それぞれの能力
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「この二人は何者だ!怖い!」
「日本の何処かに降ろそう」中国人は余りの光景に驚いて、小笠原の母島にこっそりと上陸させて、逃げ帰っていった。
二人は南京浜に上陸してから、人が多く居る場所に向かって歩いた。
凄いスタイルと美人の二人は、水着で歩いている様な感じで地元の人に見られた。
東京から遊びに来ていた若者が直ぐに見つけて声を掛けて来る。
姿は日本人でも中国人でも、言葉ひとつで変わるのだ。
「素敵な水着だね」
「何処から来たの?」と二人の若者が声を掛けた。
「。。。。」
「名前は?」
「私達、水谷洋子、瞳です」
「偶然だ、俺今、友達の水谷って姉妹に似ていると思っていたのだよ」
「幾つ?」
「二十歳よ、双子なの」
「よく似ていると思った」
「変わった水着を着ているね」と舐め回す様にもう一人の男が二人の身体を見る。
確かに胸も大きく、乳房の形も乳首も判る程のワンピースの服装なのだ。
「お腹が空いたの、何かご馳走してくれない?」
「何処に泊まって居るの?」
「此処には泊まってないのよ、流れ着いたの」
「えー」
「船が壊れて、助けられたのよ!中国船にね」
「密漁船?」
「俺たち、民宿に泊まっているのだよ、丁度遅めの昼飯行く所だったから寿司ご馳走するよ!」島で有名な寿司屋に五人は向かった。
料理が出て来ると、二人の美人が手で掴んで、次々と食べるのを見て三人の男は驚きの顔に成る。
「お腹空いていたの?」
「はい、それにこれは美味しいです」
「瞳さんは喋れないの?」
「はい、言葉が判らないのです」瞳は笑顔で会釈をするとまた寿司を食べ始める。
二人で五人前を食べきって「美味しいです、ありがとう」と笑う。
若者三人は唯、呆然と見ていた時に、テレビがニュースを放送していた。
四国の有田の姿が映し出されて「ああー、同じ服だ」と権藤司が叫んだ。
「五人が一斉にテレビに目を移した」
「君たちもジャンプ?」
「出来ません、あそこに行きたいです、どうしたら行けますか?」
「仲間なの?」
「はい」
庄司徹が今度は「その服って、水着ではないよね」と尋ねた。
「アールのカプセル用の服です」
今度は富田修三が「アールって何?」と聞いたら「貴方達は大学生なのね?」
「そうだよ、国立大学の理工学部の四年生だよ」
「あの映像見ていて思ったのだけれど、寒く無いの?」
「そうだよ、アールって何処に在る国なの?」すると、天に向かって指を指して「高い、処よ」
「えー、それって宇宙?」
「そう、宇宙から来たのよ、ねえ、テレビの場所に私達を連れて行ってくれない?」
「東京迄なら、明日帰るから連れて行くけれど、俺たちその後用事が有るからな」
「東京からテレビの所迄遠い?」
「飛行機なら、すぐだよ」
「それなら、東京で良いわ」三人は半分だけ宇宙人と云う話しを信じていた。
夕方の船で父島に移動して明日父島から東京に帰るのだ。
約二十六時間の船旅なのだ。
三人はその時間でこの美女の正体を突き止めて、もしも宇宙人が嘘なら仲良く成りたいと思うのだった。
名古屋の病院に到着した刑事達は、愛知県警の出迎えを受けていた。
病院の廻りには大勢の警官が出て警備をしていた。
テレビで有田の行動が話題に成っていたから、警戒態勢に成っていた。
そして焼け爛れた男の服を調べて、特殊部隊だと決めつけたのだ。
誰一人宇宙人とは言わないのは、身体のどの部分も全く同じだったからに他ならなかった。
海外から侵入した特殊部隊だと愛知県警は決定付けて、待ち構えていた。
有田の存在を静岡県警が報告したからなのだ。
的場が「凄い警戒態勢に成っているな」
「署長が報告したのでしょう」
