S級ランクがあっさり殺される!
テオドールは、タイチョウとともにダンジョンの最深部にいた。
S級ランクのプレイヤーは、既に息絶え、
横たわっていた。
話しかけても、反応は無かった。
まだ敵の気配があると思い、あたりを見回すが、気配は無い。
テオドールは、愛野薬子からもらったロザリオのお守りを、使ってみることにした。
しかし何も起こらなかった。
「なぜだ、なぜ何も起こらない。これが本当に死人を生き返らせるアイテムなら、このS級ランクのプレイヤーは間違いなく生き返るはず、それなのに・・・。
おい、まさか、S級ランクだろ!生き返るのにふさわしくないということなのか!?」
ビスマルク「残酷な話ですが、そういうことになりますかな。」
いつの間にか、宰相のビスマルクも駆けつけていた。
ビスマルク「この者は、己がS級ランクであるということを鼻にかけ、あろうことか、役に立たないパーティーのメンバーを囮にして、自らは逃げようとしていたとのこと。
それゆえ、生き返らせるのにふさわしくないと判断されたのでは?」
その挙げ句に、自分が殺されてしまったということになるのか。
テオドール「なんたることだ・・・。」
そして、それはもしかしたら自分にも当てはまるのではないか?という考えが、テオドールの頭の中をよぎった。
もしかしたら、愛野薬子は、そのことを教えるために、わざわざこのアイテムを手渡したのだと。
ビスマルク「それに、遺体の状態がこの状態では・・・。」
テオドール「しかし、S級ランクのプレイヤーを、こうもあっさり仕留めるとは、相当強い相手なのではないか?」
その近くに、数名の戦闘不能状態のアルマムーン兵が倒れていた。
テオドールは、その兵たちにロザリオのお守りを使った。するとたちまち、戦闘不能状態から回復した。
テオドール「なんと、やはり本当のことだったのか。」
兵たちが語る。
「陛下、申し訳ございません。恐ろしく強い相手で、邪悪な魔法使いといった感じで、その恐ろしい魔法の力によって、あっさりと葬り去られてしまったのです。」
テオドール「ビスマルク!もしや、何か心当たりがあるのではないか?」
ビスマルク「おそらくは、悪の大魔王の手先、それもかなり高位の者かと。
薬草・ポーション・アイテム錬金研究所に狙いを定めたのも、彼らが研究している錬金の力を悪用するためと、推察されます。」
一方で、『異世界プレイヤーランク付け協会』の理事も兼任しているビスマルク。
ビスマルク「プレイヤーのランク付けについて、説明しますね。」
プレイヤーのランク付け
Aランク
Bランク
Cランク
Dランク
Eランク
Fランク
大きく分けてこの6つ。この上にさらに、
S級ランクがあり、S級となった者には最強のプレイヤーの称号が与えられ、それとともに特権も与えられるという。
テオドール「しかし、あの者は本当にS級にふさわしい者だったのか?
もしかしたら、ニセ者だったとか。
いずれにしても、あのような者がS級では、ランク付けそのものに対する信用にも関わる。ランク付けの権威が失墜する。」
そして、何か役に立つものや、金目のものでもいいからと、お宝を探しあてたが、既に引き払った後であり、何も残されてはいなかった。
再び敵が攻めてこないとも限らないということで、緊急配備をかけることになった。
しかしその後も、これといった動きはなく、手がかりもつかめないまま、時だけが流れた。