不可解な彼女達と巻き込まれた彼ら
今回は悪役令嬢もヒロインも残念な扱いとなっております。
「私…私もう耐えられなくて、ずっとローズベルト様が怖くて…!」
「あらあら…それで?殿下は愛しのガージェス嬢を悪い魔女から守ると?とんだ美談ですこと」
ふわふわと長い桜色の髪と新緑の瞳を持つ愛らしい少女は涙目で訴え、その隣にいるさらさらとした艶やかな黒髪を結い上げ、ルビーの瞳を持つ妖艶な美少女は鼻を鳴らして挑発的に笑う。
そして間に挟まれた、輝く金髪と空の色をした瞳を持つ、美男子と言っても差し支えないクベンディール国の王子、ヘイゼル・ウィル・クベンディール。……現在眉間に皺を寄せ、感情を押し殺すように目を閉ざしている。
彼の親友であり、星のような銀髪と蜂蜜色の瞳を持つ、知的な美しい青年のエリック・フォーゼメイトが殿下に心配げな表情を向ける。
その隣にいる紅茶色の髪と菫の瞳の双子人形のような美少年たち――ノウル・ランブールとイシス・ランブールが、彼女たちを見てひそひそと囁きあっている。
……俺、ショーン・クレイモアは彼女たちを引きつった笑顔で眺めつつ、作業を続けていた。
さて、どうしてこんなことになったのか、簡単で申し訳ないが説明しよう。
まず、現在は余裕たっぷりの笑顔を浮かべている妖艶な美少女は、ジュリエ・ローズベルト公爵令嬢。
ヘイゼル殿下の婚約者だ。その美しさに加え、学力も家柄も申し分ない彼女だが、どういう訳か初めて会った時から殿下を避けている。むしろ何の恨みが?と思うほどに睨みつけている。
それだけでも信じられないのに、殿下が何かをする度に、何かと難癖をつけたがる面が多々あった。
最初のうちは、完璧主義か、それとも後にこの国の頂に君臨する殿下だからこそ厳しく正さねば、と思っているのかと俺や周囲は考えていた。まあ、そうであったとしてもたかが婚約者の彼女があれこれ口出し出来ることではない。だが、それでもそれが理由ならば理解出来る範囲だった。
……だが、違ったのだ。
ヘイゼル殿下は理想の王子だ。多少口調は乱雑であるが、公の場では王族としての品位に相応しい振る舞いをするし、何より心根の優しい彼は、常に周囲に気遣いを見せている。
さらに、幼い頃から軍学、語学、マナー、剣術や馬術と幅広く学び、さらに父君から出来る範囲ギリギリの執務を任されていた。
俺ならば根を上げて性格が歪みそうなものだが、生まれながら良い意味でプライドの高い殿下は、泣き言を一切漏らさずそれらをこなしていったらしい。
そんな殿下だからこそ、彼女が口出し出来るほどのミスなんて滅多にない。稀にあったとしても、それはエリックを筆頭に俺達生徒会がカバーするので明るみに出ない。……それに対し、悔しそうに歯噛みするローズベルト嬢を何度見たことか。
彼女は殿下の間違いを正したいのではなく、その失敗を嘲笑って優位に立ちたかったのだ。
夜会でも殿下と一曲踊ったあとはそそくさと立ち去ってしまうし、誰が見てもわかる程に殿下を毛嫌いしている。
さらに、何故か俺達にも関わりたくないらしい。以前、双子に声をかけられた時、「女性に気軽に声をかけるなんて…」とかぶつぶつ言っていた。まあ、その後「はあ?父上からの手紙をローズベルト公爵にお渡ししてほしいだけだよ?」「個人的な理由じゃないから許してよー」と、悪意なく「お前に用はない」と暗に言われ、赤面してたけど。……自意識過剰って言うんだっけ、こういうの。
ちなみに、俺に関しては「軽薄そうで嫌い」と影で言っていたけど、直後に「あら、お付き合いしてる方はいらっしゃいませんよ?」「むしろ告白は絶対お断りされてますわ」「断り方も真摯ですし、本当はとっても硬派な方ですのよ」と女子生徒の大絶賛を受け、立つ瀬がなかったらしい。
…あの話をしたエリック、本当にいい笑顔だったなあ。
ちなみに、エリックに対しては何故か俺達に比べて多少当たりがいい。というか、頑張って接点を作ろうとしているようにも見える。
