼になって校舎の方へ向かって歩き出す

母親はシンの背中を見送りながら


「まぁ、書類審査で受かってるくらいだから

あとはイケるでしょ」


そう軽く呟くと

シンの母親は、足取りも軽く駅へ向かって歩き出す



シンは試験会場と張り紙がされている教室に入ると

シンが最後だったのか

1つだけ空いている机に座る

受験生は20人くらい

最終的には5、6人くらいしか受からないらしい


でも、受かって成績さえ落とさなければ

大学まで学費等のお金がかかる事の全てが免除される

だからこそ、難しいんだけどと思いながら

筆記用具を机に出して

シンは息を吸って吐いて気合いを入れて

試験の開始を静かに待った



試験が終わり

試験管が答案を集めて確認をしてから教室を出て行った

シンは筆記用具をしまって

少しホッとしていると他の受験者が退室していった

伸びをしてから

席から立とうとすると

教室に制服を着た中学生2人が入って来た

その2人はシンを見て笑顔で


「久しぶり!」

「行くわよ、シン」

「ポー、リン

久しぶりね」


シンは目立つのが嫌だったので

言いながら教室を出ようと歩き出すとドアの前で後ろから

ポーに抱きつかれる


「逃がさないから」

「別に逃げてないから」


そのままポーに押されるように

またはポーを引きずって、シンは教室を出て行った



そこからシンの知らない予定通りに事は進んでいく

シンはみんなと合流してから

お昼ご飯は、小学生の校舎にある食堂で食べて

文化祭の準備している教室に連れていかれる


ルカ、エル、ヒルから

何人かを来年から同じになると紹介されたが

シンはどう挨拶していいのかわからずに

笑顔でよろしくとだけ言っておいた

アヤノ、ウイ、カヤが持ってきた色々なメイド服から

シンは断固としてロングスカートのメイド服で

おとなしめなのを選んだ


その後は、アヤノの家に集合して

試験お疲れ会を開いてもらって

文化祭で周るコースとかを相談し、1日が終わった



シンは嫌な夢を見て目覚める

なんの夢だったかはわからないが

原因はハッキリとしていた

寝ているシンの体に腕が乗っかっているだけならいいが

お腹の上に顔が2つ乗っかっている


「どけっての」

「む〜」


シンは小声で呟いて

お腹の上に乗っているカヤとウイの顔をどかして

シンは起き上がる

アヤノから借りた大きめの寝巻きが着崩れているのを

なおしながら1階に降りていく


「はやいわね

もっとゆっくりしてればいいのに」


階段を降りて

すぐの和室のテーブルに座っているアヤノの祖母が

シンに声をかけて手招きをして

和室のテーブルにつくように促す

テレビを見ていたアヤノの祖父はチャンネルを変えて

キセルの先を灰皿にあててタバコを消す


「なんか毎回ご馳走になって

ありがとうございます」

「いいのよ

気にしないの、道楽みたいなもんなんだから」

「お前さんぐらいの時は、礼だけできりゃいい」


なんか聞いた事ある言葉だなぁと思いながら座ると

目の前にお茶が入った湯呑みが置かれる

すると、煎餅が乗った皿とポットを持ったアヤノの父親と

母親が和室に入ってきた


「前も思ったけど、本当に早起きね

よく眠れた?」

「なんか乗っかられて、変な夢を見ました」

「あはは!まぁ、あんな人数で寝るとそうなるわよね」


アヤノの母親が快活に笑うと

拗ねたようにするシンの頭をアヤノの父親が撫でる

アヤノの祖母はテーブルの上に和紙を置いて

シンの顔よりデカい煎餅を難なく割って

小さくなった煎餅をシンに渡して

手についた粉を和紙の上に落とす


「あれ?見ないの?」

「見たくないもんもあるだろう」


アヤノの母親が祖父に尋ねると

アヤノの祖父はそっけなく返す


「なんかあるんですか?」

「ん〜、前のバレーの試合を見てるんだよ」

「前の‥‥負けたやつ」


シンの疑問にアヤノの母親が煎餅をパキッと鳴らして

食べながら答える

シンが呟くとアヤノの父親がシンの頭を撫でながら


「嫌だったか」

「いえ‥‥見た事ないんで‥‥

見てみたいです」


シンの答えを聞くと

アヤノの祖母がテレビのチャンネルを変えて

動画の再生画面にする

映し出されたのは

全国大会準決勝の2セット目が始まる所だった


そこから、試合終了まで誰も喋らなかった

時折、お茶をすする音や煎餅が割れる音はあるものの

実況が流れる中、静かに全員が画面を見ていた


試合が終わるとシンはため息をついて

何か言おうと口を開くが、何も言わずに口を閉じた

その様子を周りにいた者が興味深く見ていると

シンの後ろからアヤノとルカが抱きつく


「何見せてんのよ!」

「シン、大丈夫?」


アヤノとルカが話しかけると

シンは後ろで心配そうにしている全員に振り返って


「自分の負けっぷりを見てただけ」


シンは、そう言って笑う

それを見ていたアヤノの父親が少し笑って立ち上がる


「今日は俺が作ろう」

「は?‥‥手伝うわよ」


アヤノの父親がキッチンに向かいながら呟くと

驚いたアヤノの母親が追いかける

テレビの画面には

頭からタオルを被って顔は見えないシンがいた

シンはまた口を開くが、拗ねたように口を尖らして言う


「だから、暑いって言ってんでしょうが!」


アヤノ、ルカそれに加えて

くっついてきたポー、エル、ヒルを押し退けて

シンは、キッ!となっていた



「珍しいじゃない

アンタが朝ご飯を作るなんて」

「いいもんを見せてもらったからな」


キッチンで

アヤノの父親がベーコンを薄切りにしている横で

卵とフライパンを準備しているアヤノの母親が

夫の足を軽くペシペシと蹴る


「でも、シンちゃんは遊びでやるって言ってんのよ」

「何年だ?」

「は?」

「今年で何年間、全国制覇していない」


夫が真剣に聞いてくるので

アヤノの母親は、ん〜っと考えてから


「‥‥さぁね、20か30くらいじゃない?

あんまり期待しない方が身の為よ

お父さんみたいにモジモジしなきゃならなくなるわよ

それにね、何度も言うけど、シンちゃんは」

「お前が1番モジモジしてるだろ」


アヤノの父親が言うと

アヤノの母親が夫の体に軽く体当たりする

ベーコンを薄切りしていた手がズレて厚切りになってしまう


「お前のそういう所が見れたから朝ご飯を作るんだ」

「‥‥それはアンタが食べなさいよ」


顔を赤くしてソッポを向く妻を見て優しく笑いながら

アヤノの父親は朝ご飯の支度を続けた


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