第2章: 虚無へ還る者
虚無の旅人
次元が崩壊し、現実が崩れ去り、生命が終焉を迎える。
しかし、それを何百回、何千回と目にしてきた者にとって、崩壊とは単なる日常に過ぎなかった。
オリオンは、五百以上の次元を渡り歩いた放浪者。
彼が訪れる世界では、すべてが滅び、彼の前に立ちはだかる者はことごとく消されていった。
だが——
絶対的な力を持つ彼の内には、それ以上の虚無が広がっていた。
退屈。空虚。
もはや、彼の心を揺さぶるものは何もない。
オリオンはアンタレスの言葉にすぐには反応しなかった。目はアンタレスに向けられているが、表情には何かが変わったのがわかる。
「つまり…それがお前の理由か？」 その声は低く、ほとんど囁くようだった。
オリオンの手がぎゅっと握られ、初めてその周りに虚無のオーラが激しく震え始め、オリオンの左腕が素早く再生されていった。
「ふざけるな、アンタレス。」 その声はより深く、鋭く響いた。
「お前は自分を被害者だと言うのか？ この世界が拒絶したと言うのか？」
次元のひび割れがオリオンの周りに次々と現れ、目に見えぬエネルギーが激しく脈打つ。
「本当に何かを救いたいなら、破壊なんて選ばないはずだ！」
オリオンは一度手を振りかざすと、次元を無理やり引き裂いた。
空気がひび割れる音が響き、それはまるでこの次元自体がオリオンの怒りに恐れているかのようだった。
「俺とお前を一緒にするな、アンタレス。」
オリオンの腹部を貫いていた氷が瞬時に崩れ、腹の傷も再生が始まる。
「面白いな。」
「お前は俺と違うと言うが、どうだ？今のお前を見ろ、オリオン。お前が作った次元のひび割れ……それは守護者の力ではない。破壊者の力だ。」
「俺はただ運命を早めた。それに、遅かれ早かれ……お前も同じことをすることになる。」
アンタレスは挑発的にオリオンをさらに刺激した。彼はオリオンがもっと我を失うことを望んでいた。
「黙れ。」
「お前の話などどうでもいいが、ひとつだけ、お前が俺を虚無の象徴だと侮辱し、ただの罰を受けた神々のゴミ箱だと言ったことが気に入らない。」
オリオンの声は低く、重く響く。もはや言葉はない。聞く理由など、もうどこにもなかった。
突然、周囲の世界が歪み始める。 空気が震え、まるで現実そのものがオリオンの怒りに恐れているかのように感じた。
オリオンは前に手を掲げ、そして空虚な空間を握りしめる。
「ヴォイド・ブレイカー。」
オリオンの声は冷徹に響く。それは脅しではなく、死の宣告そのものだった。
ズズズズズズズ……！！！
オリオンが手を一振りした瞬間、次元のひび割れが四方に広がり、空が裂け、大地が崩れ落ちた。
その場にあった光は、虚無に吸い込まれていった。
アンタレスはもう笑っていなかった。
数瞬の間に、オリオンはアンタレスの前に立っていた。
警告も、余計な言葉もなかった。
「次元の切断。」
次元のひび割れがアンタレスに向かって突き刺さった——その力は、存在そのものを現実から消し去るほどの力を持っていた。
オリオンが剣を振るった瞬間、起こるべきではないことが起きた。
この次元の空間はもはや形を持たなくなった。
空と大地は次元の破片に砕け散り、方向を失って飛び散っていた。
光はここに存在してはならなかったはずなのに、闇もまたここには耐えられなかった。
残されたのは、ただの虚無だけだった。
「チッ——！」
アンタレスは剣を上げ、攻撃を防ごうとした……しかし恐ろしいことが起きた。
オリオンの一撃は、ただの攻撃ではなかった。
それは、破壊そのものであり、意思を持って動いていた。
アンタレスが剣を振るって防ごうとしたその時——
次元のひび割れが背後に移動し、ちょうどアンタレスの背後に現れた。
「アアアアアアア！！」
アンタレスの体から黒い血が噴き出す。
彼の体の一部——それはもはや現実に存在しなくなった。
初めて、アンタレスは長い間感じたことのない痛みを味わった。
「これ…」
彼は自分の手を見つめた——あるいは、彼の手の残骸を見つめていた。
その部分は裂けていなかった。燃えてもいなかった。切られてもいなかった。
その部分は…もはや存在しなかった。
オリオンの一撃は、ただ一点を狙っていたわけではなく、その効果は次元のルールを変えて広がっていた。
オリオンは立ち止まることなく、攻撃を続ける。
アンタレスは、今まで感じたことのない絶対的な破壊を目の当たりにしていた。
彼が無敵だと思っていた次元も、崩れ去る運命にあった。
オリオンが作り出した次元のひび割れは、アンタレスの肉体を傷つけるだけではなかった——それは、彼の存在そのものを引き裂いていた。
「…何だ…？俺は…？」
彼は虚ろな目で空を見上げ、微笑んだ。
「へっ…やっとわかった、オリオン。」
「お前は確かに俺とは違う…それが…だから…」
彼の目は、崩れかけた空を空虚に見つめていた。
「…お前は俺が思っていたよりも、ずっと恐ろしい。」
「じゃあな…」
「そして…あのバカどもを殺せ——オリオン」
それが、彼の最後の言葉だった。
アンタレスは完全に消え去った。
アンタレスが消え去ったことで、この次元はその安定を失い、彼がいた次元の中にいたモンスターが死ぬと、次元自体も崩壊する。
オリオンが作り出したひび割れが暴れ出し、次元を完全に引き裂いた。
ズズズズズズズ…！
大地は崩れ、空は裂け、光と闇が混ざり合い、形を失った混沌が広がった。
オリオンはその中に立ち、冷徹な目でその光景を見つめていた。
もう、救うべきものは何もなかった。
彼はすぐにでも消え去る前に、立ち去ることを決心した。
手を一振りで、オリオンは最後の次元の裂け目を開き、そこを歩み去った。
彼が消え去ると、次元は完全に崩壊し、最後には虚無だけが残った。
しかし……
宇宙の最も高い頂点、現実の境界を越えた場所で。
「どうやら、俺たちのシステムに反逆する者が現れるようだな。」
「そうみたいだな。でも、なぜアンタレスが真実を話してくれたのに、あのオリオンは彼を殺したんだ？」
「愚かだからじゃないか？」
「だが一つ心配なことがある。その者の力は恐ろしい。恐らく、我々のような三人の神々と同等かそれ以上だ。」
彼らは見守っていた
ご覧いただきありがとうございます！
この第一章では、次元を旅するオリオンという人物を紹介しました。
彼は圧倒的な力を持ちながらも、同じサイクルを繰り返すことに飽きてしまった存在です。
しかし、今回の旅はいつもとは違う——彼自身でさえ理解できない「何か」が待ち受けていました。
皆さんはオリオンと彼の世界についてどう思いましたか？
彼が足を踏み入れた新たな次元に興味を持ちましたか？
ぜひコメントで感想を聞かせてください！
それでは、次の章でお会いしましょう！
