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いざ、初ナンパへ

 ハヤタは、『運命の女性』について、ヒロに一通り話し終えると、西ブロックの店を希望した理由に話しを戻した。


「今日は、この西ブロックにある女子校も全部入学式だろ。ということは、ここに来れば、オレたちのように入学式帰りの女の子たちが沢山いて、ナンパには最適だと思ったのさ。」


「ふーん。なんかよく分からんが、『運命の女性』探しってやつが面白そうなので、ボクもナンパに付き合ってやるよ。」

 意外なほど簡単に、ヒロはオレの話しに乗ってきてくれた。


「ところで、ハヤタは、これまでにナンパしたことがあるのか?」


「いや、ない。だから、経験がありそうなお前を誘っているんじゃないか。」


「まあ、いいか。ハヤタの想像どおり、ボクは経験があるから、まずはお手本を見せてやるとしよう。」


「お願いします。」

 ヒロが上から目線で言ってきたのには、少しカチンときたが、ここはヒロに任せるのが得策と考え、オレは素直にお願いすることにした。


「それで、ハヤタは、どんなタイプが好みなんだ?どうせなら、ハヤタの好みに合わせてやるよ。」


 言われてみれば、オレは『運命の女性』がどのような女性なのかということをあまり深く考えたことがなかった。

 ただ、オレが唯一好きになるというのだから、きっと見た目もオレの好みに違いない。

 オレは、そう思い込むことにした。

 そこには、そうであって欲しいというオレの強い願望も含まれていたが……。


「そうだな、モデル系の美人。」

 オレは、素直に自分の好みを答えた。


「え~、贅沢言いやがるな。そんな女の子、簡単には見つからないぜ。そこいらを歩いているような少しカワイイ子で手を打てよ。」

 ヒロは、少しあきれた様子で言った。


「お前が、オレの好みに合わせてやるって大口をたたいたんだろうが。オレは、特にカワイイ系は好みじゃないんだよ。」

 オレは、さきほど少しカチンときたお返しにとばかりに毒づいてみせた。


「ハイハイ、分かりましたよ。じゃあ、ハヤタさん好みの美人モデルを探しに行きましょう。」

 ヒロは、そう言うと、レシートを持たずに席を立って、店の出口に向かった。


「オイオイ、勘定は?」

 オレは慌てて、レシートを持って立ち上がった。


「ここは当然ハヤタのおごりでしょ。」

 ヒロは、悪びれた様子もなくそう言うと、さっさと先に店から出て行ってしまった。



 オレは、二人分の勘定済ませて、ヒロのあとを追った。


 店を出ると、ヒロは、道行く女の子を物色するように眺めていた。

 外は、気温が上がり、上着を着ていると、少し汗ばむくらいだった。


 オレがヒロのところまで行くと、ヒロは無言で大型のショッピングセンターが入っている複合施設に向かって歩き始めた。

 そして、その十階建ての複合施設に入ると、オレたちと同じように入学式帰りと思われる女の子たちが、話しをしながらウィンドウショッピングを楽しんでいた。


 ヒロは、一番人通りが多いと思われる、複合施設三階にある広場のベンチに座り、行き交う女の子たちを物色し始めた。

 その広場の上は、吹き抜けになっており、春の太陽の光が降り注いでいた。


 オレがヒロの横に座ると、ヒロは、それから何度もオレの耳元で、ナンパするターゲットについての確認を求めてきた。


「あの右側から歩いてくる紺の制服を着た二人組はどうだ?」

「あの向こうのベンチに座っている二人組はどうだ?」


 どうやら、ヒロは、オレのためというのは表向きの理由で、本当は自分のためにナンパをしようとしているらしい。


 オレは、それでヒロが頑張ってくれるのであれば異存はなかった。

 しかし、仮にナンパが成功した場合、どちらが選択権―二人組のうちのどちらの女の子とペアになるのかを選ぶ権利―を持つことになるのかは明らかであり、それはヒロであった。


 そこで、オレは念のために、ヒロの好みを聞いておくことにした。

「ところで、ヒロ、お前の好みは、どんなタイプなんだ?」


「心配するな、お前と好みはカブっていない。僕は、カワイイ系が好みで、美人はパスだ。」

 ヒロは、オレの方を見ようともせずに、それだけ答えた。


 ここは、ヒロを信じるしかない。オレは、ヒロに好みのタイプについてそれ以上追及するのはやめておくことにした。


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