しかし、当のエリックがローズベルト嬢を嫌っているのだ。
話しかけられても素っ気なく、笑顔も目が笑っていない。挙げ句の果てにヘイゼル殿下のそばから離れず、殿下を避けている彼女を近寄らせないスタイルを貫いている。
まあ、親友に対してそんな態度なら無理もないとも思うが。
ちなみに、一番厳しい態度をとられている殿下は、「まあ彼女も人間だし、俺を嫌うのも仕方ないだろう。…もう少し周囲の目を気にして行動してほしいもんだがな」と、大変ドライな考えを持っていた。
さて、次はそんなローズベルト嬢と対立している、マリア・ガージェス嬢について語ろう。
彼女は俺と同じく庶民の出だ。天涯孤独な彼女だが、この世界では希少な治癒魔法の才能の持ち主で、そこを気に入られガージェス男爵に養女として迎え入れられた。
今年の春から学園に転入してきたのだが……何というか、逞しい子だ。
まず、何を考えたのか殿下にぐいぐいと接触する。不仲の婚約者を持つ彼が、会って間もない少女と親密になるとなれば、どんな噂が立つか想像に難くない。それにガージェス嬢だって何をされるかわかったものではない。
当然殿下もそれを理解し、徹底的に彼女を避けた。
そうしていると、とあることが見えてきた。
彼女は何も殿下のことを慕っているわけではなかったのだ。その証拠に、エリックや双子、更に俺といった生徒会メンバーや、見目麗しく権力を持った男子にばかり接触している。
本人曰わく、「みんな友達!」らしいが、女子生徒に素っ気なくしている姿を見るとそれが本心ではないだろうと思わざるを得ない。
……まあ、出来るだけ優秀で、家柄も良い男性を探す、というのは貴族の女子の務めでもある。ただ、ここまであからさまな接触は有り得ない。俺達男からすれば、凄い、強いの言葉に尽きる。
さて、そんな訳でなかなかに目立つ女性二人だが、一時間前、ガージェス嬢がこんな訴えをしてきた。
『ローズベルト様に苛められてるんです!助けてください!』
教科書を破られる、制服を汚される、形見のブローチを隠される、挙げ句の果てに階段から突き飛ばされる。
……うん。とりあえず俺達全員思ったよね。
『教師か風紀委員に言えよ…』
いや、たしかに俺達生徒会は学園のトップだけど、そういう深刻な問題は俺達じゃない人に言ったほうがいいんじゃない?しかも何が楽しいのか、ローズベルト嬢はずっとにやにやと笑っている。
しかし、女性に頼られた以上、他人に丸投げできないのが貴族男子の悲しい定めだ。
だからこそ、俺達は作業を進めている。
「……魔術回線、OKでーす」
「教師にも許可をとったぞ」
「こっちもー」
「スクリーン完ー成ー」
上から俺、エリック、イシスとノウル。
「よし、では調べるぞ」
俺達のやりとりに、先程まで罵り合っていた女性二人は目が落ちるんじゃないかと思うほどに見開いた。
俺が繋げた魔術の光の回線と、同じく映像を流す巨大なスクリーンの魔術映写機を使い、天井に映像が流れる。
「へ、ヘイゼル様、これは…?」
「魔術映写機で撮った、学園内の映像だ。この学園は貴族や王族が入学する。だから万が一がないよう、防犯として隠して学園内の至る所に設置している」
「そ、そんな…嘘…!」
ガージェス嬢の顔色が青い。いや、そんなに驚くことか?暗殺とかに気を配らなきゃいけない王族がいるのに、何の防犯対策もしてないわけがないのに。
……っていうか、何でローズベルト嬢まで失敗した、みたいな顔してるんだ。
「安心してほしい、更衣室や化粧室は映していない。必要ならば後で女性教師に確認していただく」
淡々としたエリックの声が静かに響く。
…エリックも彼女達の顔色が悪いのはそうじゃないのはわかってそうだけどなあ…相当鬱憤溜まってたんだろうな。
流れる映像。
その中の空き教室で、桜色の髪が目に入った。
まず、着ている状態のままの制服に、瓶に詰めた泥水らしきものをかける。
うわ、汚い、と双子の声が聞こえた。
そして、次にブローチを床に落とすと、思い切り踏みつける。
