ゴブリンの巣【テオドール目線】
私はアルマムーン帝国の皇帝、テオドールだ。
愛野薬子は、見事に上薬草50個と、ハイポーション50個を錬金で作ったようだ。
いったいどんな錬金を使っているのかは企業秘密のようだが、とにもかくにも、回復アイテムは確保できた。
しかし、この妙なアイテム、ロザリオのお守りとは何だ?アイテムの方が生き返らせるのにふさわしい人間を選ぶとは?
まあいい、どちらにしろ、持っていくことにするか。必勝祈願と思ってな。
いよいよゴブリンの巣に突入するところだ。
「陛下。ゴブリンたちはやはり、ダンジョンの奥に潜んで、迎え撃つ構えです。」
「やはりそうか。よし、まずは歩兵たちを突入させる。
歩兵たちはエサだ。ゴブリンたちが向かってきたところ、後ずさりしながら、洞窟の入口付近までおびきよせる。
もちろん、直接剣を交えることはない。
洞窟の入口付近では、弓兵部隊が待ち構えている。そこでゴブリンたちを一網打尽にする、という作戦だ。」
そして作戦は予定通り決行される。
正直な話、こんな作戦が本当に成功するのか?という不安もあったようだが、結末は意外とあっけないものだった。
いたずらに数の多さに頼るだけのゴブリンたちは、アルマムーン帝国軍の精鋭の前に、成すすべもない。
「弓隊、放てー!」
ヒュッ!シュッ!ヒュッ!
ドスッ!
「うええっ!」
ゴブリンたちは弓隊の放つ矢の餌食になる。
生き残ったゴブリンたちは、もはや戦意を失い、巣を明け渡し、逃げていった。
思ったより、手応えが無くて、逆に拍子抜けしている。もう少しくらい手応えがあるものと踏んでいたが、所詮はザコのゴブリンか。
「ゴブリンの頭は?」
「ゴブリンの頭も、どさくさにまぎれて、逃げました。」
「わかった、追っ手の必要は無い。お宝をいただくぞ。」
「はっ!」
あとは、お宝をいただけばいいと、たかをくくっていた。
ところが、ダンジョンの一番奥の方では、大変な事態が発生していた。
「うわああ!大変だ!S級ランクのプレイヤーが、あっさり殺されたぞ!」
テオドール
「何!? S級ランクのプレイヤーが!?
そうと聞くと、こうしてはおれんな。
俺の剣と、回復アイテムと、それからロザリオのお守りを用意しろ!
案ずるな。こういう時のために、ダンジョン脱出用の魔法は、必須だ。」
俺は、ダンジョンの一番奥まで向かっていった。そこに何が待ち構えているのかも知らずに。