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次なる超人

 9-4

翌日、和美の助けで初めて病院の外に出た香澄が「変わった乗り物ね」と自動車をみて尋ねた。

「あれは自動車と云うの、遠くに行く時に乗るのよ、先に銀行に行こう」タクシーを止めて、和美が乗り込む。

「早く乗って」と催促されて乗り込む香澄、車が発進すると「恐いわね、自分で運転するの?」と和美に聞いたのだ。

「誰がするのよ?」

「自動でしょう?普通は?」

「はい=」運転手が「頭の病気だったの?」と尋ねた。

急に車が動かなくなって「あれ?」「ブーン」とエンジンを吹かす。

「走ってない」後ろからクラクションが鳴り響いて「どうしたのかな?」

「叔父さん、この車少し浮いてない?」

「えー」窓を開けると首を突き出して、「タイヤが地面に付いてないよ」そう云うと、アクセルから足を離して扉を開けた。

外に出ると、タイヤは地面に接地していて「あれ?どうなっていたのだ?」と車の廻りを見回した。

「香澄さんね」

「はい、頭が変だと言うから悪戯を」

「でも凄い能力ね、車を持ち上げるなんて」

「私より、凄い人は沢山いますよ、超人クラブには」

「超人クラブ?」

「はい、今も私と一緒に此処に来ていると思います、その人達も探さないと、ムー号とアトランティス号も大事だけれど、仲間が居なければ帰れません」

「不思議な話ね」話していると運転手が独り言を言いながら運転席に戻って発車したのだ。


銀行に到着すると、小切手を持って窓口に二人が行くと、行員が金額を見て驚きの表情に「この通帳に入金お願いします」と和美が通帳を差し出す。

「はい、しばらくお待ち下さい」行員は上司に連絡をして、多分振り出しの宝石店に確認をしたのだろう。

しばらくすると揉み手に笑顔で挨拶に来て、別の部屋に案内された。

女子行員がお茶を持参して「早速ですが、只今宝石店に確認致しましたら、本城様はもっと凄い物をお持ちだとか」

「ああ、ピンクダイヤの事ですか?」

「はい、持ち歩きは危険ですから、当銀行の貸金庫でお預かりは如何でしょう?」

「香澄さん、預けた方が安心よ、無くす事、傷つく心配も無いからね」

「この叔父さん、此処に在れば所在が判るから、安心と宝石店の人に言われたのね」

「えー」と驚く支店長。

調子の良さそうな感じの男だったが「そうね、預けようかな」

「はい、ありがとうございます、早速容器を持参致します」香澄はベルトのボックスから二個のダイヤを取り出した。

「これなの、ブルーダイヤ、綺麗だわね」

「これは超人クラブに入った時に貰ったのよ」

「ご両親は?」

「惑星に残ったのよ、もうタイムマシンでしか会えないけれどね」

「えー、タイムマシン?そんな物出来るの?」

「この時代は想定より相当遅れて、まだ戦争とかしているのかな?」

「していますよ、世界中でね」

「それなら、三百年は遅れていますね」

「三百年!ひやー」と和美が驚いた時に支店長が戻ってきて「お待たせしました、これがピンクダイヤですか?」

「はい」

「この青黒いのは?」と不思議そうに見る。

「それは、ブルーダイヤですわ」

「えー、これがブルーダイヤですか?初めて見ました、大きいですね」

「世界一だと思いますよ、大切に保管して下さいよ」

「えー、世界一!」

「誰も見る事は出来ませんよね!」

「勿論です、一枚写真撮らせて頂いて良いですか?」

「はい」

支店長は再び出て行って、宝石店に電話をして「ブルーダイヤも在りましたよ」

「本当ですか?大きさは?」

「ピンクより少し大きいかと思います」

「写真お願いします」

支店長はダイヤをよく知らないから、宝石店の指示に従って撮影をして、大金庫の中にしまい込んだ。

和美の通帳には数えるのに困る程のゼロが付いた金額が振り込まれていた。

「取り敢えず、小遣いに二十万程持って居たら?色々買えるからね」

二十万の現金を袋に入れて「買い物に行きましょう」そう言って二人は町中に消えていった。


香澄達超人は、母船を操縦して地球の住人達をアールに運ぶ任務が有るのだ。

本当は地球の文明が進み、丁度香澄達が地球に到着した時に、移動の為の宇宙船の建造に着手出来る環境に成っている手筈だった。