…うーん、庶民時代を思い出す動きだ。貴族の女子じゃ、誰も見てないからってあんな動きしないからね。
そしてノートをナイフで刻み込む。
「刃物の持ち込みは禁止なんだが」というエリックは、ガージェス嬢を警戒して睨み付けた。
そして……教室を出て、階段から落下。でもきちんと受け身を取り、そのまま再び倒れ込んだ。
「いい反射神経だ」
やったねガージェス嬢、大好きな殿下に誉められたよ。
「ち、ちが、ちがうんです、これは…」
「異論があるなら、王宮に持ち帰って解析させるぞ。学園の安全のため、この映写機に不具合があったとならば困る」
殿下の言葉に、今度こそガージェス嬢は言葉を失い、膝から崩れ落ちた。うんまあ…何となく見る前から彼女が嘘を言ってるのは察してたけどね。
ローズベルト嬢にそんなことする動機はないだろうし、そんなことあれば目撃者の一人や二人いそうなもんだし。
さて、さっさと片付けて教師に謝ろう、と思って立ち上がったところ――。
「あ」
とんでもないものが映った。
なんとローズベルト嬢と思わしき人が、風紀委員長である侯爵子息に自ら抱きついたのだ。しかも即引き剥がされてる。
さらに、無言でエリックが次の日まで早送りをすると…今度は魔術都市からの留学生の手を自らの頬に当てさせていた。
「や、やめ、やめて、」
いつもの威厳はどこへやら、半泣きで弱々しく止めにかかるローズベルトを完全に無視したエリックは、無表情のままひたすら1ヶ月間の映像を流し続けた。
……ローズベルト嬢が接触した男性の数、10人ちょっと。
周囲の生徒がひそひそと何やら話し込む。いや、呼んでないんだけど、なんでこんなに集まったんだ?
公開処刑みたいでちょっと後味悪い。
「……ジュリエ・ローズベルト嬢」
深いため息の後、殿下が口を開く。
「貴女が俺のことを気に食わないのは知っている。だが、政略結婚である以上それも仕方ないと思っていた。そして優秀な貴女ならそれを理解していると…そう、信じていたんだがな」
殿下の諦めたような沈んだ声に、ローズベルト嬢は涙を零して大声をあげた。
「だ、だって、これは、婚約破棄のイベントで、冤罪をかけられて我が家は没落するから、だから!」
殿下の言葉に、泣きながら訴えるローズベルト嬢。
その内容に、思わず目が点になった。はい?婚約破棄?
「何言ってんの君」
あ、ノウルが代弁してくれた。
「冤罪って?ここ法廷じゃないし俺達にそんなことする権利ないよ」
と、呆れ顔のイシス。
「イベント…?よくわからんが、国王陛下がお決めになった婚約を破棄できる訳がないだろう」
と、冷たい声のエリック。
「没落って、ローズベルト公爵家が?そんな動き微塵もないけど…悪い夢でも見ちゃったんですか?」
とは、俺の言葉。
耐えきれなかったローズベルト嬢は、ガージェス嬢と同じように膝から崩れ落ちた。
――あれから1ヶ月。
ローズベルト公爵家と殿下たち王族はちょっと大変だったらしい。
なんせ、後に王妃になろうとする令嬢が婚約者以外の男性にあっちこっちで手を出してたのだ。
どういうつもりか知らないが、ローズベルト嬢があの場にたくさんの人を集めたせいで、それは学園内、果てには社交場にまであっという間に広まった。
一時はローズベルト嬢も公爵家と縁を切られるところだったが、結局男性の方から強く拒否されて関係に至っていないこと、そもそも婚約に強い反発があったにも関わらず、あまり彼女の心を考慮しなかった自分にも責任があると殿下が進言し、婚約の破棄、そして二ヶ月の謹慎処分となった。
「しかも学園に籍も残して…甘すぎないか?」
そう苦言を呈したのはエリックである。俺や双子も同意見で頷けば、殿下は乾いた笑いを漏らした。
「それだけ彼女は有能だからな。縁を切られ修道院に行くなんて勿体ない」
ちなみに、彼の新しい婚約者はローズベルト嬢の妹君だ。ローズベルト公爵家はこの国で一番力を持った貴族な為、王族も早いうちに繋がりを持ちたいのだろう。
