ヒロとの出会い
ヒロの本名は、松村ヒロシ。
オレが、秀明館高校に進学して最初にできた友人にして唯一の男友だちだ。
ハヤタの住む西京都は、四つのブロックに分かれている。
北にある第一ブロックには一部住居区域もあるが、そのほとんどは日本の第二首都として機能するための政府施設や官公庁などに占領されている。
南にはハヤタの住む第四ブロックがあり、この地区は住居専用区域に指定されている。
そして、残りの東にある第二ブロックと西にある第三ブロックはいずれも学園都市として設計されており、日本全国から全学生が一堂に集められて、それぞれのレベルに応じた教育を受けている。
義務教育である中学までは、男女共学であるが、高校からは男子校と女子校に分かれ、男子校は第二ブロックに、女子校は第三ブロックに分けて配置されている。
これらのブロックは、一般には、東西南北をつけて、北ブロック、東ブロック、西ブロック、南ブロックと呼ばれることの方が多い。
学生は、高校からは、男子校、女子校に分けられるだけでなく、中学校でのスポーツや課外活動なども含む総合的な学業成績と高校進学の際の選抜試験での成績をもとに、レベル分けがなされ、そのレベルに応じた学校に振り分けられている。
高校から男子校と女子校に分けられるのは、男女の生物学、遺伝学的な差異を考慮すれば、その方が学習効率が高いと考えられているからだ。
ハヤタの進学した秀明館高校は、男子校の中では上位のレベル、AからGまでの七段階のランクのうち最上位のAランクに属し、地理的には東ブロックのほぼ中央に位置している。
ハヤタは、『運命の女性』を探すためにこの高校を選んだ。一番ランクの高い学校に行った方が『運命の女性』を探し出せる確率が高くなると単純に考えたからだ。
オレは、入学式の始まる十分前には式の行われる体育館に入った。
その日も朝からとても爽やかに晴れていて、明るい日差しが降り注ぎ、春を感じさせる暖かい日だった。そのまま屋外にいたかったぐらいだが、そういうわけにもいかず、オレは体育館に入り、新入生のために用意されたエリアの席に着いた。
既に、そのエリアの席のほとんどは埋まっており、最前列の中央あたりにしか空いている席がなかったため、オレはそこに腰掛けた。
すると、先に右横に座っていた新入生が、オレに話しかけてきた。
そいつは、同性であるオレの目から見ても、なかなかの美男子で、座っていてもオレより長身であることが分かった。
やせ形で、あまり筋肉質には見えない。
どちらかというと体育会系というよりは文化系といったタイプの男だ。
「ボクは、松村ヒロシ。よろしく。」
そいつは、高くもなく低くもない、割と耳障りの良い声で、挨拶をしてきた。
「ああ、オレは、姫野ハヤタ。よろしく。」
オレは、最低限の返事をした。
「これからお前のことを『ハヤタ』って呼んでもいいか?」
そいつは、急に馴れ馴れしく聞いてきた。
「別にかまわない。」
オレは、特に拒む理由もないので、また最低限の返事だけをした。
「じゃあ、ボクのことは『ヒロ』って呼んでくれてかまわないから。」
これが、オレとヒロの出会いだった。