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驚く大金

 9-3

香澄はダイヤの価値を知らない、惑星アールでは地球の何万分の一の価値だった。

マンションに少し居候させて貰うには多いと思ったが、まさか価値がこんなに異なるとは思ってもいないのだ。


和美は容器に入ったダイヤを持って香澄の部屋に戻ってきた。

「どうだった?」

「貴女は本当に宇宙人よね」

「この星では生まれていないわね」

「その変な服には、ダイヤがまだ入って居るの?」

「はい」

「これより、大きい?」

「のも有るかな」

「えー、凄い」

「あっ、価値が違うのか?」直ぐに和美の心を読み取っていた香澄だった。

「返さないわよ」

「良いわよ、その代わり、外に出られる服と少しの間泊まらせてね」

「もうすぐ、病院に鑑定士が来るのよ、私の服貸すから一緒に立ち会ってよ」

「良いわよ」

和美は自分の予備の私服を持参して、香澄は最初に着ていた服の上に、和美の服を着た。

「ぴったりね」

「体型似ているからね」と笑う。

「この部屋に来て貰うわ、他には何を持って居るの?」

「ピンクとブルーが一つ有るわ」

「それってダイヤ?」

「そうよ、それより少し大きいかな」

「これより大きいの?聞いただけで気が変に成りそうよ」

「ごめんね、価値を調べて渡すべきだったわ」

「そうよ、マンション統べて買えるかも知れないわよ」

和美は今までの香澄に対する疑いを統べて払拭して、香澄が別の惑星から来た事を信じた。


しばらくして宝石鑑定士が二人病院にやって来た。

和美が持ち主は別の人だと言って香澄の病室に案内をした。

鑑定士は「早速ですが、先程見せて頂いた石を」と言って和美が差し出すのを待った。

伊吹と云う一緒に来た鑑定士が容器から取り出して、ルーペで念入りに見た。

「驚きの様ですね」いきなり香澄が言うと「は、はい、これは何処で手に入れられました?」

「アメリカですが」

「やはり、そうですか」

「盗品では有りませんよ」香澄が先、先と話すので伊吹は驚いて「そんな事思っていませんよ」と否定する。

「お父様に貰った物なので、御安心を!他にピンクも持って居ますから」

「ピンク!」伊吹の声の高さが変わった。

「この、ダイヤと同じ大きさでしょうか?」

「いえ、もう少し大きいと思いますよ」

「えー」「えー」二人が顔を見合わせて叫んだ。

「これより大きい、ピンクダイヤって、世界にまだ有りませんが?」

「新発見!」

「見せて貰えませんか?」二人の鑑定士が同時に喋る。

横から「このダイヤは幾らなの?」と和美が尋ねた。

「私共が頂戴致します価格は三億程に成りますが?」と言うと香澄が「それじゃあ、他にするわ」と直ぐさまに言った。

和美は目を丸くして、側に在った椅子に座り込んだ。

香澄には三億の価値が判らない、唯二人の考えだけが判るから答えただけだった。

「ピンクも私のお店で買い取らせて頂けるのなら、もう少し考えて来ますが?」と言う。

「桁が違うでしょう?ピンクは?」

「このダイヤよりも大きくて、上質のピンクなら、値段は高額に成ります」

「ブルーなら?」

「ブルーですか?お持ちで?」

「知り合いが持って居ますわ」

「えーーー」大声で驚く。

「大きさは同じでしょうか?」

「ピンクと同じ位でしょうか?」

「嘘でしょう?そんな大きなブルーダイヤは専門誌にも掲載されていません」

「そんな、大きなダイヤが本当に有るのですか?」二人は見たい気持ちが大きく成っていた。

「小切手を持って後程参上します、ピンクのダイヤを見せて頂けるなら、見料見料一千万上乗せします、オークションに出されたら如何でしょう?」

「はい、考えておきます、お金をお願いします、生活費が必要なので」

香澄には三億がどれ程の価値なのか判らない。

「ピンクのダイヤは多分三十億以上の値段が付くと思いますので、私共は仲介手数料で結構でございます」

側の椅子に座り込んでいた和美が口をぱくぱくさせながら「三十億、ブルーなら幾らですか?」と尋ねると「例が無いから判りませんが、お話ですと三十カラット以上なので五十は超えるかと思います」

