伝説の大陸
9-5
翌日、朝からお風呂に入る香澄、昨夜のお風呂が気に入ったのか、朝目覚めると早速湯船にお湯を貯めて入浴を楽しんでいた。
「お姉ちゃん、朝からお風呂に入っているよ、同じ身体なの?」
「そうみたいよ、病院の検査では全く同じだったわ、二十二歳の女性の身体よ、胸も綺麗で子供も産めると思うわ」
「お風呂が好きみたいね」
「彼女の星には無いのかも」と話していたら、気持ち良さそうに風呂場から全裸で出て来た。
「わー、服を着て下さい」
「そうなの?今まではエアー殺菌の部屋に全裸で入るのよ、お湯の入って居る処に入るのは気持ちが良いですね」
「でも、香澄さん、綺麗な身体ね」
「そうよ、この地球では全裸でウロウロしていたらレイプされるわよ」
「レイプ?何ですか?」
「男が女を無理矢理、犯す事よ」
「犯す?」
「SEXよ」
「交配の事?私達の星では、自由に子供の父親は決められます」
「何よ、それ」
「そうね、リストね、その中から選ぶのよ、機械で子供は作るわ」
「ぎゃー、愛し合わないの?」
「人気の種は高価よ」
「じゃあ、同じ父親の子供が沢山居るの?」
「はい、私は十二万以上の同じ雄の子供ね」
「えーー」
「恐いわねー」
「悪い病気は皆無ね、削除されているから」
「地球で癌と云う病気が有るのだけれど、貴女の星にも有るの?」
「癌?無いですね、冬眠カプセルに入って居ないで普通に暮らせば、百年過ぎると死ぬ人増えるわね」
和美が持って来たバスローブを着ながら「殆どはサイボークとかアンドロイド化するから、二百年とか三百年かな?」
「キャー、信られない、香澄さんも何処か治しているの?」
「私はまだ若いから、それに星で生まれてないから」
「何処で?」
「宇宙船の中よ」
「話しを聞いていたら、頭が変に成りそう」
「食事しましょう」
「地球の食事は美味しいです」と言いながら美味しそうに食べる香澄なのだ。
地球に到着するのに光の速さの数倍以上の早さで飛ぶ母船でも、数十年必要で香澄が乗っていた宇宙船は光速以下だから、冬眠カプセルで眠らないと、歳をとって自然死をしてしまうのだ。
普通は光速を超えると逆転現象で過去に戻ってしまうから、母船の様な大型の船しか対応していないのだ。
「四国まで、飛行機で行くの?」
「一番早い方法で行きましょう、彼が移動してしまうから」
そう話していたらテレビのニュースが、先日の沢山の流れ星の映像を放送していた。
「あっ、あれ私達が到着した映像だわ」
「そうなの?」
「燃えついて海に落下が多いと言っているわね」和美が言う。
「ムー号とアトランティス号に引っ張られるから、何処に母船が在るかです」
「ムー?アトランティス?それって大陸の名前なのでは?」と輝が言うと「大陸じゃないです、宇宙船よ」
「もしかして、大きいから大陸と間違えたのかも?」
「その大陸は何処に?」
「大昔に海中に沈んだと言われているわ」
「えー、海中に?事故?」
「判らないわ、逸話の様な話しだから」
「調べる方法は?」
食べるのを中断して聞き入る香澄、パソコンで調べ出す輝「これだよ」とパソコン画面を指さす。
今から約1万2000年前に太平洋にあったとされる失われた大陸とその文明をさす。
イースター島やポリネシアの島々を、滅亡を逃れたムー大陸の名残であるとする説もあった。
しかし、決定的な証拠となる遺跡遺物などは存在せず、海底調査でも巨大大陸が海没したことを示唆するいかなる証拠も見つかっておらず、伝説上の大陸であるとされる。
ムー大陸が存在した証拠として、イースター島には資源に乏しいにもかかわらず大規模な石造があることが挙げられることもあったが、かつてのイースター島は森林資源が豊富で、森林伐採の挙句文明が滅んだことが現在ではわかっている為、論拠に乏しい。
