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真実の愛(笑い)

 カーライルの通う学園はこの地域一番の名門だった。当然通う生徒の格も決まっていた。地域の有力者の子息が数多く通うこの学園でカーライルは態度は大きいが実は特待生だった。

 学園では親が有力者で金を払ったおかげで入れた生徒と、有力者の親がいて実力で入った生徒と有力者の親はいないがとびぬけた実力者として入学してきた生徒の三種類がいた。

 クルトとピーターは実力と親を兼ね備えた生徒だったが。目の前でみっともなく泣き崩れている彼グレンは完全に親に金を積んでもらって入学したくちだった。

 まあ普段の素行と授業を見ていればそのあたりは入学して二月もすれば見当がつくのだ。

 グレンはどうも他行のそうした素行の悪い連中と交わっているようでこの学園にまともな知り合いなどいなかった。

 それがなぜ特待生のカーライルに頼みごとをするなどという血迷った行動をとったのかとクルトとピーターは興味を持ったのだが。

「お前ら何を勝手に言っているんだ」

 当然不機嫌な顔をしているカーライルを二人は故意に無視した。

 カーライルは特待生だが、特待生は優秀な成績を残せば残すほど優遇される。学年主席であり運動神経のいい彼はその実力で有力者の親の七光りなど歯牙に掛けないくらいの学園内の権力をその手にしていた。

 そしてその傲岸不遜な性格でも知られている。

「俺が何でこんな奴に手を貸してやらなければならない?」

「まあ、あとあと何か役に立つかもしれないだろう」

 ピーターは今日はかなり無責任だった。カーライルが焦っているのが面白いのかもしれない。

「だけど、やっぱり泣いている相手に無体はやめたほうがよかったんじゃないの」

 先ほどのカーライルの暴挙をとがめる格好だがカーライルは悪びれる様子もなく言った。

「目障りな奴を見ると殴りたくならないか?」

「いや、そこまではないよ」

「そうか?」

「でも今まで暴力沙汰なんかしたことなかっただろう?」

 カーライルは基本的に言葉の暴力は容赦ないが自ら手を挙げたことは無い。

「ここまで目障りな奴は珍しい。殴らずにはいられなかった」

「ひどいっす、俺の扱いここまでひどいなんて、俺を人間だと思っているんすか?」

 思わずそう抗議するのは無理もないと思われた。

「人間だと思っているぞ」

 あっさりと答えられて一瞬だけ沈黙が降りた。

「ただ、人間だと思っているが尊重する必要性など一ミクロンも感じられないだけだ」

「もっとひどいんじゃないっすか」

 そう泣きわめく相手を冷たく見下ろす。

 この中ではカーライルが一番身長が高いのでナチュラルに見下ろす体勢になる。

「で話は何だ」

 結局これ以上揉めても話が長くなるだけだとカーライルはあきらめた。そしてクルトトピー他の服を両手でしっかりとつかむ。

「もちろんお前たちも話を聞け、こうなったら一蓮托生だ」

 そう言ってカーライルは逃げることを許さないと二人を冷たく見下ろした。

「話ってのは、俺の兄貴分のことなんだ。兄貴分とその彼女がうまくいってなくて」

「うまくいってないなら分かれればいいだろう」

 カーライルがそう言うと相手は激高した。

「何言ってるんすか、兄貴の愛は真実の愛なんですよ、その真実の愛になんてことを言うんです。別れるなんて論外、真実の愛は貫き通すのみっす」

 クルトトピー他は思わず顔を見合わせてその場から立ち去ろうとした。

「お前ら、逃げるな」

 カーライルは苦虫を数十匹かみつぶしたような顔でそう言った。




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