治癒能力
9-8
二人の刑事は村中を連れて県警に向かった車の中で「おおー」と村中が声をあげた。
「どうしたのだ?」
「同士が凄い速度で通り過ぎた」と話した。
「同士って?」
「仲間の事ですよ」そう話した村中と同じ様に香澄も村中をより強く感じていた。
「先程、仲間を感じたわ、何処だった?」
「静岡駅だったと思うわ」
「この電車は次何処に停まるの?」
「新横浜よ」そう言うと香澄と有田が話し始めて「次で降ります」と言った。
「静岡に戻るの?」
「はい、静岡の人は言葉を話せます、テレパシーが強かったから話せます」
「凄い、一瞬で判るの?」
「はい、強いから判るのよ」三人は新横浜で、下りの新幹線に乗り換えた。
鉄道警察が有田の刀に不審感を持って近づいてきて「それは、刀では有りませんか?見せて頂けませんか?」ヤバイと輝が考える間も無く「子供さんへのお土産でしたか?」と笑って三人を見送ったから、香澄の力は凄いと改めて思う輝なのだ。
静岡県警では村中に名古屋の衣服の資料を見せて「これは、同じ物なのでは?」
「はい、同じ仲間の物です、これを着ていた人は?」
「意識不明で名古屋で入院している、全身火傷で助からないのでは?」
「そうですか、残念です」
「村中さんは何処から来ましたか?」
「宇宙です」
「宇宙?じゃあ、宇宙人?」と小林が大きな声を出した。
「その、宇宙人が何の為に此処に?」
「仲間を助ける為です」
「名古屋の火傷の人を?」
「違います、あの人も助けに来た人です」話しをしていると、若い刑事が「的場さん、この人もよく見ると同じ服装ですよ」と四国の超人の画像をタブレットで持って来た。
村中が一目見て「おお、同士です」と言った。
「何人来たのだ?」
「五十人です、ムー号は」
「ムー号って?」
「母船の名前です」
「何だ?それは?」
「大きな宇宙船です」
「そんな物知らないなあ」
「仲間を助けるって?誰?」と小林が言うと、村中は小林に指を指さした。
「おいおい、冗談は止めろよ!俺は小林で綺麗な奥さんと可愛い娘のパパなの、村中さんの仲間では有りませんよ」
「違います、皆さん、統べて仲間です」
「おいおい、良く意味が判らない」と言うと村中が急に会話を止めた。
「同士が二人来ました」
「名古屋で、意識不明だろう?」
「別の人です、もうすぐ来ます」
署内の全員が固唾を飲んで見守る中、輝と香澄を先頭に有田が入って来た。
「可愛いお嬢さんが二人だ」
「何か用?」と尋ねる小林。
「そこの、村中さんに用事が」と香澄が言うと、香澄から村中に即座に情報が伝達されていた。
三人を見た警官が後ろの有田の刀に注目して「武器を捨てろ」と言う。
有田が素直に刀を警官手渡す、受け取った警官が「重い」と叫んで受け取る。
一人が鞘から抜き「凄い刀だ」と言いながら鞘に戻すと「石でも鉄でも切れるのよ、気を付けなさいよ」と笑う香澄。
部屋の中から村中と的場、後に小林と若い刑事が続いて出て来た。
香澄と村中、有田が三人で話しをしているが、他の人には何を話しているのか全く判らないのだ。
「名古屋の病院に行きたいのですが?」と香澄が的場に向かって言うと、半分は信じていた的場だったが、宇宙人と云う事、事態信じられないのだ。
「助けに行くのか?」
「様子を見に」香澄が云うと「じゃあ、我々も行こう、車二台用意してくれ」
「はい」
「会話が困るから、別れて乗り込む?」
「お願いします」二人の刑事の車に有田と村中が乗り込んで、刀がトランクに積み込まれていた。
若い刑事山田の車に新人刑事の諸星陽奈子と香澄に輝が乗り込んで名古屋に向かう、名古屋の警察に的場は既に連絡をしていた。
