覇王竜と最高の暇潰し
……一年が過ぎた……
大魔王ギデゴガに封じ込められていた人々の魂は無事解放され、女神ルナティックの神の奇跡により全員復活した。
魔王軍の進行の爪痕はまだ完全には消えていないが、街や村は日に日に元の姿に戻りつつある。
この俺、覇王竜とその愉快な仲間達のその後の話を少ししておこう。
まず我が執事にしてレッドドラゴン族の賢者赤竜は、大魔王との戦いにおいてまったく役に立てなかった事か悔しかったらしく、一人修行の旅に出た。
風の噂では漆黒形態を体得したとかしないとか……今度手合わせしてみるのも良いかもしれない。
エメラルド姫はミッドナイト城に戻った。
まあ閉じ込めておく理由も閉じ込められている理由もなくなったのだから当然だ。
ちなみにワイバーン族の騎士牙翼はエメラルド姫の近衛兵隊長として働いている。
ここだけの話、そんな牙翼にエメラルド姫は最近まんざらでも無い様子だとか。
早くくっついてくれると俺の気が休まるので非常に応援したい。
そして一番ビックリなのが、自称覇王竜の右腕、大魔神官パーデス事うっかりパーちゃん。なんとヤツは……結婚した。
しかも大魔王ギデゴガと。
最終形態が女性体だったせいもありなんか消し飛ばしたのが後味が悪かったので、俺はギデゴガを蘇生してやることにしたのだ。
但し俺がやると完璧に蘇ってしまい厄介なのでパーちゃんの覚えたての蘇生魔法で……。
結果、思惑通り力も魔力も従来の1割未満の状態で大魔王ギデゴガは蘇り……そして、自分を救ってくれたパーデスに……もともとの戦闘中からの思い込みも重なって、本格的に恋に落ちたのだ。
何でも来年辺りにはパーデスを大魔王にする為に夫婦で異世界へ渡るらしい。
夢が叶うといいな、パーちゃん。
そして勇者アルトは……。
アルトとは1年間会っていない。
大魔王討伐後、俺との力の差を感じ再び女神ルナティックの元へ修行に行ってしまったのだ。
そして、一週間前。
アルトから1通の手紙が届いた。
【親愛なるハーさん。
ご無沙汰しています、お元気ですか?
僕は元気です。
さて、突然ですが約束を果たしたいと思います。
1週間後、魔王城跡地でお待ちしております。
勇者アルトより】
風が吹く。
緑が揺れる。
元魔王城だったこの場所は今では城のガレキが取り除かれ開けた野原になっていた。
何でもこの場所で女神ルナティックを祭る大聖堂の建設が今後進められていく予定らしい。
決戦の話を聞きつけパーデス夫婦やエメラルド姫と牙翼&近衛兵隊員達、修行から一時的に帰ってきた赤竜、その他にも血の気の多そうな元魔王軍の竜族、リビングアーマー族の奴らまでもが集まっている。
相変わらず武器も持たずに手ぶらで待ち受ける俺の前に、女神ルナティックに導かれ宙から真っ白なドレスに身を包んだアイツが舞い降りる。
いや、ドレスでは無くこれは陽華の鎧がこういう形状に変形しているだけか。
その時一番似合う形になると言う特性があったな、確か。
髪の毛の長さも、もう肩口を超え女性らしさが増した気がする。
背もまた少し伸びたな。
「似合ってるな、どっちが女神かわからねーよ。アルト。」
俺の言葉に若干顔を赤らめる。
「この日を待っていました。ハーさん、約束の……喧嘩をしましょう!!」
「俺を1年間も待たせたんだ。この1年、暇で暇で仕方なかったぜ。ちゃんと俺の暇、潰させてくれよ?」
そういうと俺は目をつぶり身体に蓄えた魔力と気力と神竜力を一気に開放し、それを自身の身体の中へ向けて超濃縮圧縮する。
赤髪は漆黒に染まり額には第三の眼が開眼し、更に頭部両脇から黄金の角が生える。
禍々しくも荒々しい闘気に身を包んだ俺の姿にギャラリー達が息を呑むのが聴こえた。
「漆黒形態・極の果」
「さすがハーさん、ギデゴガ戦の更に先の強さの次元に進んでいる……。」
「だろ?……さて、お前も見せてくれよ。修行の成果を!」
アルトの髪の毛が跳ね上がり黒から純白へと変化する。
背中からは八枚の羽根型のオーラが飛び出し
東部に円盤状の超超濃縮されたエネルギー体が浮遊している。
「超・女神化!!」
「なるほど、お前も神化の先にたどり着いたか。」
「はい、数段階先の世界です。さあ、始めましょう!」
「……その前に……、元魔王としてお約束のセリフだけ言っておくぜ。……勇者よ、オレのモノになれ!さすれば世界の半分をお前にくれてやるぞ!」
一呼吸置いてアルトが答える。
「そんなモノ貰わなくても、僕の全ては貴方のモノです。」
自分の顔が熱を帯びているのが解る。
アルトが言葉を続ける。
「……もし、……もしそれでも何かをくれるのならば……。僕がこの喧嘩に勝ったら、貴方の人生を半分僕に下さい!!!」
「そんなもん……それこそとっくにお前のモノだよ。」
平和が訪れた緑の大地に風が吹く。
光の速さでぶつかり合う白と黒の二塊は、時に花火のように……時には流星のように……混じり合いながら激しくも幸せなメロディーを奏でだした。
それはまるで……永遠に終らない最高のエンターテインメントの様だった。
覇王竜は暇を潰す 【完】
全30話、完結です。初めて書いた物語なので文章は拙く、話は支離滅裂だと思います。それでも根気良く最後まで読んでいただいた方にはただただ感謝しかありません。最後までお付き合いありがとうございました。