そんな妹君は女学園に通っており、姉と比べると容姿や能力は些か見劣りするが、それでも世間一般からすれば充分才色兼備で心優しく、淑やかな女性だそうだ。臣下であり友人の一人からすれば、今度こそ上手く行ってほしいものだ。
「でもたしかに」
「彼女からするとそんなに甘い状況じゃないかも」
双子の言葉に俺もすぐに納得する。
「プライド高かったですしねー。しかもあれを機に、彼女を慕っていた女子生徒も今じゃ真逆の感情抱いてますし?婚期も絶対遅れるでしょうし、そもそも結婚出来るかどうか…」
彼女が触れた生徒は皆、女子生徒に人気な生徒たちだ。ちなみに、不幸にも彼女に目をつけられた彼らは、その日の内に殿下に弁解と謝罪に来た。なんかもう同情の念しか浮かばない。
そんな状況でこの学園に帰ってくるのだ。この学園の女王と呼ばれていた彼女には苦しい話だろう。
「今回運が良かったのはガージェス男爵だねえ」
イシスの言葉は尤もだ。
自分よりも位が高い家の令嬢に、養女として引き取った娘が濡れ衣を着せようとしたのだ。しかも、それに王子を巻き込んだのだから、生きた心地がしなかっただろう。
幸いにして公爵家が自分の娘の醜態でそれどころではなくなったこと、早々に王子の新たな婚約者を見つけたことで安堵し、「なんかもうどうでもいいよ」と気力を削がれた王族の判断で、これといった処罰はなかった。
ただ、ガージェス嬢に関しては厳しい教育が施されることになる。令嬢としての知識もだが、1日も早く国家資格を持った治癒術師になる為、その特訓も行われるそうだ。しかも学園内にいる間も空いた時間に行われるらしい。多分、誰かと遊ぶどころか息抜きする時間も大してないだろう。
「……ところでエリック、お前ガージェス嬢みたいな娘好きだろう」
唐突な殿下の言葉に、エリックがよろけた。
ああ、言われてみれば。
「あー…小柄で守ってあげたくなる女の子ですもんね、一見すると」
「純粋そうな雰囲気とかね。本当雰囲気だけ」
「あと、笑った顔とか可愛いもんね。泣き顔はそうでもなかったけど」
「よく惚れなかったな、お前」
からかう俺達に、僅かに顔を赤くしてエリックは力強く宣言した。
「たしかに危うく一目惚れしかけたが!ちょっとでも中身見たら即冷めたに決まってるだろう!」
ですよねー。っていうかそれでも一目惚れしかけたんだ。
一見堅物なようで、この人はとても純情で単純だ。言ってしまえば惚れっぽい。
それでも恋愛を第一に優先するなんて絶対にしないし、惚れた後も冷静な判断を下すのは流石宰相の息子だと思う。
「でも勿体ないよねえ。二人とも凄く美人で可愛いのに」
「大人しくしてれば引く手数多だし、王妃にもなれただろうにねえ」
双子の言葉に同意する。本当に、勿体ないことをしたものだ。
「――そういえば、二人共変な罵り合いをしてたな」
ぽつり、とエリックが言葉を零して口元に手を当てる。
「『あんたがちゃんと攻略しないから』とか、『あんたが大人しくざまあされないからこんなことに』とか…」
「はあ?なんだそれは」
「詳しいことはわからん。ただ、要約すると俺達が全員ガージェス嬢に好意を抱き、あの場で彼女の訴えを鵜呑みにしなければならなかったらしい」
――生徒会室が沈黙で包まれた。
「ないだろ」
「ないない」
「絶対ないわー」
「ありえないですって」
なんで信頼できる友人たちとの関係を壊す覚悟で、ガージェス嬢に愛情を向けなきゃなんないんだ。
「仮にそうだとして公の場で確認もせず令嬢を糾弾をするわけがない」
何を言ってるんだ、と殿下がため息を吐く。うん、エリックや殿下はともかく、俺や双子はあの家より格下だしね。
「ていうか、それローズベルト嬢も願ってたの?」
そういえば、嘘が明るみになった時ローズベルト嬢もショック受けてたっけ。
イシスの問い掛けに、エリックは不機嫌そうに眉間に皺を寄せた。
「……彼女が狙っていた男子生徒たちに守ってもらうつもりだったらしい。むしろそこから関係を深めるつもりだった、と」
「げえ」
