現状説明
9-16
香澄達も他の超人達と合流して四国に集まっていた。
アールの超人達と的場、小林、井上、諸星、輝、美咲、安西課長も駆けつけて、自衛隊の幹部を伴って、防衛省の政務官足立淳三郎は陸、海、空の幹部も連れて来ていた。
もう事態は手に負えない状況だと認識していたのだ。
イージス艦での攻撃は歯が立たない事が相当な衝撃だった。
若くて綺麗な小娘の話を聞きたく無かったが、安西課長の話は愛知県警を始め警察関係では有名に成っていたのだ。
的場達も始めは疑心暗鬼だったが、現実を見せられて納得していた。
足立が「早速だが、あの潜水空母は不死身なのかね!」
「お話の前に、私達に付いて話します」と香澄が自分達の惑星アールの事を簡単に説明し始めた。
地球人の人も私達も同じ惑星アールから移住してきて、今の地球の人達は自分達より一万年以上前の太古の地球に飛来した。
二機の母船に乗って、その母船は事故で海中に沈んで地球の各地に文明が出来て、現在の様に発展したと説明した。
政務官も自衛官も意味不明だった。
「あの空母は特殊な金属で覆われていますので、今の地球上の兵器では壊せません」
「じゃあ、やられるままか?」
「いいえ、皆様の潜水空母との戦いで気が付いたのは、海上に出ている時は攻撃をしていない点です」
「それは、どの様な意味なのだ」
「外部は特殊金属ですが、内部は普通の金属だと思われます、その為ヘリの発着時、攻撃の時に攻撃すれば、内部から壊れるでしょう」
「おお、勝てるのだ」足立が喜んだ。
「今、ヨーロッパでも同じ様な船が連合軍と戦っているが、それも同じなのか?」自衛官の質問に「同じだと思いますが、ヨーロッパの船は戦闘艦ですから攻撃してきますよ!」
「確かに、昨日の戦いでは、フランス、イタリア、スペインの艦隊が全滅していた」
「それと、近づいた戦闘機が激突して、墜落していたがこれは?」
「これは超人の仕業ですね、サイコキネシスを使う人が、少し前にイギリスで話題に成りました、この船に居るのでしょう」
「あの、物を触らずに動かす人間か?」
「はい」
「戦闘機の様な大きくて早い物も動かせるのか?」
「はい、勢いが有りますから、意外と簡単なのです」
「益々、信じられない」と言った足立の身体が突然、椅子から天井に上がって、天井に張り付け状態に「わー、何だ、助けてくれ」天井で怯えて騒いだ。
「これがサイコキネシスです」
「判った、信じる」
「今後の作戦は?」
「今の敵に対抗するにはまだまだ弱いので仲間を捜します、私が空母を尾引寄せますから、ヘリを全滅させて下さい」
「何機、あの空母に?」
「判りません、へり以外の兵器が載っていたら、三十機程では?」香澄は石山と村中に最新の工業設備を貸す様に要請をした。
それは小型の自動翻訳機を作って、超人達が地球の人と話が出来る様にする事なのだ。
足立政務官は快く引き受けた。
先程のサイコキネシスが相当骨身に浸みていたからだが、香澄の予想より早く戦闘ヘリが会議の場所に飛来した。
「バリバリバリ」ともの凄い音「右上に二機、左下に一機です」堺少年が叫んだ。
次の瞬間銃弾が小林と的場に命中して「うぅー」と倒れ込む的場、小林は動かない服には血が滲み出ている。
自衛官と政務官は机の下に入って、有田が刀を抜いて割れた窓から外に飛び出していった。
二機のヘリが正面衝突で大破に成って落下、もう一機は有田の刀で羽を切られて、錐揉み状態で落ちた。
「おい、小林大丈夫か?」
「早く、助けて」香澄が水谷姉妹に言うと駆け寄る二人、瞳が手を翳して小林の身体を見ると、首を振る瞳「即死です」洋子がぽつりと話す、足を引きずる的場が「小林-!」と大声をあげた。
瞳が的場の身体に手を翳す、洋子が手を翳すと、的場の傷が直ぐに治って立ち上がった。
