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とりあう

作者: hagisiri

とある地面まで照らす日当たりの良い平和な森に家族思いのオオタカが住んでいました。オオタカには4匹のヒナがいました。来る日も来る日もオオタカは餌を見つけてきてはヒナたちに食べさせていました。決して楽な日々ではありませんでしたがオオタカはヒナたちの成長を嬉しく感じていました。ヒナたちはすくすく育ち巣立ちの日が近づいていました。それはオオタカにとって嬉しくもありますがそれ以上に悲しくもありました。

「せっせこせっせこ」いつものように餌を探しているとカラスに出会いました「こんにちはオオタカさん。今日もヒナたちのために餌探しですか?ご苦労様です」「こんにちはカラスさん。いえいえ、親として当然の役目です。カラスさんは何故ここに?」「それがこの間私にもヒナが生まれたんです」「おめでとうございます!お互い子育て頑張りましょう。では私は餌を探すのでこれで」オオタカは飛び去って行きました。

オオタカさんが餌を探していると「はぁ」とため息をつくカラスさんを見つけました「カラスさんどうかしましたか?」とオオタカさんが声をかけます「なかなか餌が見つからなくて」とカラスさん「地面や木の上にはリスやネズミなんかがたくさんいますよ」とオオタカさんが親切に教えます「早く飛ぶのが苦手な私にもできますかね?」と心配そうに聞くカラスさん「あそこを見てください、木に穴が空いてるのが見えますか?あそこにはリスが住んでいます。おまけにリスの集めた木の実なんかも入っているのでカラスさんはそれをもらうといいと思います」とオオタカさんがいいます「なるほど。そういうのを食べればいいんですね。参考になりました」と笑顔を見せてカラスさんは飛び去って行きました

数日が経ったある日オオタカさんは餌探しの最中、しばらく会っていないカラスさんにも餌探しの調子を聞こうとカラスさんを探しますが見当たりません。オオタカさんは探す場所を変えたのかな?と思いヒナたちのために集めた餌を持って巣に帰ります。しかしそこにはいつものようにピーピーと餌を待つヒナたちの様子はなく白いふわふわの産毛と芯のしっかり通った黒い羽が落ちていました。

オオタカさんは目に涙を浮かべながら森中を一晩中飛び回りました。そしてカラスさんの巣を見つけ出しました。カラスさんは痩せこけているひなと一緒に巣にいました「おはようございますオオタカさん。何か御用でしょうか」とカラスさんは震えた声でいいます。しかしオオタカさんは無言で歩み寄ります。カラスさんは必死で叫びました「本当に申し訳ございません。許してください」と震えながら話し続けます「私にはリスやネズミを捕まえることができませんでした。リスの巣から木の実をとってもヒナたちは食べることができません。日に日にヒナたちの餌を待つ声も聞こえなくなっていきました。もうこれしか手段がなかったんです」オオタカさんはそのまま足を進めカラスさんとそのヒナの頭をコチンコチンと叩き続けました。

葉の落ちた葡萄の木から果実が実るほどの時間が経過した頃オオタカさんは新しいヒナたちに恵まれていました。この日もオオタカさんは餌を集めていました。「おはようございますオオタカさん。なかなか餌が見つからなくて大変ですね」フクロウさんに声をかけられます「キエーーーーー」オオタカさんは翼を大きく広げて威嚇します。オオタカさんはあの日以来、巣の近くに住んでいる鳥たちを攻撃して追い払っていました。「そんなに邪険にしないでください。何もする気はありませんから」とフクロウさんは落ち着いた様子で話します。「これお近づきの印です」とフクロウさんはノネズミを置いて飛び去って行きました。

次の日もオオタカさんは餌を探していました。しかしオオタカさんは以前巣に近づいてきたトンビを追い払う時、目を怪我してしまった影響で以前のように餌が見つからず、餌探しに苦労していました。「こんにちはオオタカさん」とフクロウさんが話しかけてくれます「キエーーーーー」昨日に懲りずに声をかけてきたことに驚きつつもまたフクロウさんを追い払おうと威嚇をします「その怪我では餌探しも難しいでしょう。ヘビを取ったのですが私の口には合わなかったので。どうぞ」と数匹のアオダイショウを置いて飛び去って行きます。ヘビをヒナに与えながら考えます。「今の私ではヒナたちに餌を探すことも満足にできない」オオタカさんは餌を食べさせ終わった後決心して眠りについます。

次の日また餌を探しに行きます。すると「おはようございます。いつにも増して熱心に餌を探してますね」とフクロウさんが声をかけてきます「はい。巣にヒナがいるもので」とオオタカさんは答えます「おぉ、なるほど」とフクロウさんは少し驚きます「威嚇してしまいすみませんでした」とオオタカさんは謝罪します「いえいえ。雛を守るためなら当然のことでしょう」とフクロウさんは笑顔で答えます「ヒナたちにこれをどうぞ」とノネズミを数匹置いてフクロウさんは飛び去って行きます。