「有田さんが刀を持つと、危険かも知れない」
車を止めて的場が愛知県警の包囲の中に向かって行った。
病院の駐車場も報道陣が大勢来て、いつの間にか上空にヘリコプターが旋回をしている。
村中が「有田さんを車に残しましょう、今刀を持って出るのは危険です」と小林に話した。
後ろの車から女性三人が降りてきて「そうしましょう、二人は車で待っていて下さい、私と村中さんで病室に行きます」有田は直ぐに頷いた。
既に香澄のテレパシーで説明されていたのだ。
輝と香澄、村中の三人が病院に諸星に連れられて向かった。
香澄と村中は普通の服を着ていたから、全く違和感が無かった。
車に残った有田を愛知県警は捕らえ様としていたのだ。
的場はそれを知らなかった。
病院に入った時、刑事が数人小林の車に近づいてきて小林を手招きした。
運転席から小林が出ると同時に車を一斉に包囲して、扉の開閉を出来ない状態にして有田を閉じ込めたのだ。
レッカー車に引っ張られて、車は警察に連行された。
「何をするのですか?」
「危険人物だ、外国の特殊部隊の人間だ、県警で取り調べる」
「何もしていないのに?」
「この事件は、名古屋の事件だ、四国の方でも暴れている」
有田は袋のネズミ状態で、刀も持って居なかったのでどうする事も出来なかった。
「的場さん、どうしましょう?」
「困った、特殊部隊の人間だと、思っているので話が理解されない」
「彼女達は?」
「仲間だと思っていたから、親切にした人だと説明して置いたよ」
「そうですね、普通の服装をしていたら、判りませんからね」
確かに、大柄で刀を持った有田と他の二人はまるで異なる人相と体格、香澄も村中も特殊部隊には見えなかった。
焼け焦げた入院中の男は有田と同じく大柄な男だったから、直ぐに仲間だと決めつけられたのだ。
病室に入った香澄が、テレパシーを送るが反応は無い、生きて居るだけの反応だった。
村中と話しをして「特殊な能力を持った仲間が、生きて居たら助かるのだけれど」と香澄が輝と諸星に説明した。
「それは?どんな能力?」
「治癒能力よ、多分二人はペアで行動するから、助かっていたら二人共生きて居るわ」
「二人なの?」
「発見と治癒なのよ」
「よく判らないわ」
「一人が悪い箇所をもう一人に教えるの、そうすると治せるのよ」
「凄い、一人だったら?」
「治せないわ、判らないから」
「生きて居たら、この人は助かるのね」
「そうだけれど、この人が生きて居る間に此処に来られるかよ」
「この人はどの様な能力が有るの?」
「判らないわ、意識が無いから、でも身体とか見ると戦士ね、大柄で筋肉質だから」
「昏睡が続くから、他の生存の仲間を捜さないとね」
「イギリスとか、ヨーロッパに居る仲間は?」
「残念ながら、アトランティス号の担当との接点も何も無いのよ」
「えー、同じアール人で?」
「私達は特別任務でお互いの交流も無いのよ、異なる母船で育ち教育を受けていますからね」
「意味不明ね」
「治癒の仲間を捜すわ、行きましょう」
集中治療室の外からテレパシーを送る香澄には反応が返らないので、仲間を探す以外に方法が無いと考えたのだ。
病院を出ると車も警官隊も消えて、小林が「有田さんが、警察に捕まりました、すみません、的場が今愛知県警と交渉しています」
しばらく目を閉じた香澄が「私達では、彼を警察から助けられませんから、今大人しく待つ様に言いました」
「香澄さんの能力なら、助けられるのでは?」
「でも、混乱が続きますから、それより仲間を探しましょう」
若い刑事の車に三人が乗り込んで、焼津近辺に戻る事にした。
村中が「計算では、海に落下した者が多いのでは、漂流していたら、体力の限界が近づいている」と話したからだ。
井尻船長の助けで近海を捜索しようと考えたのだ。