表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/17

契約した二人

 キルヒャーは無言でその場に佇んでいた。

 なぜこんな場所にチェリアが待っていてと頼んできたのかもわからない。だがどうしてもそこで待っていてほしいとチェリアが言ってきたのだ。

 チェリアとの約束だった。他の男と付き合わない代わり頼み事は決して断らないと。他にもいくつかある。

 そしてそれをたがえたら別れると言われた。

 だから頼まれたら断るわけにはいかない。

 そしてチェリアはまだ来ない。

 人通りのない街のはずれ、どうしてチェリアがここを指定してきたのかもわからない。

 日が暮れてきた。どれほどの時間がたったのだろう。

 さっきまでは晴れていたのに雨が彼の額にはねた。

 ぼんやりと彼は上を見る。

 それでも彼はチェリアを待っていた。

 雨は徐々に激しさを増している。キルヒャーは雨でにじむ視界の中チェリアの姿を探した。チェリアはまだ来ない。


「もう、どうすればいいんすか、あんなにも真摯な愛を踏みにじることができるなんて信じられないっす」

 こいつに真摯なんて難しい単語を理解する頭を持っていたんだなあ。

 そんな関係のないことをカーライルは思っていた。

「土砂降りの雨の中一時間兄貴はチェリアを待っていたんでっすよ。でもチェリアは来なくて俺が駆けつけなかったら大変なことになっていたっす。俺が兄貴を説得して家に戻らせて、それでチェリアがどこにいるのか確かめようとチェリアの住んでいるところまで行ったんす」

 憤懣やるすえない。

 そんな気持ちでチェリアの住む女学校の寮に向かった。

 もちろんそんな場所にグレンのような怪しげな男が入れるわけがない。

 何とか忍び込もうとしたが警戒が厳しくなかなか目的は達成できなかった。

 漸くチェリアに出会えたのは翌日のことだった。

「お前、どうしてこなかったんだよ」

 ずぶぬれになって待っていた姿を思い出し思わず感情的になった。

「私は待っていてと頼んだだけよ、でも私が後から行くってはっきり言ったかしら」

 チェリアはそんなグレンを鼻で笑った。

「それで、あいつどうにかなったかしら」

「そうなる前に俺が止めたんだよ、兄貴にもしものことがあったらお前どうする気だったんだ」

 ちっとチェリアは小さく舌打ちをした。

「余計なことを」

「おい。お前兄ことどう責任」

「あいつがどうなろうと私の知ったことじゃないわ、それとあいつが私の言うことを聞かないという選択肢があったということを忘れないで、あいつが勝手にやったことよ」

「お前が言うことを聞かないと別れるって」

「そうよ、そうすればいいじゃない」

 チェリアの出した条件。チェリアの言うことは何でも聞く。チェリアとその家族に危害を加えない。それを破ったら離別。

 いずれチェリアもわかると思ったからその条件をのんだ。だけどチェリアはそれを盾にしてけっしてキルヒャーを近寄らせない。

「いや、突っ込みどころ満載な条件なんだが」

 カーライルは軽くこめかみをもんだ。

「それ、書面にしてあるのか?」

「チェリアがどうしても書面にしろって言い張って聞かなくて、それで双方のサインも入れてあるっす」

 カーライルは乾いた笑いをこぼした。

 こいつら本気で馬鹿だ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