「小林!」と身体を持ちあげるが全く反応が無い。
小林刑事殉職と誰もが思った時、森山が「一瞬なら、生き返りますよ」と近づいた。
「えー!」と驚く香澄と洋子「本当に一瞬ですよ」
「大丈夫よ!一瞬でも」洋子が言うと瞳が側に来て、三人が小林の死体を取り囲むと、服を脱がす森山、そして自分も脱ぐ上半身裸の小林、銃弾の跡が胸と腹に有る。
覆い被さる森山、タイミングを見る瞳と洋子、すると小林の眉が動いた。
手を翳す瞳、間を開けずに洋子が手を翳す、森山の身体が小林から離れると身体の傷口から銃弾が出て来る。
まるで特撮映画の様に、小林がくしゃみを「クシュン」と小さくして目覚めたのだ。
的場が小林に抱きついて「おお、良かった、良かった、生き返った」と大袈裟に抱きしめた。
小林刑事は怪訝な顔で廻りを見回したのだ。
「凄い、凄い、私は全面的に協力を惜しまない!だから助けてくれ、この日本の窮地を救えるのは君たちだけだ」と足立政務官は絶賛した。
「それなら、連合軍に無駄な戦いは中止して、基地を探して下さいと伝えて下さい」と香澄が政務官に言うと「判った、外務省から関係先に連絡をしょう」
その後、的場と小林達と静岡県警に帰って行った。
超人達は二組に別れて名古屋に向かった。
だがアメリカ軍とイギリス軍、ポルトガル軍は日本からの進言を聞き入れなかった。
戦闘艦を待ち構えて撃沈しょうとしていたのだ。
誰が見てもたった一隻に数十隻の艦隊、飛行機と圧倒的な兵力だと思ったのは明らかなのだが、事実フランス、スペイン、イタリアの連合軍は壊滅させられていたのだ。
潜水空母は突如渥美半島の沖に浮上して、大型輸送ヘリが甲板に現れていたのだ。
その中には人型ロボットが十数体載っていた。
いよいよ名古屋の超人達を襲う殺人ロボットの登場だ。
一見見分けが出来ないロボット達が、大型へりで豊橋の近くの海岸に着陸したのだ。
十五体のロボットは三対一組に成って名古屋県警に向かう。
県警では安西を中心に戦闘ヘリ捕獲作戦の検討をしていた。
危険を感じた輝は井上刑事と和美のマンションに一度帰る事にして同行していた。
沢山の写真と土産話を持って、帰って行った。
その輝の帰りを待つ一人の男性が居て、新聞記者風間悟だった。
時々写る輝の姿をテレビの映像から探し当てたのだ。
スクープを得る為に和美に近づいて、最近ではお茶を飲む関係にまで発展していたのだ。
今夜待望の妹、輝が帰ると聞いて待ち構えて居たのだ。
それも姉と二人で東京駅迄迎えに来ていた。
「お帰り、輝!大変だったわね」と和美が言うが、横の男性に軽く会釈をする輝「ああ、紹介するわ、東都日報の風間さん」
「記者さんか」
「初めまして風間です」と会釈をすると「輝、お腹空いている?」
「それなりに」と笑うと「じゃあ、僕がご馳走しましょう」と二人を伴って八重洲の地下街に歩いて行った。
輝が小声で「彼氏?」と尋ねると「まだ」と和美が否定する。
輝には自分のネタを求めて姉に近づいたのだと、直ぐに察しを付けたのだ。
レストランに入ると早速風間の質問が始まった。
世界のニュースはこの無人ヘリ、潜水空母、戦闘艦一色に成っている。
「超人達と同行していて、どんな感じ?」
「良く、判らないわ」
「空を飛ぶの?」
「そんな超人は居なかった」
「何人居たの?」
「今で十人かな」
「リーダーって綺麗な女の子だってね」
「そうよ、姉も知っているわよ」もう風間は和美に聞いて知っていたのだが、輝からもっと詳しく聞きたかったのだ。
明日の新聞のスクープを目論んでいたから、早く色々聞き出してと焦っていた。
「超人達の目的は?」
「ムー号の発見よ」
「ムー号????」風間は首を傾げた。
大スクープを期待していた。




