表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/17

10話 今はツンデレと呼ぶ

公園の方に向かって15分程歩いていくと

先頭を歩いていたアヤノの父親と母親が森の様な所にできた小道に入っていく

その後をついていくと狭い道だけども

ちゃんと手入れされた石畳の道で

道の脇にある木々もキチンとされており

歩きやすくなっていた


そんな小道を進んでいくといきなり店というか、家と店がくっついている大きい建物が現れる


〔鬼肉〕


ちょうど店側の入り口横にある看板をシンが見て


鬼肉おにくって知ってる

なんか結構あるよね」


シンがそう言ってから、ん?と疑問が浮かんだ顔をすると、エルとヒルがシンを覗き込む


「ここって、全種族オッケーだっけ?」


シンの言葉にアヤノが、ここは大丈夫!と返す


「早くいらっしゃ〜い」


アヤノの母親が店の入り口で呼んだので

足早に向かうことにする



シンは店内に入った時に、何かわからないが

かしこまってしまう

知らないけども懐かしい古い店舗って感じがある店造り

新参者が入っていいのかっていう思いと

この雰囲気を壊したく無いという思いが

どこからか湧いてくる様な不思議な感じがするお店だなっとシンは思って店内を見渡す


店内は鉄板付きのカウンターに10席

鉄板付きの机に6人掛けの座敷が5となっていた

カウンターの中ではゆったりと年配の男性と年配の女性が何か準備していた


「お邪魔します」


アヤノ以外が次々と挨拶をして店内に入っていく


「はい、いらっしゃいませ

ちょっと待ってて頂戴ね」


年配の女性が手を止めてシン達に声を掛けてると


「アヤノ〜!席を間違えないでよ〜!」


店の奥からアヤノの母親の声がする


「はぁい!わかってるって!

リン、ルカ、カヤ、ポーはコッチで

あとはそっちね!」


6人掛けの座敷に振り分けていく


「んで、シンはコッチ!」


カウンター席の1つを床にあるボタンを押しから、捻って引っこ抜く

引っこ抜いた席を店の奥に持って行って

代わりのカウンター席をアヤノが持って来て

抜いた所にはめ込んで、グラつかないか確認をして


「ハイ完成!」


アヤノがシンの方に両手を広げて

どう?みたいな感じで聞くと店内は静寂に包まれる

ちょうどカウンター内で、年配の男性が包丁を研ぎ始め、シュッ!シュッ!と言う音が静かな店内に響いた


「え?シン用の特別席だよ!」


アヤノは焦って説明をする

確かに元あった椅子では座ったら

シンはカウンターから頭も出ないかもしれない

だが、新しく用意されたカウンター席は見た目がお子様用の椅子だった


ルカがスッとシンに近づいていき

無言で抱き上げると椅子に座らした

シンはなんて言ったらいいのかわからない為に抵抗せずに座る

確かにシンがカウンターで食べるには最適の高さになっている

だが、見た目が完全にお子様用になっている


シン以外が携帯を出して無言で

シンの座っている写真を撮り始めると静かな店内に


カシャ!シャッ!カシャ!カシャ!シャッ!


という音が響いた

アヤノの両親も店の奥からカウンターの中に出て来て座っているシンを見ている


「どう?シン?」


アヤノが笑いを堪えてシンに聞くと

シンは手すりの部分を触ったり

背もたれに少し背をもたれさせたり

鉄板からカウンター席側に出ている木の部分を撫でてから少し笑顔になって


「優しくてなんか良い」

シュイン!‥シュッ!シュッ!


アヤノの両親とアヤノが音の方を見たので

シンもつられて見ようとしたら


「いいでしょう」


年配の女性がクスクスっと笑いながら

シンに話しかけ、続けて言う


「自慢の一品なのよ」

「えっ!焼き肉屋さんなのに?」


シンが驚いていると、アヤノの母親は笑いながら


「次は家具屋になろうかしらぁん」


とか言い出し、アヤノと一緒に笑っていた


「てか、写真撮るな!撮影禁止!」


シンは椅子をぐるっと回して座敷に向かって写真を撮っている全員に言った



「皆様のお相手は私達夫婦が勤めさせて頂きます」


年配の男性と女性が座敷に座る皆んなに向かって頭を下げて挨拶をする

座敷の皆んなは、深々と頭を下げていた

シンは座敷の方を見て

えっ?なんで私だけコッチ?と言おうとして

カウンター席前にある鉄板の方を見ると

自分よりデカい肉の塊が鉄板にドン!

