仲間を求めて
9-6
輝は昨日からの事を、携帯のメモに残していた。
惑星アールの超人クラブの人は全部で百人、そしてそれぞれに護衛のロボットが一体いる.。
地球上で冬眠カプセルから目覚めて初めてロボットは作動する。
超人達は色々な能力を持っていて、四国の超人はもの凄いジャンプ力、香澄さんはテレパシーの達人でサイコキネシスも使える。
イギリスの超人はサイコキネシスの達人、輝はこのメモ帳が一杯に成るのは早いのではと感じた。
「香澄さん、この地球が隕石群に巻き込まれるのは何年程先なの?」
「もう、近いです、千年程ですね」
「近い?千年?まだまだ先ね」
「でも今の文明では、とても移動は出来ませんからね」
「それはそうだけれど、私は存在しないわ」
「急に入る訳では無いので、前兆が始まって本格的に成ります、そして何百年も要してその場所を脱出します、統べての物は無くなります、この綺麗な町も山も自然もね」
「私達が勉強で習ったのでは、猿から人間に進化したと習いましたが?」
「猿は人間の遺伝子から作ったのよ」
「えー、何それ?反対?」
「ペット用にね、多分この星では繁殖して、野生に成ったのかも」
「じゃあ、地球に沢山居る動物は殆ど作ったの?」
「輝さんの頭に有る動物は、科学者が作った物が多いですね、此処で交配された新種も少し居ますけれど」
思わず頭を押さえる輝、絵も画像も無いのに、香澄は勝手に輝の頭の中に入ってくる。
「恐くないわ」
「あちゃー」総てを読み取られて驚く輝、この前の女性は今何を考えて居るの?山手線の目の前の席の綺麗な女性を目で教えた。
「今ですか?」
「お腹が痛いです」
「はあー」
「次の駅で降ります」と言ったら、その通りに急いで降りて行った。
隣に客が座ってそれ以上の話しを止めた二人は、浜松町に着くと何も言わなくても香澄は席を立った。
遅れて輝が立つ、これなら案内要らないじゃん!「必要です」と笑った。
何も考えられない恐いと思うと香澄が微笑んだ。
航空券を買って、金属探知機のゲートで反応が有り香澄は止められた。
何も持って無くてもランプが点灯する。
「変ね?身体に金属の物が入って居ませんか?」
「何も有りませんが?」
「じゃあ、もう一度お願いします」同じ様にランプが灯る。
すると係の女性が「すみませんでした、もう結構です」と言った。
輝の待つ場所に歩くと、向こうで女性の係に男性が「あの女性、ランプ灯ったのに何故?」
「えー、判りません」二人がこちらに向かって来た。
「係が二人来たわよ」
「そう」香澄が振り返って微笑むと、二人は微笑みながら会釈をしたのだ。
「何も無いでしょう、行きましょう」と香澄は搭乗ゲートの方向に歩いて行く。
輝は怪訝な顔でついて行く。
「何か?したの?」
「少しね」
「何が出来るの?」
「テレパシーで自由に出来るのよ」
「凄い、一度に大勢?」
「はい」
「恐い能力ね」
「これが出来るのは私だけなのよ」
「数人なら出来る人は居ますが、数十人同時に出来るのは私だけよ」
「じゃあ、一斉に右を向かせられるの?」
「はい」
歩きながら「ほら」次々とゲートのちかくの人が立ち上がって二人にお辞儀をしたのだ。
「ぎゃー、恐い、もう良いから止めて」香澄が笑って輝は怯えて、飛行機に乗り込むのを待った。
高知空港行きのゲート前で、テレビで四国の超人のニュースが流れて、先日の桂浜に表れた超人が今度は琴平から善通寺に向かったと放送した。
「此処は場所が違うの?」
「少しね、四国だけれど、香川県ね」
「この飛行機は高知に行くのよね」
「香澄さん何か変な事考えて無いよね」と輝が言った。
「別に」と嘯く香澄達の搭乗が終わって飛行機が離陸して、しばらくしてアナウンスが「当機は、本日は予定を変更して高松空港に向かいます」と言ったのだ。
