表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
暗転と  作者: 石葉竜
5/6

隔絶

 外の世界はどうなっているのだろう?ふとそんな疑問が頭の中に過ぎった。

この空間に溶け込んだ僕にはもはやどうでもいい疑問だったが、何故か考えてしまった。

あと数秒で僕はこの空間の映し出された映像に同調しなければならない。この空間の記憶とともに。


 1980年 2月21日 午後6時14分


 僕は千葉県の田舎(東京人から見ると確実にそう言われるだろう。)の何の変哲もない町に生まれた。

小学生低学年の頃は人口は少なかったが、中学の頃になると都市や地方からの転居者が増え町から市になった。

それでも、畑や田圃が多く農家中心で、落花生生産地として有名な町である。

 有名と言っても今は多分知られていないと思う。昔は日本一の生産高を誇っていたらしいが本当かどうか? そして、田舎を自負してよいくらいにビルなんてものは一つもなかった。 あるのは落花生の畑、田圃、古い神社にスーパーが2軒だけの小さな町だった。


 幼稚園時代の僕は泣き虫でいじめられっ子でいつも馬鹿にされていて、 一度2人に羽交い絞めにされ、もう1人に加速のついたジャンプキックをお腹にうけた僕は床に足から倒れのたうち回った事があった。それでも周りの園児達は見てみぬふりか、にわかに笑っている者ばかり、丁度教室に入ってきた先生も気づかぬふりだった。

 その日の夜、母に全てを打ち明けると母は泣きながら僕を抱きしめ「強くなるのよ、、、強くなるのよ、、、」とずっと言っていた。

 

 次の日の朝、いつもなら校門まで僕を送り届け家に帰る母だったが教室まで入ってきて先生に説教しはじめた。

怒り狂った母は「あなたそれでも先生なの?ちゃんと1人1人の子供をみてますか!?」と今にも目から火が点く勢いだった。最終的には苛めた3人を僕に謝らせた。その時は「これから仲良くするから。」「ごめんな。」と言っていた3人は母が帰ると一変し笑っていた顔が鬼の形相に変わったのだ。


 そしてその日から卒園するまで僕は1人になった、、、 隔絶という言葉さえ知らなかった僕でもこの感覚を知ることになった。 寂しさ、刹那さ、孤独、、、 母の言う「強くなる」の意味は1人でも耐える事なんだと思い始めていた。


 

 隔絶への第一歩だった。

 

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