「五、五十億と」言いながら、泡を吹いてしまったのだ。


夕方和美が入院費を支払って、服も買って病室に戻って来ると「叔父さん達、今から来るらしいわ」と香澄が言う。

じゃあ着替えて、下にスーツの様な物を来ているので、ズボンと薄いセーターにジャケットを和美は買って来た。

「お金、大丈夫?少しの間住んでもお金足りる?」

「ええ、充分よ」

三億一千万もの小切手がもうすぐ目の前に来るから、全く問題無いのに、感覚の異なる香澄は服を買って貰って恐縮していた。

アール星では殆ど同じ服装だから、ファッションを楽しむのは特別な催しの時だけなので、服を毎日変更して楽しむ事は貴重な事なのだ。

大きな紙袋には下着と別の服も入って居た。

「色々、ありがとう、久々だわ」と香澄の喜び様は格別なのだ。

「ピンクダイヤ見せてあげるの?」

「生活費が必要でしょう、何日必要なのかまだ判らないから」

「何をするの?」

「移住よ」

「何処に?」

「私達の生まれた星に戻るのよ」

「香澄さんが?」

「違うわ、みんなで移住するのよ」

「えー、地球の人全員?」

「何人居るの?」

「七十億以上住んで居るわよ」

「多いわね、地球の方が少し大きいから、増加したのかな?」

連れて行ける人数は連れて行かなければならない香澄の使命なのだ。


伊吹達が小切手を持って現れた。

「これはお約束の小切手でございます」と差し出した。

香澄は容器のダイヤを「はい、これお持ち帰りを」と言いながら渡して「ピンクは、これですよ」と差し出した。

「綺麗、大きい」と輝くダイヤを見て叫んだ。

「見せて頂いても、宜しいでしょうか?」手袋を履いて香澄から受け取る。

「素晴らしい、これまでに見た事がない」

「私の誕生日に貰ったのよ」総て嘘の話だった。

「えー、これを誕生日のお祝いに貰ったのですか?」二人の驚く顔が今度は和美が可笑しく思えた。

「写真に撮影しても良いでしょうか?」

「はい」

二人は、準備よく宝石を並べる台とデジタルカメラを持参していて、十数枚の写真を撮影して「一度オークションサイトで値段を算定して貰いましょう、気に入る値段なら売却されますか?」

「まだ決めていません」と微笑んだ。

二人は嬉しそうにダイヤを持って帰って行った。

香澄は貰った小切手を無造作に「これでお願いします」と和美に手渡した。

「香澄さん、これって、凄い金額なのよ、私が一ヶ月働いて三十万程なのよ、判る?一年で三百万程なのよ、価値が違うのよ!」

「このピンクダイヤなら五十倍?」

「そうよ、凄い金額だわ、殆どの物は買えるわよ」

「じゃあ、ムー号とアトランティス号には凄いダイヤが載っていたわよ」

「それ何?」

「和美さんの祖先が乗ってきた船よ、勿論私も途中までは一緒だったわ」

「何処に在るの?その船?」

「判らないわ、先ずその船を探さないと駄目だわ」

「大きさは?」

「そうね、数百万人が乗れるから、大きいわよ!私も隅々まで行った事はないのよ」

「兎に角明日朝退院しましょう、私明日非番だから退院して銀行にこれを持参して、口座を作りましょう」

「銀行?口座?」

「香澄さんの星には無いのかな?」

「知らないです」

和美は明日からどうなるのだろう?ピンクダイヤが売れれば大金持ちだから、ずーと一緒に居ても良いわと思うのだった。


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