「あちゃー」輝が驚いて頭を叩く、客が騒ぎ出したのだ。
「困る」
「高松に着いたら、高知までどうするのよ」と口々に騒ぐが、直ぐに「高松に行きたいと思っていたのよ」
「栗林公園も良いわね」
「琴平って、超人が出たって、わー見たいわ」と飛行機の中の会話が一変した。
「また、やったの?」輝が尋ねる。
「待って、今どの辺り?」
「名古屋の上空辺りかな、どうしたの?」
「テレパシーに微かに反応が有ったの」
「仲間?」
「多分」
飛行機は一路高松空港に向かった。
名古屋の病院に身元不明の人物が運ばれて、全身火傷で意識不明状態、判るのは男性、三十歳前後、服は殆ど燃えてないのに、身体は蒸し焼き状態、顔も頭髪も焼けていたのだ。
「変ですね、この薄い服は焼けていません」
「でも蒸し焼き状態ですね」
「よく、この状態で生きて居るよ、この服が守ったのでしょうね」
「繊維を調べ様とハサミで切ったのですが、切れませんでした」とその男が着ていた服を見せた。
「何で出来ているのだ?」
「一度警察に提出して調べて貰おうと思っています」
「この男は助かるか?」
「難しいと思われます」
「何処で、こんな火傷を?」
「判りません、登山の人が通報してきて、救急ヘリで搬送されましたから」
「服に番号18679の記号しか有りません」
「マスコミに発表して、家族を捜そう」
「はい、判りました」
その後警察が服を持ち帰り、男が回復したら連絡を、それ以上の捜査は出来なかった。
静岡の焼津の港にも一人の男性を乗せた漁船が到着していた。
海中から助け出された、男は名前を村中保と名乗っていた。
テレパシーの能力が有るので、直ぐに漁船の人達とうち解けていたので、余裕で焼津港に上陸していた。
「有難うございました」村中は船員にお辞儀をして帰ろうとした時「チョット、待って」と船長が呼び止めた。
テレビで名古屋の火傷の男の服が公開されたので、船長は村中の服を思い出したのだ。
「晩飯迄待てば、美味い魚と飯をかかあに作らせるから」
村中は地球の食事の美味しさを船で知ったので、今何処にも行く宛が無いので「本当ですか?」と喜んだのだ。
村中のテレパシーの能力は僅かだから、コンタクトを取るのが限界で、人の考えを読み取る事は出来ないのだ。
陸に上がると、村中には物珍しい物が多く、好奇心の塊の村中には最高の場所に成っていた。
母船で教えられた状態とは相当異なる世界に戸惑いながらも興味を持ったのだ。
井尻努船長から県警に連絡が入ったのは、それから直ぐの事だった。
静岡県警では名古屋の火傷の話しを知らなかった。
刑事は早速資料を取り寄せて「これは不思議な事件だ」
「早速、その村中に会いに行きましょう」
「警察を伏せて探ろう」
「そうですね、別に何をした訳でも有りませんからね」
「でも、ハサミで切れない布は不思議だな」二人は焼津に向かった。
高松空港に降り立った香澄はテレパシーの能力を全開にしていた。
「反応が有る、この距離ではコンタクトが出来ないわ」
空港を出るとタクシーに飛び乗った。
「何処に行きますか?お嬢さん達、観光?」
「右に走って」香澄が叫んだ。
「お嬢さん、右に走ってだけでは、判らないよ」
「急いでいるの、兎に角行って」
「恐い、お嬢さんだ」と運転手が言うと、車は走り出した。
輝が「四国の超人を捜しているのよ」と言うと運転手が「それを、早く言ってよ、見物なのか、昼には善通寺の屋根に座っていたらしいよ」
「そこに、行って、急いで」
「お嬢さん、貸し切りにした方が安いから、貸し切りね」
「はい、お願いします、香澄はよく日本を知らないのよ」
輝は香澄を外国から帰った人にしてしまった。
運転手の名前は石巻勝、超人事件に巻き込まれたのをまだ知らなかった。