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最強呪文

「おお、レオナお姉様、今日もお元気そうですねぇ」

 弟にしてハリス侯爵家の嫡男のレオンが通りがかった。

 金髪、碧眼、白い肌、ほっそりとした身体。

 金のかかった洋服、靴。金鎖に宝石を身にまとったレオナの弟、レオン、十八歳。

 素晴らしく綺麗で天使のような弟と五つ上でそっくりな美しい姉のレオナ。

 昔から「ハリス侯爵家の天使達」とか「気まぐれな神が人間界に咲かせた宝珠達」と噂されていた。


「レオン」

「修行に修行を重ね、大賢者の名まで頂きながら、未だ勇者が現れないとは不運。神託を無視して嫁に行くわけにもいきませんし、永遠に勇者を待つなんて……お気の毒なお姉様。でも心配はいりません。私が侯爵家を継いだ後もそのままなら、私がお姉様の面倒を見て差し上げますから。あ、本日は婚約者のエレーヌ嬢がいらしゃるので、お姉様は部屋から出ないでくださいね。みっともないので」

 レオンはそう言ってまたクスッと笑ってからテラスを去って行こうとした。

 天使みたいな顔でどうしてこんなに毒が吐けるんだろうか、弟よ、と言う顔でレオナがレオンを見た。そして。

「何回やられてもその減らず口は治らないようですわね、レオン。よほどこの姉のファイヤーボールがお好きのようね。スモールスモールスモール炎爆よ、この手に」

 レオナ手のひらに小さな火の塊が十個ほど、現れた。

「あ、あ、ごめんなさい、お姉様……」

「大賢者の名を頂き、更にこの十年、技を研究し、磨き上げた魔法の数々、この世界に私に使えない魔法などない。その偉大なお姉様によくもそんな口が……」

「あーあー!!」

 天使の様に美しいが愚かな弟はレオナに背を向けて逃げ出した。

「炎爆!」

 レオナの手の平から旅立った小さな小さな火の玉の威力は最低だ。

 そこらを飛ぶ虫すら殺せるはずもなかった。。

 人間に放ったところで強いて言うなら、輪ゴムでペシっとされるくらいのものだ。

 少しだけ痛くて、イラッとする程度だ。

「あーーーーーーー」

 と言う悲鳴と共に逃げ出したレオンを追いかけ始めた火の玉はしばらく彼と鬼ごっこをするはずだ。


「あーもー」

 侯爵家令嬢という最良の地位に生まれ、王家へ嫁いで当たり前、社交界では高貴なる最上級令嬢のレオナが今ではすでに行かず後家の立場にいた。

 勇者と旅立つ前に結婚するわけにもいかず、もちろん求婚者サロンでダンスを申し込んでくる相手すらいない。

 時々卒業した魔法学院へ行っては魔法学の教壇に立ったりもしているが、周囲は好奇心丸出しの目でレオナを見つめる。

 それもこれも未だ勇者が現れないからだった。

 大賢者レオナの最大にして最強の呪文は「勇者~~~覚えてろ~~~この恨み~~はらさずべきか~~」だった。


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