絶目
幼稚園時代、、、
僕の性格の一部が形成し始める。 内向的で他人とのふれあいを避け、友達もいなかったあの頃。
家や幼稚園にいるときはいつも心の鍵穴の前でただ呆然と穴を覗いていた。 誰も入って来られぬように、、、。 今の僕はこの空間でもう一人の僕を鍵穴から覗いている。 そう幼少期の僕を覗いている。 二十数年前の僕を見つめていると悲惨に思えて涙が止まらなくなった。 彼は現在の僕になるべく、時間、分、秒、思考と選択を寸分の狂いもなく生きてくるのだと思うとたまらなく胸が苦しくなる。 僕は号泣している。 彼を助けられない腹立たしさと哀れみを感じながら、、、
「全ては僕の責任なんだ、、、 ごめんな、、、」泣きながら僕は彼に息を押し殺しながら言った。
彼には届くはずが無いのわかっている。 この空間に映しだされた昔の僕なのだから。 それでも僕は込み上げてくる刹那さを堪えることが出来なかったのだ。 僕と同じ人生を送らせてしまうという余りにも無常な真実は耐えれなかった。 何としても彼に伝えたい、僕の決めてきた間違った選択を伝えたかった。
人の心には色がある、見渡す限りのマリンブルーの心、太陽の光が降り注ぐ心、不毛な大地に荒れ狂う黒い雲な心
あの頃の僕はどんな心の色をしていたのか、、、
その時考えられない出来事が起こった。
彼が僕に微笑みながら手を振ったのだった。
「ま、ま、、 、ま、さか、、、 ありえない!」
僕を認識出来ることなどありえない。 胸の鼓動が一挙に高ぶり速くなっていくのが感じられる。
今まで号泣していたのが嘘のように止まった。何が起こっているのか? 思考は停止している。
そして彼はゆっくりとこちらの鍵穴を覗きだした。