と乗ったので絶句した


アヤノの父親が包丁で素早く肉の塊を切り分けていき、アヤノの母親がでかい皿に盛っていく

カウンター越しにアヤノの母親から年配の女性へと肉が盛られた皿が渡されて

座敷の鉄板上にサッと肉が滑らされると年配の男性が焼き始める


オーという歓声と共に座敷では肉食達が待ちきれないっていう気配がヒシヒシと感じる

それとは別の座敷では野菜が盛られた皿が置かれて、年配の女性が野菜を焼いたり、煮物を出したりしていた


カウンター席では、シンの前にあったデカい肉が小さくなり、アヤノの父親が包丁からコテに持ち換えて小さくなった肉を焼いていた

コテに対して肉は小さいが別に苦にしている様子でもなく、鉄板の上で肉が踊る様に焼かれてシンの前にある小皿にスッと置かれた


「好みもあるけど、最初はそのまま食べてみて」


アヤノの母親は野菜をサッと切り分けて、皿に盛りながらシンに話しかける


「いただきます」


シンは箸で肉をつまみ

フーフーと息を吹きかけ、冷ましてから

パクッと食べて、何回か噛んで飲み込むと何も喋らなかった


「どう?」


アヤノの母親が問うと


「最高です」

「でしょう」


シンとアヤノの母親は笑い合った

アヤノの父親が色々な肉を次々と焼いていき食べ頃になったら、シンの前に置かれた皿に盛ってくれた

アヤノの父親は、シンの食べる速度に合わせて間を置いたりしてくれる

アヤノの母親は野菜を切って座敷の方に渡して年配の女性が野菜の説明をして焼いていく

年配の男性は肉食の食べ盛りを相手に慣れた手つきで、素早く焼いていた


「こうやっても美味しいわよ」


アヤノの母親が焼き上がった肉を野菜に包んでくれたり、ご飯と肉じゃがを出してくれたり、タレを追加したりしてくれたりとシンが食べるのを邪魔せずに欲しいものをくれる


しばらく経って、座敷の方がこれからだ!って時にシンは満腹になってしまう


「大丈夫?」


アヤノがシンに近づいてそう言う

アヤノの両親はシンの状況を察して、もう料理を出しておらず

デザートのケーキを冷蔵庫から出して、準備していた


「幸せ‥‥」

「でしょう」


シンが呟くとアヤノから、なんかさっきも聞いた答えが返ってくる

シンは、余韻に浸ってボーッとしたい

次のケーキに向かってあたまを休めていたい

そんな事を思いながら背もたれにダラーと体を預けながらどこか虚空を見ていた


「どれがシンのお好みだった?」


アヤノがシンに聞くと

ボヤっとしながらもシンはカウンターの空になった小鉢を指差して


「どうしよう‥‥お母さんの肉じゃが

‥‥しばらく食べれないかも」


グッ!と年配の男性から変な音が聞こえた

アヤノの母親と年配の女性が笑い出して

アヤノの母親はアヤノの父親の背中をバシバシと叩きながら


「どうする?アンタの肉より私の肉じゃがだってさ」

「それはシンちゃんのお母さんに悪い事しちゃったわね、謝らないと」


年配の女性がシンに言うと

シンは、ハッとした感じで背もたれから体を起こして


「いや、あれ?何を?

待って!謝んないでいいです!