だが、どの様に計算が狂ったのか、現実の科学設備は三百年も遅れていたのだ。


地球での名前が有田俊、二十八歳、15653が正式な登録番号、彼は四国の浜に泳いで辿り着いていた。

惑星アールの戦士、背中にサーベルを背負い、カプセルから脱出して来たのだ。

香澄と同じ服を着て浜辺を彷徨っていたのだ。

母船に引き寄せられる様に到着する設定がされていたから、殆どが海中に水没して脱出に失敗をしていたのだ。

母船の事故は後発の部隊にも大きな影響をもたらして、何人の超人クラブの人達が無事なのか判らないのだ。


「変な格好の青年が砂浜に居るよ」の噂は桂浜で直ぐに話題に成った。

「映画の撮影か?」

「誰も、居ないから違うだろう?」

「凄い姿だな、寒くないのか?」

数十人が遠くから取り囲んで口々に色々な事を言うと「警察に連絡したのか?」

「もうすぐに、来るだろう」しばらくして警察が到着して、有田に近づいて「武器を捨てろ」と叫ぶが全く反応がない。

有田には言葉が理解出来なかった。

テレパシーの能力が無かった。

何名かが同じカプセルに乗っていたが、他の人は海の藻屑に成った様だ。

想定外の事、超人達が母船の近くに無事に到着する様に計算されていたのに、大勢が死んでしまった様だ。

警察が囲む様に有田に近づくと、取り押さえようと飛びかかった。

有田は咄嗟に大きくジャンプをして、別の場所に移動していた。

「何?あれは?」

「凄い、ジャンプ力」人々は口々に叫ぶ、警察官が遊ばれていた。

しばらく同じ事が続いて見ていると人達が増えて、イライラして警官が「大人しくして」と拳銃を向ける。

すると有田は大きくジャンプをして、陸橋の上に飛び上がった。

警官は見物人が多いので、拳銃を諦めて追い掛けて行った。

警官の人数が増えて、取り押さえようと陸橋に向かうと、有田は軽々と車の荷台に飛び降りて走り去ってしまった。


この動画が夜のニュースで流れるのだが、まだ香澄の目には入っていなかった。

買い物を終わって和美と香澄が自宅のマンションに戻ると、両手に一杯の荷物を持って「只今、輝、帰っていたの?」と和美が言うと、その後に付いて香澄も入って来た。

香澄を見て「お客様?」と輝が尋ねながら会釈をした。

「そうよ、今日からしばらく一緒に生活する香澄さん、早乙女香澄さんよ」

「えー、一緒に生活?」と驚きの声に成る輝だ。

「お姉ちゃん、相談も無しにいきなり?」

「緊急だったのよ」

「病院の人なの?」

「輝さん、よろしくね」笑いながら香澄が言う。

「沢山、お家賃貰ったのよ、だから仲良く住みましょう」

「そんな、三人で生活なんて、困るわ」そう言う輝を引っ張って奥の部屋に連れて行く。

しばらくしてにこにこ顔に成った輝が「いつまで居ても良いわよ」と笑って話す。

「香澄さんって宇宙から来たの、凄いわね」

「はい、惑星アールから来ました」輝に一億の話しとダイヤの話が伝わって態度が一変した事は香澄には判っていた。

「あのね、先程ニュースでね、四国の桂浜でこの世の人間とは思えない人の画像が流れていたよ」

「どんな感じ?」と和美が聞くと同時に「それは、仲間ですね」と香澄が叫んだ。

「何故?判るの?」

「輝さんの、頭の中の画像を見ました」

「えーーーー、そんな事が出来るの?」

「はい、輝さんが覚えている画像を見られます」

「凄いけれど、恐いわ」

「そこまで、出来る人は、アールでも数人ですけれどね」

「他に何が出来るの?」

「相手の考えを変えられますね」

「例えば、走らせる事も、相手が考えていない行動に導けます」

「恐い」

「香澄さんね、車も持ち上げるわよ」

「力持ちなのね」

「手を触れないでよ」

「何!まるでSF映画ね」

「本当よ、タクシーを持ち上げたのよ」

「凄いわね」

「明日から何をするの?」

「四国に探しに行きます、彼は喋れませんから、助けないと、事件を起こしてしまいます」

「何故?」

「食事も必要ですから、泥棒します」

「それは、大変ね」

「輝、貴女休みでしょう、案内してあげたら?」

「バイト探そうと思っていたのに」

「バイトより、収入良いでしょう」

「そうだね」と笑う輝、三人の共同生活が始まった。

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