終わりの始まり
カーライルは考えた。これ以上このことにかかわりあっていたらストレスがたまるばかりだ。
それならばさっさと終わりにすべきだと。
「それでどうするんだ」
クルトが呟く、来るとも相当疲れている。
「チェリアに何とか近づいて通報してもらう」
それが一番いいと思われた。ずっと大っ嫌いな男に付きまとわれて無理やり交際を強要されている。そう訴え出ればいいのだ。
「断れば家族に危害を加えると脅かされていたと言ってな」
「まあ、それが妥当だね」
クルトはそう言ってカレンダーをめくる。
適当な決行日を決めようとしたのだ。
「そう言えば、そのあのあほの実家の問題なんだけど、そっちの情報もいる?」
すでにグレンの頼みごとに相反する行動になるがもともと聞いてやるつもりは毛頭なかった。あっちが勝手に勘違いしているだけだ。
「それとさ、実はちょっとある人を見つけたんだ」
ピーターがそう言った。
「昔、キルヒャーの腰ぎんちゃくをやっていたやつ。子供の時に離れたそうなんだけどあの二人の問題って子供のころに端を発しているだろ」
「つまり根本問題を見直すのか?」
そんなことをして意味があるのか、そんな顔をカーライルはしていた。
「なんで嫌われたかわかって、そのあとそれの挽回は絶対できないって理解してもらわないとどうしようもないだろ。このままだとたとえ捕まってもまた付きまといを続けるぞ」
それはそうなのでカーライルもうなずく。
グレンにはこの動きは絶対悟られてはならない。適当なことを言って丸め込んでおくことにした。
カーライルはピーターと二人で待ち合わせ場所に向かった。クルトは適当にグレンを見張らせ絶対にそちらに近づかないようにしてもらっていた。
そして、少し奥に入った場所にある小さな喫茶店に入った。
ここはあまり大通りに面していないのであまり人目に付きたくない人に好評な店だ。
そこにひっそりとその相手はいた。
ちょっと灰色のかかった髪は薄暗い照明のせいだろうか。
「あの、まさかキルヒャーとチェリアって、まだ決着ついてないって」
二人を見て彼はその場で絶句していた。
「まさかまだ尾を引いていたなんて」
苦悩もあらわに頭を抱える。
「こちらの事情はこいつが話した通りだ。そちらの知っている情報が欲しいだけだ」
「あの、貴方たちは一体」
「グレンの馬鹿のせいだ」
そしてひたすら紅蓮の持ってくる話のあまりの馬鹿さ加減に常に頭痛が収まらない状況をひたすら愚痴った。
「あいつ、馬鹿だとは思っていたけど、そこまでだったとは」
相手もだいぶ驚いたようだった。
「それにしてもそんなこともあるんですねえ」
何やらしみじみとした顔で呟く。
「キルヒャーを好きになる人間がいたなんて驚きですよ」
「そうなのか」
「当時は僕も含めてキルヒャーを好きだった人間は一人もいませんでした」
そうきっぱりと言い切られた。




