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過去の木霊

 まずチェリアに謝らないと。そう彼は言った。

「俺だけではなく、連絡のつく連中にも声をかけました。長い間チェリアが苦しんだことを考えると謝るだけでは済まないと思います。でもまず謝らないと何も始まらないから」

 そして数人の同じような年ごろの男子が現れた。それほど裕福な暮らしをしていないだろうがまあ暮らせているぐらいか。

「キルヒャーとチェリア、二人一緒に話さないといけないと思います。奏じゃないとキルヒャーは決して僕らの話を信じないでしょう」

 どこか覚悟を決めたような顔で一人が言った。

 茶色い髪を長めに切って、或いは短く切ったそれを伸びっぱなしにしているのか。

 どこかうらぶれている集団だった。

「どこから湧いて出たんだ」

 カーライルが呟いた。

「伯母さんの伝手だったんだけど、一人見つかったら芋づるってやつだね」

 ピーターがそう言った。

「あの、もしかして僕の顔に見覚えは」

 いきなりクルトが現れた。さっきまでグレンを見張らせていたはずだが。

「どうしてここに?」

「心配しなくても今グレンは補習授業さ、さっき教授がグレンを殺気立った顔で探しに来たんで差し出して差し上げたよ」

 急いでここまで走ってきたんだよ。とさわやかに汗をぬぐった。

「いや、以前会ったことが?」

 一人が怪訝そうに来るとに尋ねた。

「いえ、今回が初対面ですが」

 意味が分からないのかしばらくクルトの顔を見ていた。

「確かに、どこかで見たような顔なんだが、どうしても思い出せない」

「本当に初対面か?どっかで見覚えがあるような気がするんだが」

 カーライルは悩むその一団を促した。

「こいつのことは後回しにしろ、とにかく話し合いの現場に行くしかない」

 あの馬鹿を利用してこの状況をおぜん立てしたのだ。もういい加減このバカ騒ぎに付き合うのはまっぴらなのだ。

 そしてカーライルは初めてキルヒャーとチェリアの顔を見ることになった。

 キルヒャーはそこそこ見栄えが良いがとっても反社会主義オーラが周辺まで漂っていた。

 対するチェリアはいかにも清楚系なお嬢様に見えた。実際に彼女は上級官僚の父親を持つお嬢様の端くれであるのだが。

 その清楚さで人の心をえぐる悪口雑言の限りを尽くしていたのかと思うと人はわからないとつくづく思う。

 その二人はこの時初めて同じことを思ってるような顔をしていた。

 いったい何が起きているんだろう。

 そしてそこに招かれざる客がやってきた。なんだかぼろぼろのグレンだ。

「まさか、あの教授を振り切ってきたのか?」

 クルトは驚愕していた。

 グレンの地を這う点数に怒りが収まらずかくなる上は半殺しにしてでも教科を詰め込んでくれると固く決意していた教授それを振り切ってきたと。

「なんで助けてくれなかったんすか、おかげで三階の窓から飛び降りる羽目になったっすよ、近くの枝に引っかかったからよかったものの下手すりゃ死んでたっす」

 そうまくしたてるグレンにカーライルはぼそっと答えた。

「死ねばよかったのに」

「ああ、お前らなんで、またキルヒャー様にお仕えしたいってのか」

 それを白けた顔で見ている一団。

「なんでお前ら、だってキルヒャー様だぞ、あのフランクだってキルヒャー様に喜んでお仕えしてたってのに」

 チェリアはつかつかとグレンに近づいてにっこりと笑った。

 そして無造作に脇腹に膝蹴りを入れた。




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