思わず蛙を潰したような声が出た。
観劇か小説に影響を受けまくったんだろうか。
双子を見れば呆れを通り越してけらけらと笑っているし、殿下はエリックと同じく眉間に皺を寄せてる。
「――あの二人の今後の成長に期待しよう」
そしてそう言い切った殿下は、書類整理へと戻った。俺達も手をつられて動かした。
…まあ、もう終わったことだし、どうでもいいか。そんなことより学園祭の準備だ。
※※※※
以下は、数ヶ月後、とある場所にてとある女子生徒たちの会話である。
「ずっと、あんたが悪いって思ってたのよ。キャラ一人攻略できない、ヒロインかっこわらいなあんたが悪いから、私のざまあが成立しなかったんだって」
「いきなり喧嘩売るとか何なのよ」
「あんたの勉強時間に何とか休憩時間作ってあげたんだから感謝して大人しく聞きなさい」
「10分だけじゃない、えらそうに。…で?」
「で、他に敗因がないか考えたのよ。ゲームではヘイゼルはもっと俺様だったし、エリックはもっと恋に盲目だった。双子は好奇心旺盛だったし、ショーンはヤンデレ…それがね、あまり当てはまらないの。基本的な性格は一緒なんだろうけど、恋愛にドライで冷静沈着、可愛げがない」
「それは私も思った。結局私もあんたも生きるのに困るほどの断罪受けてないしね、めちゃくちゃつらいけど」
「そうね…最初はあの五人も転生者なのかと思ってカマかけてみたけど、全然ちがうし」
「よくそんなこと出来たわね」
「…不審者を見るような目を向けられたわ」
「でしょうね」
「うるさい。…考えてみれば、ここは所詮現実だものね。ある程度の物事が同じだからって、全部が全部ゲーム通りな訳がないのに」
「…あいつら、仮に私たちを好きになっても仕事と自分たちの友情優先しそうよね」
「それな」
「あーあ…あいつら実は全員禁断の恋人関係だってデマ流してやろうかしら」
「やめなさい、そんなの誰も信じないし今度こそ社会的に殺されるわよ」
「そもそも流す相手もいないし」
「おう、こっちまで飛び火する自虐ネタやめーや」
登場人物
ショーン・クレイモア
この話の語り部。生徒会庶務にして、成り上がり系の男爵子息。ちゃらい言動な上に二次創作で女誑し設定も加えられ、そこにヤンデレも入るキャラだったが、実際は冷静沈着の苦労人。一歩引いて物事を観察するタイプ。
エリック・フォーゼメイト
副会長を務める公爵家の、そして宰相の息子。ゲームでは生真面目で堅物なキャラだったが、実際は生徒会の中で一番年相応の少年らしい。惚れっぽいがその後よく相手を観察し、冷めることが多い。ヘイゼルとは幼なじみで親友。仲の良い生徒会メンバーに理不尽に態度が悪いローズベルト嬢が嫌い。
ヘイゼル・ウィル・クベンディール
第一王子で生徒会会長。ゲームでは周囲を振り回す俺様キャラだが、実際は気遣い屋な上に心が広い。婚約者に対して気遣いが足りなかったと反省はしている。自分に対する態度は気にしてないが、生徒会メンバーに対する態度はどうかと思っていた。
イシス・ランブール
ノウル・ランブール
伯爵家の子息で生徒会会計と書記。ゲームでは警戒心が強く、お互いのテリトリーに入るのを嫌う繊細なキャラだが、実際は自立心も高いし強か。お互い以外のこともちゃんと大事にしている。実はローズベルト家の当主と父は友人同士。
マリア・ガージェス
転生ヒロイン。よくある逆ハー狙いだったが、笑えるくらいに失敗し続けた。苦しい勉強の合間は、転生仲間、ぼっち仲間のジュリエ・ローズベルトと親交を深める。
ジュリエ・ローズベルト
転生悪役令嬢。ざまあ回避の末に逆ハーを夢見ていたが、殿下はまともだわ、双子や庶務は全然絡んでこないわ、推しキャラのエリックは自分を嫌ってるわで散々な上、まったく望まない形で婚約破棄され、今までの立場や信頼を失ってしまう。が、それでも生きるのに困らないレベルの結果なので、その中途半端な救済処置が有り難い反面つらい。ぼっちになってしまったので、同じ立場のマリアと親交を深めることにした。