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真実

「フランクを侮辱するのはやめてちょうだい」

　チェリアは冷たくそう言った。行動のわりにその表情は静かだ。だがそれが余計にその秘めた怒りを感じさせた。

「フランクがどれほどの屈辱を感じていたのか知らないくせに」

　脇腹を抑えて膝をついた相手にさらに後頭部の髪を掴み顔面に膝蹴りを叩き込んだ。

　スカートで下着が見えそうになるのにもかかわらずためらいもなく膝をめり込ませるあたりが怒りの深さを思い起こされた。

「そのくらいにしたらどうだ、ものすごく気持ちはわかるがこいつは結局何が悪いのか理解できる頭など持っていない」

　鼻児を吹いて痙攣しているグレンを無造作に襟首をつかんで地面に放り投げたカーライルはチェリアに止めに入った。

「貴方はだあれ？」

　チェリアは突然割り込んできたカーライルを不思議そうに見る。

「おい、チェリアから離れろ」

　見知らぬ美青年がチェリアに話しかけてきたのを警戒したのかカーライルとチェリアに割って入ろうとしたキルヒャーをカーライルはあっさりと突き飛ばした。

「これからゆっくりと話を聞いていろ」

　カーライルはそう言って冷たくキルヒャーを見下ろす。

「おい、カーライル、どうしてキルヒャー様に暴力をふるうわけ、お前何してくれるんっすか？」

　グレンがよろよろと立ちあがりながらカーライルに詰め寄る。

「誰だよこいつ」

　キルヒャーが何とかしりもちをついた状態から起き上がろうとしつつグレンを詰問した。

「だから、俺の学校の特待生ですよ、貧乏人だけど頭だけいいから何とか役に立ってもらおうとそれなのに」

「なんで俺がお前なんぞの役に立たねばならんのだ」

　カーライルはグレンの頭を掴んだ。そのままギリギリと締め付けて言った。

「お前のあほらしい話でどれだけこっちの貴重な時間を無駄にしてくれたと思っているんだ」

「無駄って、くだらないってどういう意味っすか、俺たちは本当に崇高な」

「崇高って思ってたの君だけだよ」

　カーライルの手の下でわめくグレンにピーターが言った。

「ついでに言うと君のしたことは犯罪だし、何とかこれ以上の犯罪行為を抑制するために付き合ってただけだよ、あのさあんな馬鹿らしい話に僕たちが感銘して協力するって思ってたわけ？」

　とても冷たくクルトがそういう。

　カーライルがグレンを再び地面にたたきつけた。

「ああ、鼻血が付いた」

　カーライルはいやそうにハンカチで手をぬぐう。

「もうこうなったらきっちり話をした方がいいと思うが」

　カーライルはチェリアに向き直った。

　チェリアはしばらく話についていけなくなったのか首をかしげていたがカーライルの言葉にそっと目を伏せた。

「君が本当に好きだった相手はそこにいる阿保ではないだろう」

　そう言ってようやく立ち上がったキルヒャーを見た。

「いい加減見えている現実を見るつもりはないのか？」

　そう言ったカーライルにキルヒャーはつかみかかろうとしたが突っ込んでくるキルヒャーを交わして足を引っかけて再びひっくり返させた。

「この男はフランクの家族を脅迫して結局フランクはこいつの言うことを聞かざるを得ない状態にされたの」

　ぎりっとチェリアの唇をかんだ。