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愛があれば乗り越えられないことなどない

 心なしか来る前よりもほっぺたがつやつやしているような気がする。

 叔母を見てピーターはそう思った。

 ようやく話し終えた後叔母はにこやかにお茶を淹れてくれた。

 そして、甘いお菓子を用意してくれた。見た限りかなりいい値段のしそうなお菓子だ。ピーターの情報は思いのほか叔母にとって好評だったようだ。

 これでキルヒャーの評判はますます悪くなるんだろうがもともとよかったわけではないだろう。

 何しろ叔母は一度もそんなことする子じゃないわと言わなかった。むしろあれならやりかねないといった顔をして聞いていた。

「何しろあの家はさ、血統書付きのあれなのよね」

 いわくつきの家なんだという。

「もともと犯罪まがいのことをやって金を作ったと、噂があって」

 叔母が声を抑えて囁くように言った。どうやら相当後ろ暗い噂があるらしい。

 矢張りカーライルの言ったとおりだった。まともな男ならああいう状況で女と付き合うわけがない。

 そして叔母は教えてくれた。

「あのキルヒャーの十年前の事件の真相は。殺人未遂だった」

「は?」

 あまりに大事にピーターは妙な声を出した。

「だから殺人未遂、昔犯罪まがいのことをした相手に恨まれて、見せしめにその家の子供を殺してやろうと」

 うわあ。とピーターが冷や汗をかいた。

「それがひどい話でね、その犯人の聞くも涙語るの涙も物語に危うく子供殺しを仕掛けたにもかかわらず同情したっていうからその酷さがわかるでしょう」

 キルヒャーは犯罪に巻き込まれた幼い子供だったにもかかわらず全く同情されなかったらしい。そのあたりあまり好かれていなかったのがわかる。

「まあ、詳細を知りたかったら図書館、この町じゃ過去の事件を調べることができるの。まあ狭い範囲だけどこの町なら絶対」

 叔母にさらなる追加情報をもらってピーターは図書館に向かった。

 さらに適当ないわゆるこの町の学校の生徒がたむろする場所にも行ってみた。

 それだけでピーターの休日は終わってしまった。

「何してんだろ俺」

 いまさらながら自分のしてしまったことを後悔するピーターだった。


「そういうわけで、キルヒャーの身内に犯罪者がいたわけだ」

 ピーターは自分の調査結果をカーライルに披露していた。

「ああ、そりゃ逃げるね、全速力で逃げるね、だって犯罪者の身内なんてかかわったらろくなことないって思うし」

 クルトも納得したようだ。

 カーライルはその場で押し黙っているグレンを見下ろした。

「誤解はなかった。それが結果だ」

「何を言っているんすか?」

 これで諦めるだろうという三人の思惑は完全に崩れた。

「真実の愛に越えられないものはないっす。高が犯罪者が身内にいたぐらいのことで乗り越えられないはずがないっす」

 いやお前、それは犯罪者の関係者側が言っていいことじゃないんだが。

 これが逆ならまだありだが。

 そう言おうとして言っても無駄だとあきらめた。



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