第1章:虚無を歩む者
虚無の旅人(虚無の旅人)
次元が崩壊し、現実が崩れ、生命が終わる。
しかし、それを何百回、いや何千回と見届けてきた者にとって、崩壊とはただの習慣に過ぎない。
オリオン——彼は五百以上の次元を旅してきた漂泊者。
訪れる世界のすべてで滅びを目にし、行く手を阻む者を容赦なく消し去ってきた。
だが——
絶対的な力を持つ彼の内には、それ以上の虚無が広がっていた。
退屈だ。空虚だ。
もはや彼の心を揺さぶるものは何もない。
だが、次の次元への扉を開いたその時、オリオンはかすかな違和感を覚えた。
今まで訪れたどの世界とも異なる、未知なる空気——かつて一度も感じたことのないもの。
そして——
そこで彼は、「それ」に出会う。
この旅が、これまでの旅路とは異なるものになることを、オリオンはまだ知らなかった。
「ドォォォォン!!」
爆発が轟き、オリオンが訪れていた次元が激しく揺れた。
赤黒い砂漠がどこまでも広がり、空は重く垂れ込めた黒雲に覆われている。
息苦しいほどの死の気配が充満し、大地そのものが崩壊しそうな異様な空間だった。
そんな中、響き渡るのは獣のような低い唸り声。
オリオンの目の前には、巨大な影がゆっくりと姿を現した。
鋭い爪を持ち、真紅の瞳を輝かせた怪物がこちらを睨みつけている。
しかし——
オリオンはただ、無表情のままそれを見つめていた。
「……またか」
彼は軽く息を吐きながら、ゆっくりと手を掲げる。
その瞬間——周囲の空間が揺れ、空気が震えた。
「ヴォイド・エグゼキューション」
手を振り下ろすと同時に、目の前の空間が真っ二つに裂けた。
暗黒の亀裂が生まれ、そこから虚無の深淵が広がる。
怪物が咆哮を上げるも、その声すら歪み、深淵へと引きずり込まれていく。
地を這うように必死に抵抗するが、すでに手遅れだった。
——数秒後、怪物の姿は完全に消えた。
オリオンは冷たい目でその光景を見届けると、小さく息を吐いた。
「つまらん……またこれか」
足元の砂を軽く蹴りながら、彼は手をかざす。
すると、背後の空間が音もなく裂け、黒い次元の裂け目が生まれた。
まるで深淵そのものが脈打つような波動が広がっていく。
オリオンは振り返ることもなく、ゆっくりとその裂け目へと足を踏み入れた。
しかし——たとえ虚無の中にいても、彼は逃れることができなかった。
この退屈さからは。
「……何か、俺を生かすものはないのか?」
そう呟いた瞬間、オリオンの姿は次元の裂け目に飲み込まれた。
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[休息の地 - 虚空]
オリオンは、自身の休息の地へと戻った。
ここは——何もない空間。
形も、音も、時間すらも存在しない、完全なる虚無の世界。
彼は静かにノートを取り出し、ペンを走らせた。
「第532次元、完了。さて、次はあとどれほどの次元を処理すればいい?」
その時だった。
ノートを閉じる間もなく、目の前に新たな次元の裂け目が生まれた。
オリオンは小さく息を吐き、面倒くさそうに裂け目を見つめる。
「はぁ……またか。休む暇もないな」
だが、違和感を覚えた。
この裂け目から感じる気配——これまでの532の次元とは明らかに異なる。
まるで、この先に未知なる何かが待ち受けているかのような、不吉な感覚が広がる。
「……この感じは何だ? 何かがおかしい。この裂け目の向こうには、一体何が——」
迷うことなく、オリオンは手を振り上げる。
次の瞬間、目の前の空間が裂け、黒い深淵が開いた。
「ヴォイド・ステップ」
そして、彼の姿はその闇へと消えていった。
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[未知なる次元 - 未知の次元]
足を踏み入れた瞬間、異様な寒気がオリオンの体を包み込んだ。
辺りには濃い霧が立ち込め、視界を奪われる。
これまで訪れたどの次元とも違う。
空間そのものが冷たく、まるで何かが支配しているかのような、異質な圧力が漂っていた。
「……ここは今までの次元よりも遥かに不気味だ。一体何が起こっている?」
その時だった——
「ブワハハハハ!これは面白い!死にたがりが迷い込んできたか!」
突如、轟くような笑い声が次元全体に響き渡る。
その声は、四方八方から降り注ぐように広がっていた。
オリオンは鋭い目を向け、警戒を強める。
「誰だ? どこにいる? 姿を見せろ、愚か者」
——突如、背後から冷たい囁きが聞こえた。
「ここだよ、次元の旅人よ」
オリオンの目が見開かれる。
——いつの間に背後へ!?
迷うことなく、彼は目の前の空間を引き裂き、即座に攻撃を放った。
次元の裂け目が光速で襲いかかる——だが、その一撃はあまりにも容易く避けられた。
「焦るな、オリオン」
その声は落ち着いていた。まるで、先ほどの攻撃など取るに足らないと言わんばかりに。
「自己紹介をしよう。俺の名はアンタレス——ただの神だ」
そして、にやりと笑う。
「お前の命を消し去る、な」
ご覧いただきありがとうございます!
この第一章では、次元を旅するオリオンという人物を紹介しました。
彼は圧倒的な力を持ちながらも、同じサイクルを繰り返すことに飽きてしまった存在です。
しかし、今回の旅はいつもとは違う——彼自身でさえ理解できない「何か」が待ち受けていました。
皆さんはオリオンと彼の世界についてどう思いましたか?
彼が足を踏み入れた新たな次元に興味を持ちましたか?
ぜひコメントで感想を聞かせてください!
それでは、次の章でお会いしましょう!