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覇王竜は暇を潰す  作者: コミネカズキ
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勇者誕生?と旅立ち?

深い深い海の底な潜って行くような感覚だった。

薄っすらとしたアオの意識が頭の中に浸透してくる。

無理矢理ではなくあくまでも緩やかに穏やかに…遠慮がちに。

自分で無いモノが自分の中に入ってくるのはもっと気持ちが悪いモノだと思っていたし、もっと大人になってからだと思っていた。

だけれども、そんな日は突然やってきてしまった。

それは受け入れやすく、心地よく、まるで昔から自分の一部だったかのように浸透して自分の一部になった。

15歳の誕生日の朝、僕は今までの僕では無くなり、僕+1…の様な存在へと変革をどげた。


目を覚ましてまどろんだ意識を振り払い胸元を見て確信した。

そこには昨日までは無かったはずの紋章の様なモノが浮かんでいた。

見覚えがある月と星を重ねた様な形のソレは伝説に語り継がれた勇者の印であり、今は王都フルムーンのシンボルとしても使われている。


自分には勇者の意思が宿っている。


全部はわからないけれど薄っすらと記憶の断片が確かに脳細胞の端の方で疼いている。

300年以上前に交わした約束…使命?兎にも角にも旅立たなければならない。

あの荒れ狂う地下世界の海を越え、竜族のあの男…今は覇王竜と呼ばれているあの者と会わなければ…。

しかし会って自分は何がしたいのだろう?

勇者の意思が宿り相手が魔王である以上、やはり討伐に行くのがセオリーなんだろうけれど…。

その目的意識は合っている気もするし微妙にずれている気持もした。


そうこう悩んでいるうちに我が家の扉がドンドンと叩かれた。

僕は自分の衣服が乱れていることに気がつき


「はい!只今でます!ちょっと待って下さい!」


と叫び身支度を整えた。


ノックの相手を待たせる事数分、よそ行きの服に身を包んだ僕を待ち構えていたのは、厳つい鎧に身を包んだフルムーン城の兵士だった。

こちらを見るなり訝しげな表情になった彼は数秒後、気を取り合おしたように喋り始めた。


「鍛冶屋見習いのアルトだな?王がお呼びである。すぐ身支度をし、王宮に馳せ参じよ」


フルムーン城は城下町フルムーンに隣接する小高い丘の上にそびえている。

少し前までは地下世界ミッドナイトにもいくつもの国々が栄えていたが、魔王・覇王竜の侵攻により僕が生まれた頃には城らしい城はここ、フルムーン城だけになってしまっていた。

一応小さな街や村はまだ点々と残ってはいるらしいけれど、豊かさはだいぶ失われ、皆、いつ来るかわからない魔王軍の侵攻に怯えながら暮らしている。

最後の一国となったフルムーンの王も魔王討伐の部隊を数度にわたり派遣したが、帰ってきた者は一人もいなかった。

途中、魔王軍の魔物にやられたか、または魔王城に渡ろうとして暗黒の荒波に飲み込まれたのか…。

ついに王自らが出陣する決意を固めた時、王家に古くから仕える魔導師がある予言をした。

ーー地下世界歴999年青の月、真円を描く月が街を照らす晩、光の輝く所に古の勇者の意思が舞い降り闇をはらすであろうーー


実際昨晩、僕の家は夜だというのにメチャクチャ光り輝いていたらしい。それこそ城からでもハッキリ見えるほど。


「良く来た、勇者の意思を継ぐものよ!そなたが現れるのを待っておったぞ!」


城に着くと恰幅が良い初老の老人が僕を出迎えた。王冠をかぶっているので恐らくこの人がフルムーン王ナイト10世なのだろう。


しかしそれにしても恰幅が良い…むしろデカイ…ん??でかすぎじゃないか?僕の倍近くあるぞ?横幅は…5倍位あるんじゃないか??…まさか、魔物か??


「でかっ!!」


思わず出てしまった心の声に衛兵が声を荒げる


「ぶ、無礼者!貴様皆んな思っているが口にしないことを言うとは無礼者!」


この衛兵も大概だな。あと無礼者二回言ったな。


「まあよい、まあよい。王家の特異体質でな、我が一族の男子は古来より身体が人よりほんの少し大きいんじゃよ」


ほんの少し??


「そんなことより、勇者よ。さっそくだが魔王 覇王竜の討伐に出て欲しいのじゃ。」


「あの、僕は勇者では無く鍛冶屋…の見習いでして、、。確かに昨晩昔の勇者の記憶、と言うか意思みたいなものが突然頭の中に降ってきましたけど…。」


「ほう、勇者の意思がか…。ふむ。しかしその胸元に輝く月と星の痣は紛れも無く古の勇者ナイト様の紋章!」


「わっ!」


僕は慌ててはだけていた胸元を隠す。


「その紋章こそ、そなたが勇者である証拠じゃ!恐らく勇者様の意思だけで無く何らかの力も備わったに違いない。さあ今こそたびだつのじゃ!!」


なんだか無理矢理話が進んでいるなぁ。

このデカイ王様、人の話を聞かないタイプの人か。

しかし確かに、王の言うとうり僕の中の勇者の意思は告げていた。


覇王竜の元へ迎えと。


半分は僕の意思では無いその衝動に、僕の心は逆らえそうに無かった。ならば…


「解りました王様。でも旅立ちに際し用意して欲しいものが有るのですが…」


「ん?なんじゃ?幾ばくかの路銀と剣と防具は用意して有るが…。」


「有難うございます。でももう一つ必要なものが有るのです。魔王の城に渡るために…。」


こうして僕の魔王城を目指す冒険?は、もやっと始まったのだった。。。


つづく…

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