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『運命の女性』

 引っ越しを終え、中学二年に進級してから、まずはハヤタの体型に変化が表れた。


 成長期を迎えたハヤタは、身長がそれまでの百五十センチから一気に百七十センチにまで伸び、ぽっちゃりとした体型が、少しやせ形の、それでいてがっちりとした体型に変化した。


 それに伴って、運動能力が突然開花し、その能力は、全てのスポーツにおいて学年で一、二を争うほどになった。


 ただ、勉強嫌いは相変わらずであったため、成績の方はいまひとつのままであったが、これも『運命の女性』に出会いたい一心で、どうしても進学したい高校に進むための勉強を始めると、成績はめきめきと伸び、気がつくと学年でダントツのトップになっていた。


 ハヤタは、このような自らの変化にとまどっていたときに、ユイからある話しを聞かされた。

 その話しは、あまりにも唐突で、ハヤタも初めは、にわかには信じることができなかった。


 しかし、今となっては、ハヤタは、その時のユイの話しを信じざるを得なくなっている。



 普段は、どちらかといえば美魔女として妖艶なオーラを醸し出しているユイが、そのときだけは鋭い眼光で巫女のような神々しいオーラをまといながら、はっきりとした口調で話し始めた。


 ハヤタには、ユイがいつもとは別人に思えたほどであった。



「ハヤタ、よくお聞きなさい。お前は、ハヤト族の末裔です。ハヤトの男は、十四歳から覚醒を始める。そして、その中でも選ばれた男は、特別な能力を持つようになる。お前は、どうやら、その選ばれた男のようです。」


「ユイさん、急にそんなこと言われたって。そんな話、どうやって信じろというんですか。」

 ハヤタがユイの話しを遮ったが、ユイは、かまわずに話しを続けた。


「あなた、このごろ急にスポーツができるようになったわよね。それに、あなた、今までに、女の子を好きになったことがないでしょう。」


 確かに、ハヤタの運動能力は急激に開花していた。

 でも、それは単に成長期に入って、体型が変わり、筋肉もついてきたからだとも考えられた。


 しかし、後半の「今までに、女の子を好きになったことがない。」というのは、正にそのとおりだった。


 いわゆるマセガキで、これまでに何人もの女の子から告白され、またいつも女の子と一緒に遊んだり、デートをしていても、確かに、ハヤタはその相手の女の子を好きだと感じたことがこれまでに一度もなかった。

 同性の友だちに対する感情以上のものを抱いたことがなかった。



 こうしたハヤタの内心を見透かしたかのように、ユイが続けた。

「ほら、みなさい。やはりあなたは、選ばれた男なのです。」


 ハヤタは、狼狽えながら、ユイに聞いた。

「選ばれた男って何ですか。それに、オレは金輪際、女の子を好きになれないってことなんですか?」


 ユイは、これにゆっくりと答えた。

「あなたは、何でも自分の望んだことを現実にする能力を授かっているのです。ただし、女性を好きになる能力と引き換えにね。」


「でも、心配しなくても大丈夫です。そんなあなたでも、『運命の女性』だけは好きになることができます。これから、あなたは、その『運命の女性』を探すことになるでしょう。これは、あなたの宿命だと心得なさい。」

 これだけ言うと、ユイは、元の妖艶な美魔女に戻ってしまった。


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