未来を信じて
「僕は未来を信じない」
そんな言葉が私の胸に深く沈む。
「なんでそんなことを言うの?」
そう私が聞くと、彼は言った。
「***だから」
と。
未来というのはいいものだ。だって未来は今を与えてくれる。出会いを与えてくれる。楽しみを与えてくれる。嬉しさ、悲しさ、寂しさ、つらさを教えてくれる。それに、怒りも教えてくれるんだ。だから、未来はいいものだ。
だって、未来がなかったら私は、君と会えなかったんだから。だから、未来はいいものなんだよ。
でも、彼は言うのだ。
「僕は過去にいたい」
と。とても悲しそうな顔で言うのだ。なんでそんなこと言うの? なんで? なんで? 分からない。私は分からない。ねえ、教えて。君がそう思っている理由を。ねえ、教えて。君が悲しそうに私を見る理由を。私は君に笑ってほしいのに。なんで。
私がいる場所は真っ白な部屋。私は真っ白な服を着ている。ねえ、とっても似合っているでしょ? お気に入りなんだ。かわいいでしょう?
そう私が何度も聞いてみたって、君は一度も答えてはくれなかった。ただただ、悲しそうに私を見ているだけだった。
なんで、悲しそうにしているの? なんで過去ばかりにこだわるの? 私はここにいるのに。ここにいて、君の笑っている顔を見たいだけなのに。未来にいるのに、未来を見ないように君はしているの? そんなの、もったいないよ。
けれども君は悲しい顔をする。わたしを見て、とてもあわれむ顔をする。
ベッドの上で、白い顔をして、白い服を着て、医療機器につながれているわたしを見て、君は。
……。
全部、知っているよ。知っていたけれど、君に質問していた。一方通行で、絶対届かない質問だ。
君を笑わせてみたかったから話しかけてみたんだ。全部無駄だったみたいだけれど。
笑って、楽しい話をたくさん聞かせて。私が知らない話をたくさん聞きたい。
お願い。お願いなの。君と笑いたい。
私がこんな体なのがいけない。そんなのは知っている。だけど、君と笑いたいんだ。
もしも神様がいるのなら、一度だけでいいからあの人の笑顔を見させて。そして、わたしも一緒に笑いたい。