「時間が合っているわ、アトランティスは?」またパソコンを操作する輝「これだよ」早速読み始める香澄だった。
今から約1万2000年以上前、現代文明をはるかに凌ぐ「アトランティス」と呼ばれる超古代文明が大西洋に存在した。
このアトランティスについて最初に語ったのはギリシャの哲学者プラトンで、彼はこの伝説について『ティマイオス』と『クリティアス』という2つの著書に書き残している。
プラトンによるとアトランティスは、リビアとアジアを合わせたほどの大きさがあり、場所は
「ヘラクレスの柱の外側」にあった。
そしてこの大陸に住むアトランティス人は、非常に徳が高く、聡明で、テレパシーも使い「オリハルコン」と呼ばれる超金属を自在に操っていたという。
またこのアトランティスでは、オリハルコンをもとに、飛行機、船舶、潜水艦などが建造され、
テレビ、ラジオ、電話、エレベーターが普及しており、エネルギーはレーザーを用いた遠隔操作によって供給されていた。
しかしこれだけ高度な文明を持っていたアトランティスも、今から約1万2000年前に大地震と大洪水が大陸を襲い、わずか一昼夜のうちに海中に没して姿を消してしまったのである。
「これも、間違い無いわ、テレパシーもオリハルコンも惑星アールでは常識だから」
「じゃあ、この大陸は宇宙船?」
「沈んでしまったのね」
「事故が起きたのよ、母船は海に沈む様な物ではないから」
「そうね、一夜にして沈んだと伝えられているから事故ね」
「例えば地球に移住の最中に大きな津波が起こって沈没したのかも?」
「母船を探すのは大変な様だわ」香澄が無念そうに言った。
そこにテレビがイギリスに超能力者が現れると放送をしていた。
大きな物を動かしている映像が流れていた。
「これ?香澄さんの仲間?」画面をのぞき込む香澄。
「同時に到着した、アトランティスの方の担当だわ」
「凄い能力ね、車を止めたり、車が空を飛んでいますよ!」
「大きい能力を持った者なら、出来ますね」
「今の世界なら征服出来ますよ」
「そうね、悪用すれば出来ますね」
「香澄さん、ムー号には何名程来ているの?」
「予定では各五十人ですが、海に沈んでいたら、相当の者が死んでいますね」
「日本人の姿の人は何名程なの?」
「多いわ、優秀な超能力を持った人が黄色人種だったから、所謂お父さんが同じなのよ」
「競馬の馬の様ね」
「種馬?」
「そうです、種馬です」
「変なの」
「SEXはしないの?」
「快楽の為にはしますね、でも遺伝能力は無いのよ、退化してしまって」
「益々、頭が変に成って来たわ」
三人の会話が終わって、輝と香澄が四国に行く準備を始める。
輝も姉に似て可愛い感じの女子大生で、香澄とは姉妹でも判らない。
マンションを出る時に香澄は二人に新しい事実を話した。
「母船にはロボットの助手も居て、私の行動と同時に作動していると思うのだけれど、来るのかな?」
「ロボット?」
「各母船には全部で百体のロボットが居て、私達が冬眠カプセルから目覚めると、行動を開始する様に成って居ると思うのよ」
「大きいの?」
「大きくは無いけれど、私を守ってくれるのよ」
「何処に居ても来るの?」
「そう聞いているのだけれど、深海で作動しているのだろうか?」
「でももし来たら凄いわね」
「はい」と笑顔の香澄。
羽田空港まで電車で移動して「今、三人確認出来たわね、後何名だろうね?」
「私は、今テレパシーで探していますが、反応が有りませんから、私の半径百キロには、誰も居ません」
「凄い、半径百キロも探せるのだ!」と驚く輝は、姉のカードを持って輝と香澄の異星人捜しが始まった。