その頃、中国の船にも新たな惑星アールの人が助けられていたが、小笠原海域に来た密漁船だった。
若い女性のアール人は綺麗で中国人は人魚でも釣り上げた心境に成っていたのだ。
そこに続けて二人目の女性が助けられたのだ。
一人はテレパシーが使えるが一人は使えなかったので無言だった。
香澄以外のアール人の服には番号しかなかった。
それは香澄が当初から優れたテレパシー能力で、今の政府とのパイプ役に成っていたから、地球に到達する寸前に自動でプレートが着けられたのだ。
この二人の美女は17996と18689の番号が書かれていた。
同じ様な薄い布の衣服を着ていたが、何日も漂流していて体力が消耗していた。
中国人達は体力が回復したら遊ぼうと考えていた時に二人目を救出して、またニコニコしていたのだ。
「アリガトウ」と後で助けられた女性が礼を言うと「話せるのだ!」と言うがテレパシーの力が有るからなのだ。
その後二人は、眠りに就いて、疲れがピークに達していたのだ。
中国人達は彼女達が目を覚ましてから、食事をさせて元気に成ったら遊ぼうと虎視眈々狙っていたのだ。
高速道路で赤色灯を付けて二台の車は走った。
名古屋の病院の人間の容体の猶予が無いと連絡が有ったからだ。
「危篤の様だ」
「そうですか、助かると良いのですが」
「火傷の部分が多いらしい」
「治癒能力が有る超人が居たら助かるのですが」村中が言うと「治癒能力?」
「はい、我々の同士には治癒能力の有る者も居ます、逆に悪い部分を探せる者も居ます」
小林が「エスパーだ、漫画で読んだ事が有る」
「アホか小林、医者要らないよ」
「そうです、二人が揃えば医者は要らないのですよ」村中が言うと「ほら、エスパーですよ、エスパー」
「小林お前は頭を最初に診て貰え」
「的場さんは信じていませんね、この人達はエスパーですよ、ね!」
「はい、小林さんが正しいです」
「ほら、あれ?誰が答えたの?」小林の頭の中に香澄が答えていた。
「お前、何一人で喋っているのだ?」と的場が言う。
「えーーーー、何よ、わー助けて―――」と叫ぶ、事情が判った村中が笑った。
有田に説明すると、有田も笑ったので車内が笑いの渦に成る。
的場も判らないで笑っているから「小林!奥さん実家からいつ帰るのだ?」
「週末ですよ、実家に昨日電話しましたよ、妻もエスパーだと言いましたよ」
「先程の話しは奥さんの受け売りか?」
「はい、正解です」と今度は小林が笑った。
海上では中国船が日本の海上保安庁の巡視船に追い掛けられていた。
「逃げろ」
威嚇をする海上保安庁の巡視艇、船が大きく舵を切って、乗っていた人が飛ばされる。
二人が船の縁にぶち当たって倒れると起き上がれない。
それでも振り切ろうと蛇行して走ると、やがて逃げ切る漁船。
「おい、大丈夫か?」
「相当大怪我です」
そこに一人の美女が「私が治してあげます」そう言って怪我人に近づいた。
しばらくしてもう一人の美女が出て来て、同じ様に付いて行く。
甲板に血が流れでて、もう一人も血は出ていないが動かない。
二人が動かない人の処で何か話しをしていた。
身体を一人が触ってしばらくしてもう一人が触って居たら、倒れて居た男が急に起き上がった。
呆然と見つめる他の船員達「何が起こった?」今度は血みどろの男に近づいて、話しが出来る女が触ると、しばらくして男は立ち上がって「もう大丈夫だ!」と言ったのだ。
中国人達は唯、呆然と見つめるだけだった。
犯して楽しもうとしていたのに、全く異なる驚きに全員が沈黙に成っていた。