アヤノ!私に何聞いたの?」


それを聞いて座敷の皆んなが


「本心を聞きました」


シンに向かって手と声を合わせながら言った

そんな時に突然アヤノの父親がガバッと顔あげて口を大きく開いて笑い始めた

笑い声が小さくて聞こえるか聞こえないほどだけど、顔は恐ろしく笑顔だ

アヤノの父親はよろけながら

アヤノの母親に寄って行くと耳元で何かを言った後に店の奥に歩いて行った

背中と肩を震わせながら


「うわー、今日はお父さん使用不能だわ」


アヤノが父親の背中を見ながら、そんな事を言っていた

シンの前にケーキを乗せた皿を持って立つアヤノの母親を見ると真っ赤になっており、目を潤ませながら


「あ〜も〜、ごめんなさいね

あ〜、旦那からシンちゃんへの伝言で

「妻の料理は最高だ!俺もそう思う!」

だってさ」


アヤノの母親はそう言うと、サッとシンの前にケーキを出して店の奥に小走りで行ってしまった


「あちゃ〜、お母さんも使用不能になっちゃったか」


アヤノが言うと年配の女性が


「アヤノ、妹がいい?弟がいい?」

「みんなの前でやめて!恥ずかしいから!」


アヤノのが赤くなって、年配の女性に抗議すると、年配の男性以外が笑い、食事が続いていった



「どうでしたか?直接見た感想は?」


店の奥にある居間で年配の女性が座っている年配の男性に話しかけている

住宅兼店舗の為

店の奥は広めの居間になっている


年配の女性がお茶を入れた湯呑みを

TVの画面を見て座っている年配の男性の横にある大きいテーブルに置く


「なっとらんな、客の前での態度では無い」


年配の女性はクスクスと笑いながら

自分用の湯呑みにお茶を入れて

テーブルを挟んで男性の対面に座る


「そっちは後で叱るとして、どうでしたか?」


年配の男性は近くにあった箱を引き寄せて蓋を開ける

中にはキセルがあり、慣れた手つきでジャグを詰めて火をつける

キセルを咥えて口の中に煙を溜め込み

煙を吸い込むとプカっと煙を吐き出して


「今度くる時は10日前に知らせるようにアヤノに言っておけ」


年配の女性は目をスッと細めて


「余程気に入ったのね」


年配男性はまたキセルをくわえて

少し悪そうに笑みを浮かべると


「焼きもん屋に来て、煮物が良いとは世間というものを教えてやらんとな」

「あら、さすが優しい椅子を作るおじいちゃんです事

おやさしい、おやさしい」


ゲホゲホっと咽こむ年配男性を見ながら

年配女性は自分のお茶を飲む


「その試合、本当にお気に入りなんですね」


年配男性が見ていたTVの画面は、録画されていたバレー全国大会の3回戦の再生動画

年配女性は画面に映る試合を見ながら思い出す



孫のアヤノが苦戦したと勝てたのは運だった

そんな言葉を口にしていた

4連覇してくるっと言って出て行った孫がそんな事を言うのだ


悪いかもしれないが

ここ最近の孫の試合は見ていない

スポーツ全般に言える事かもしれないけど

団体戦で二つ名持ちが3人のチームなんて

誰がやる気が出ますか

私がやっていた時だって

二つ名持ちに負けても皆んなが称えてくれた

よくやったとかね


動画をアヤノからもらって見た夜は笑ったわ

夫婦で!久しぶりに!

こんな子がいたなんてね

敗色濃厚どころでは無く

敗北は確実と予想するのが当たり前

仲間達はレベルが違ってやる気無し

結局は負けた

戦力、技術、環境が天と地

別に判官贔屓とかね

そう言う意味でなく


食らいつく気概と姿勢

絶対に挑む者

鬼族はね

本当に好きなのよねそういうの


アヤノの今までの試合を見ても

相手側は明らかにやる気を失くして

挑む事も、噛みつく事もしない

そんな試合見てもと思って

いつも結果だけ見てたのよね


アヤノが泣きついてきたのは昨日の事

娘‥‥アヤノの母親からも話を聞いて

すぐに言った言葉は

動画とか無いのだった

だって、信じられないんだもの


アヤノの携帯で動画を見た夫が

詫びも兼ねて、明日ここに呼んでやれと言った

午前中にお客さんを呼んだ事も予約をさせた事も無かったのに

シンちゃんに予定があるなら

朝からでいいから絶対連れて来いだなんて

まぁ、私もそう言ったけどね


その後、夫が倉庫から

新しく作ったカウンター席を出してきた時は

少し赤くなっている夫の背中を叩いて笑ってしまった

そう言う事はもう、早く言ってよね

娘と似て天邪鬼なんだから


けどね、シンちゃんって

来年はコッチに来てくれないかしら

二つ名は持っていないけども

孫と並び立つ姿を見て見たいわ



見ていた試合が終わって

年配男性がキセルを箱にしまい出した


「予定の客を迎えてしまうか」

「そうね、次は焼き物が美味いって言う客よ」


グッ!年配の男性から変な音が鳴る


「あら、我慢しなくても良いのに」

「仕事中はやめてくれ」


アヤノの祖父からの敗北宣言に

コロコロと笑うアヤノの祖母がいた

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