封印
「道人、ごめん。ボクは道人と付き合うことはできない」
采奈の返事は、決して想像していないものではなかった。
告白する前は、当たって砕けるもの悪くない、と思っていたのである。
それでも、実際に采奈からお断りの言葉をもらうと、ショックだった。
頭が揺さぶられ、視界がゆらゆらと揺れる。
制服姿の采奈が、背景の鴨川とともに、歪む。
そして、僕の口からは、自然と「どうして?」との言葉が出る。
采奈に問い掛けたつもりはなかった。
それでも、その言葉は、采奈に届く。
「決して道人のことが嫌いなわけじゃないよ」
采奈の言葉は、本音なのか、慰めなのか――今の混乱した頭では、それを判別することなど、到底できない。
「ただ、ボクは道人とずっと友だちでいたいんだ」
采奈のその言葉を、僕はネガティブな意味としてしか捉えることができなかった。
「……それって、僕のことは異性として見れない、ってことじゃないの?」
「違う! 道人、違うよ!」
采奈は、慌てている――ように見えた。
「言葉にするのは難しいんだけど、道人と男女交際する世界線もあったんだと思う」
「それはどういう意味? 来世でまた会いましょう、ってこと?」
「違う! そういう意味じゃない!」
采奈は繰り返し首を横に振る。
「道人には理解してもらえないかもしれないけど、ボクにとっては、道人や、そのほかのみんなと友だちで居続けることが大事なんだ」
「僕と付き合うよりも?」
「……そういうことにはなる」
采奈は、言いにくそうに、言葉尻をすぼめる。
自分でも、最悪のことをしているという自覚がある。
僕は、フラれた後におとなしく引き下がらず、采奈に追及をし、采奈を困惑させているのである。
それは、采奈のためではない。
かといって、僕のためにも決してならない。
それを続ければ続けるだけ、僕自身が惨めになっていくだけである。
そのことには気付いていた。
それでも僕は、追及を止めることができなかった。
采奈を諦めきれなかったのである。
「……でも、采奈、僕と付き合うことと、仲良し六人組を存続することは両立できるんじゃないか?」
「道人……」
「だって、僕と付き合っても、僕と付き合っていることはほかの四人に黙っていれば良いじゃないか。僕は、土日に采奈とデートできればそれで良い。いや、別に土日にデートできなくても……」
「……道人、違うんだ。そうじゃないんだ……」
僕は、自分自身で傷口を広げただけだった。
「道人には申し訳ないんだけど、道人と付き合うことはできない。だけど、ボクは道人と今までどおりの関係を続けたい。道人に何と言われようと、ボクの気持ちは変わらない」
采奈は僕の目をまっすぐに見つめ続けている。
それは、僕に想いが伝わることを祈っているようでもある。
しかし、僕の目の焦点は定まらない。
采奈と鴨川が、また歪む。
静寂の中、今まで川の「せせらぎ」に聞こえていたたものは、「せせらぎ」ではなく、水と石とが激しくぶつかり合う音だということに気が付く。
四日前の大雨で増水して、流れが激しくなっているのである。
――そうだ。この川を使って、清算しよう。
この告白をなかったことにしよう。
この時、僕は、僕の誤った恋を、鴨川の水底に封印してしまうことを決めたのである。
3歳の子どもが一番好きなのは、「パウ・パトロール」です。先週も、映画館で、「パウ・パトロール」の映画を観に行きました。
親としては、コンテンツが面白いかどうかというより、教育的な観点が気になってしまいます。
クレヨンしんちゃんは、下品だから見せたくないなとか、アンパンマンは、最終的に暴力で問題を解決するから見せたくないな、とか、そういうことを考えてしまいます。
「パウ・パトロール」も、「俺の正義が騒ぐぜ!」が決め台詞のポリス兼スパイのチェイスが主人公なので、僕的には子どもに見せるかどうか悩むところです。
他方、ロッキーという、リサイクルが得意技で、ゴミ収集車を乗り回す雑種犬がいるので、子どもにはロッキー推しになって欲しいなと、僕と妻とでひたすらロッキーを勧めています。
しかし、子どもの推しは、レギュラー陣で唯一の女の子犬であるスカイです。
ドルヲタの血を継がせてしまっていて、ひたすらに申し訳ないです。。




