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あほ

「そういう人間はいる。親が権力者だとその権力と自分を切り離せないというケースは確かに存在する。俺の知り合いの話だがおべっかを本気にして自分を絶世の美女でどんな男も微笑み一つで落ちると信じ込んだ女がいた、その女は言い寄った男に振られた腹いせに危害を加えようとして親ごと沈んだそうだが」

 カーライルはため息をつく。

「自分を魅力的だと口にするのは親の権力の及ぶ範囲だけだと知らなかったらしい」

「ああ、迷惑な女もあったものねその被害者の人の気持ちよくわかるわ」

 他人事と思えずチェリアは同情的な口調で言った。

「そう言えば何でいきなり反旗を翻したんだ?」

 クルトが首をかしげた。

「ああ、それはな」

 カーライルがニュースペーパーを取り出した。

 事件が起きたとき限定で発行される奴だ。

「これ、ガット商会の、え、捕縛?」

「つまり魔法は解けたわけだ」

 カーライルはそう言った。

「こいつ自身の実力ではなくいわゆる親の七光りに過ぎなかったわけだしその七光りが無くなれば従うものもいなくなる」

 ピーターはうんうんと頷いている。

「いつかそうなるだろうと叔母さんも言ってたわ」

 しかしその言葉に納得がいかない人間が一人だけいた。

「なんでだよ、うちの家族が一体何をしたっていうんだ」

 キルヒャーはニュースペーパーを奪い取るとその場で破り捨てた。

「何も悪いことなんかしていないだろう。それなのにあんまりだ」

 ピーターが怪訝そうに相手を見た。

「俺の仕入れてきた情報とだいぶ食い違うな、あっちこっちで不正行為を繰り返してきたって聞いたが」

「家族に危害を加えると脅すのは普通に犯罪」

 カーライルがそう教えてやる。

「そんな馬鹿な、そんなことあるわけがない、そんな嘘を信じると思っているのか」

 そう言ってカーライルの襟首をつかんだ、そのまま締め上げようとしたがカーライルに思いっきり足を踏まれ、手が緩んだところを振り払われた。

「成程、底辺だな」

 冷たくしりもちをついた相手を見下ろす。

「金を持っているのに底辺というのは質が悪いな、金を持っているから底辺という自覚がない」

 そう言って無造作にキルヒャーの顔を蹴り飛ばす。

「何すんだよ」

 グレンがカーライルからキルヒャーを守るように間に入る。

「底辺なんぞかばってどうする、実家が没落した以上正真正銘の底辺だぞ」

 そしてカーライルは嘲るように言った。

「お前以外の連中は脅迫が犯罪だと分かっている。それが理解できないのはお前が子供のころから親がそれをやっているのを見て親しんでいたからだ。子供は親のすることを正しいと思い込むからな。子供の目の前で平気で犯罪行為、それを底辺と言わずしてなんだ?」

「そりゃ、嫌われるな、自分がやっていることが犯罪だと理解できないけど、相手はそれを見て犯罪者と判断する。でもそれが理解できない」

「ある意味環境の犠牲者か?」

 ピーターが腕組みをして考え込む。

「単に馬鹿なだけだ、普通なら何かがおかしいと感じるさ、そいつより知能のあるやつなら自分に媚びへつらう連中は単に親の権力目当てだと気付くことぐらいはできているぞ。さっき言った女と同じあほなだけだ」



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