ゴブリンの巣【愛野薬子目線】
そして、テオドール皇帝がゴブリンの巣の遠征に行く日がやってきた。
私はさっそく、テオドール皇帝に、上薬草50個とハイポーション50個を届けに行くために、テオドール皇帝の選りすぐりの精鋭部隊が待機する、城前広場へと足を運んだ。
テオドール「おお、約束通り来てくれたのか。そして注文通り、完成させてくれたのか。」
ええ、そうです。品物を献上した後、私はもう一つ、テオドール皇帝のために用意したあるアイテムを渡したのです。
テオドール「それは何だ?」
実は、これも錬金で作ったアイテム。
ごめんなさい。研究所のみんなには内緒で、勝手に錬金用のアイテムを持ち出して、作ったの。
命の石×世界樹の葉=ロザリオのお守り
命の石は、死の呪文を受けると、代わりに砕け散って、身を守ってくれる石。
世界樹の葉は、死んだ仲間を生き返らせてくれる。この2つを錬金で組み合わせて、
このロザリオのお守りを作ったということ。
いずれも1回使うと無くなってしまうけど、ロザリオのお守りは、何度でも使えるし、何度でも身を守ってくれる優れもののアイテムよ。
テオドール「こんなアイテムを私のために用意してくれたのか。
この戦が終わったら、あらためて私との結婚の話、考えてくれるな。」
ええ、考えておくわ。
もう出発の時間。テオドール皇帝の一行は、ゴブリンの巣の遠征に向かっていった。
あと、言い忘れていたけど、ロザリオのお守りは、アイテムの方が生き返らせるのにふさわしい人間を選ぶというらしいの。
絵真「薬子さん、なんとなく悲しい目をしてたな。本当はずっと研究所で研究をしていたかっただろうに、もうすぐ皇帝のところへ行かなきゃならないなんて。」
久保「まだ皇帝のところへ行くって決まったわけじゃないだろ。
それにさ、薬子先輩は、僕にとっても研究所のアイドルなんだからね。
もしかしたら、この僕、僕にもチャンスが巡ってくるかもしれないし。」
私たちは、今日もまた錬金コロッケを食べた。サラダと、オレンジジュースもいただいた。
そして、テオドール皇帝はというと、大軍勢を率いるかと思いきや、わずかな手勢のみを引き連れて、ゴブリンの巣へと向かっていた。
ゴブリンの巣は、帝都から程近いところにある、自然の洞窟だった。ダンジョン内の戦いでは、地の利はゴブリンの方にあった。
テオドール「ダンジョン内は狭い通路も多い。そんなところに大挙して押し寄せても、混乱を招くだけだ。
だから、ダンジョン内での戦いに長けた、精鋭部隊を引き連れてきたのだ。」
テオドール皇帝は、突入を命じた。