第2章:虚無を歩む者
虚無の旅人
次元が崩壊し、現実が崩れ去り、生命が終焉を迎える。
しかし、それを何百回、何千回と目にしてきた者にとって、崩壊とは単なる日常に過ぎなかった。
オリオンは、五百以上の次元を渡り歩いた放浪者。
彼が訪れる世界では、すべてが滅び、彼の前に立ちはだかる者はことごとく消されていった。
だが——
絶対的な力を持つ彼の内には、それ以上の虚無が広がっていた。
退屈。空虚。
もはや、彼の心を揺さぶるものは何もない。
オリオンが反応する前に、アンタレスはすでに彼の背後に現れていた。その剣は絶対零度の氷を纏い、鋭く煌めいていた。一閃、凍てつく冷気がオリオンを包み込み、破壊不可能な氷の牢獄が彼を捕らえた。
しかし、完全に凍る寸前、オリオンは素早く足元の次元を引き裂いた。瞬間、重力が彼を虚無へと引きずり込み、アンタレスの絶対零度の拘束から遠ざけた。
辿り着いたのは、彼自身の「虚無領域」。ここでは、あらゆる法則が意味をなさず、何者も彼を縛ることはできない。
氷の層が音を立てて砕け、完全に消滅した。
「クソッ……!」
オリオンは荒く息を吐き、怒りを抑えきれなかった。
「あの野郎……本当に俺を殺せると思ったのか? ふざけるな……!」
彼の瞳は鋭く、殺意に満ちていた。そして、迷いなく先ほどの次元の裂け目へと飛び込む。
「アンタレス、お前はここで終わりだ!」
「《アークティック・エンブレイス》。」
アンタレスの冷静な声が響く。まるで静かな囁きのようだった。
オリオンが大地に足をつけた瞬間、刺すような冷気が広がる。瞬時に分厚い氷が地面からせり上がり、彼を一撃で凍らせようとする。
「チッ……!」
咄嗟の反応が彼を救った。強烈なエネルギーを放出し、オリオンは瞬時に空へと跳び上がる。ほんの一瞬の差で氷の罠を回避した。
彼の目が怒りに燃える。
そして、躊躇なくアンタレスへ向かって疾駆する。拳には虚無の力が収束し、空間を震わせるほどの衝撃が渦巻いていた。
「《ディメンショナル・ラプチャー》!!!」
次元を破壊するほどの一撃がアンタレスの顔面を直撃する。空間が激しく揺れ、無数の次元の亀裂が周囲に広がっていった。
「そう簡単にはいかんぞ、オリオン。」
しかし、アンタレスは不敵に笑う。
自信に満ちた瞳がオリオンを見据え、剣を一振りすると、オリオンの攻撃をまるで無意味なもののように弾き飛ばした。
「お前は甘い。相手を見誤るな。俺は"七大神"の一柱だ。」
だが、オリオンはただ冷めた笑みを浮かべる。
「それが何だ?」
彼の目は冷たく、まるで全てに興味を失ったかのようだった。
「俺もまた……"虚無の神"だ。」
その瞬間、オリオンは空間を引き裂く。次元の裂け目の奥から、不気味な咆哮が響き渡った。
「GRAAAAAAARGHHH——!!!」
アンタレスの表情がわずかに歪む。その音は彼の精神を揺さぶり、一瞬の隙を生じさせた。
「終わりだ、アンタレス。」
オリオンは左手を掲げ、さらに次元を裂いた。
そこから現れたのは、一振りの剣——"虚無"そのものから生まれた武器だった。
刀身には脈動するような黒いエネルギーが渦巻き、破壊を求めるかのように揺らめいていた。
「消えろ……《ヴォイドクリーバー》!!!」
一閃。
周囲の空間が裂け、次元のひずみが広がっていく。その裂け目はアンタレスを飲み込もうと、ゆっくりと近づいていた。
オリオンは剣を高く掲げる。
絶対的な虚無の力が、それに応えるように激しく脈動する。
アンタレスはバランスを崩し、驚愕の表情を浮かべた。
「これで終わりだ。」
——しかし、まさにその時だった。
「KRRRAAKKK——!!!」
耳をつんざくような亀裂音が次元全体に響き渡る。
突如、これまでとは比べ物にならないほどの冷気が空間を満たした。
まるで世界そのものが息を止めたかのように——全てが凍りついた。
「……何だと?」
オリオンの剣が止まる。彼は眉をひそめ、辺りを見渡した。
異変が起きていた。
空間が歪み、闇が濃くなっていく。
アンタレスは、まだ不安定な体勢のまま、しかし不敵に微笑んでいた。
彼の瞳には、確固たる自信が宿っている。
「終わるのはお前だ、オリオン……俺ではない。」
その瞬間、風が止まった。
空間が圧縮されるような感覚。
次元そのものが息を潜めているかのような、不吉な沈黙。
——何かが、目覚めようとしていた。
ご覧いただきありがとうございます!
この第一章では、次元を旅するオリオンという人物を紹介しました。
彼は圧倒的な力を持ちながらも、同じサイクルを繰り返すことに飽きてしまった存在です。
しかし、今回の旅はいつもとは違う——彼自身でさえ理解できない「何か」が待ち受けていました。
皆さんはオリオンと彼の世界についてどう思いましたか?
彼が足を踏み入れた新たな次元に興味を持ちましたか?
ぜひコメントで感想を聞かせてください!
それでは、次の章でお会いしましょう!