オオタカさんは今日も餌を探して飛び回っていました。やはり自力で餌を見つけることはできません。オオタカさんはフクロウさんを探し始めます。この日はフクロウさんを見つける事ができずたまたま見つけることのできた蝶々を1匹だけ加えて帰ります。しかし巣にはヒナたちの姿はなく、近くにはお腹を膨らませたアオダイショウさんがいました。オオタカさんはアオダイショウさんに向かって飛びかかりました。お腹の膨れたアオダイショウさんを捕まえるのは簡単でした。「けっ。捕まっちまったか」アオダイショウさんは威勢よく言いました「何故わざわざ天敵である私の子を狙ったのですか?」と泣きながら聞きます「被害者ぶるなよ。お前だって俺の家族食ったくせに」とアオダイショウさんは臆さずに話します「だから復讐しにきたのですか?」とオオタカさんは強い口調で言います「違うね。あんたらに食われんのは曾曾曾曾祖父さんの頃から決まってる。ただ最近フクロウがバカみたいにネズミ取ってくから食うもんが無くなっただけだよ。もういいだろ、さっさと食え」アオダイショウさんは目を瞑ります。オオタカさんは嘴でアオダイショウさんの頭をプツンとちぎりました。

オオタカさんは日が落ちるまで森を飛び回り続けました。そしてフクロウさんの巣を見つけました。そこには見たこともないほどのネズミの山ができていました。「フクロウさん、あなたがネズミを乱獲したせいでヘビに私の子が食べられました」と震えながらオオタカさんは訴えます「私のせいですか?ヒナが死んでしまったのは残念ですがどうせあなたも自力じゃ捕まえられなかったでしょう?」とフクロウさんが冷酷に言います「あなたが乱獲しなければ自力で見つけられたかもしれない。できたに違いない」オオタカさんは今にも飛びかかりそうな暗い前屈みになっています「私があなたに餌を何度か与えたときに私が餌をたくさん持っていることは気づいていたでしょう。その時は大人しく餌をもらっておいて今更独り占めしている事に文句を言うのはあまりに自分勝手なんじゃないですか?」とフクロウさんは冷静に答えます。オオタカさんは何も言い返せず、フクロウさんに飛びかかります。しかし数日まともに餌を食べておらず目の怪我もあるオオタカさんは返り討ちに合ってしまいまします。「オオタカさんあなたの能力不足を私のせいにしないでください。八つ当たりされてもあなたのヒナを蘇らせることは私にはできません」とフクロウさんに言われます。オオタカさんは体十の痛みとともに目を閉じました

オオタカさんが目を覚ますと森では見た事ないような青白い光が視界に入ってきます。「あっ目を覚ましたよ」と声が聞こえそちらを向くと二人のヒトさんがいました。

それから私は透明な壁の中に入れられました。翼を広げて思いっきり飛び回ることはできません。森のお友達と話すこともできません。でも餌はヒトさんが定期的に運んできてくれるので飢える事もありません。

私は1匹のヒトさんに連れられて彼の巣に行きました。そこには鮮やかな黄色をしたセキセイインコさんがいました「初めましてセキセイインコのピーです。あなたほどの大きさの鳥は初めて見ました。お名前は?」とセキセイインコさんは話しかけてきます「どうも。オオタカです。そのピーと言うのは?」とオオタカさんが無気力に聞きます「飼い主さんがつけてくれた名前です。あなたはないんですか?」とセキセイインコさんは首を傾げます「すみません。飼い主?親見たなものですか?今まで森から出た事がなくて」とオオタカさんは続けて質問します「飼い主さんはあそこに立っている人です。餌をくれたり、巣を掃除してくれたり、ヒナを孵化する時手伝ってくれたりしてくれます。それよりあなた森から来たんですか?羨ましいな。なんでも自由なんでしょ」とおしゃべりなセキセイインコは一度にたくさん喋ります「なるほど安全な環境だとそんな考えになるんですね。私はあなたが羨ましい。森では餌は自分で見つけなければ餓死します。みんな生きるために利己的になってしまいます。挙げ句の果てにはヒナや卵は他の生き物に食べられます。意味もなく殺される事もあります」とオオタカさんは平和に生きてきたセキセイインコに嫌味を言います「見てください私の羽は飼い主さんに切り落とされました。私が空を飛んで逃げ出さないためです。孵化は手伝ってくれますが生まれたヒナたちは話す事もできず何処かへ連れていかれました。お話しする事だって決まった生き物以外ありません。楽に生きていてもいいことばかりじゃないんです。こんな何もない生涯をいいものなんて言わないでください」とセキセイインコさんは涙ぐみながら話します。

その日の夜オオタカさんはヒトさんが眠った後、壁から見える空に向けて飛び立とうとしましたが「ゴチン」透明な壁はここにもあるようです。「それはガラスだよ。見えないけど壁があるの。外に出たいならそのよこの棒を下におろしてからガラスを押すと外に出れるようになるよ」とセキセイインコさんが教えてくれます「ありがと。」さっきの口論を気にして少し気まずく返します「さっきは感情的になっちゃってごめんね。オオタカさんと話せて楽しかった。またね」とセキセイインコさんは笑顔で答えます「ピーはこの巣から出たい?」とオオタカさんは外を見ながら聞きます「私は飛べないからな」セキセイインコさんはあいまいに答えます「出たいの?」オオタカさんはガラスを押しながら質問を続けます「飛べるならね」セキセイインコさんは続けて答えます。オオタカさんはセキセイインコさんを足で掴みます「何?お腹すいたの?あの箱の中に餌はあるよ」とセキセイインコさんは慌てて説得します。オオタカさんは「飛ぶ」とだけ言って翼を広げました。

巣の外に出ると地面に土はなく黒い石で覆われていて、信じられない程大きいヒトさんの巣や同じ種類の木が不自然なくらい等間隔に並んでいました。「うわー。お家の外ってこんなに暗いんだねー。初めて見た」とセキセイインコさんが感動して言いました。「ところでこれどこまで行くの?」とセキセイインコは尋ねます「ピーちゃんに森みせる」と言いオオタカさんは星が見えないほど明るい夜空に消えていきました。

おわり

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