黒き雷と七色の波
大魔王の圧倒的な必殺技が炸裂する。果たして……
「おいおい、チートかよ」
自分も大概なチートキャラである事は理解しているが、大魔王の必殺技を見て思わずつぶやいてしまった。
それほど神魔両断波の威力は規格外だったのだ。
しかし、これ程の威力の技をノーリスクで放てるわけが無い。
例えそれが大魔王だったとしても……だ。
「ん??……おりょ??……わわわわ?!?!」
ギデゴガの身体がみるみる縮む。
数秒後にはたゆんたゆんだったボディーは見る影も無くなり、幼女の様な姿形に変貌を遂げた。
「ありゃりゃ!?なんでちゅかコレは!?」
どうやら本人も自覚が無かったらしい。
恐らく全力で技を放つ機会……相手が今まで存在しなかったのだろう。
「今ですよアルト様!大魔王は全力を出し切った反動でパワーが落ちています!今がチャンスです!」
赤竜が叫ぶ。
確かに一見すると力や魔力はさっきまでと比べ格段に落ちている。
……しかし。
「はっ!やあっ!」
すかさず突っ込んでいったアルトの攻撃をギデゴガはひょいひょい避け続ける。
「あ、当たらない……!」
「ふはははは!身体が幼くなり無駄な贅肉がなくなったからな!先程よりスピードが格段に上がっているぞ!」
違う!あのたゆんたゆんは無駄なんかじゃ無い!むしろ宝物だ!
まあそれは兎も角、アルトの猛攻は一切当たらず……しかしギデゴガのパワーも確かに落ちている様で、時々してくる反撃もアルトに効いている様子は無かった。
うーむ、泥仕合。
しかし、そんな泥仕合も長くは続かなかった。
数分戦っていると徐々にギデゴガの身体が元の体型に戻ってきたのだ。
「ふふふ、勇者よ。もう間も無く我の力が戻るぞ?戻り次第、今度こそ神魔両断波で消しとばしてやる!」
「クッ!!」
それを聞いて攻撃のペースを上げるアルト。しかし……
「残念。時間切れだ。」
ついに大魔王ギデゴガの身体は元のたゆんたゆんボディーに戻ってしまった。
ゆっくりと第三の眼が開眼する。
「では、再び地獄を見せてやろう。今度は決してハズレない大きさと速さで放つと予告しておく。」
そう言うと大魔王の周りに再び真っ黒いイナズマがスパークする。
「ま、マズイですよ!さっきよりも強力な力を感じます。あんなモノをまともに受けたらアルトさんや我々だけで無く……この地下世界ミッドナイト自体が消滅しかねません!!
」
パーデスが慌てふためいて叫んだ。
「あ……ふ、防げない……。」
アルトが諦めた様に膝をつく。
赤竜、パーデスも諦め目をギュッと閉じた。
オイオイ、諦めるのはまだ早いぜ!
ほとんどの力を奪われてマトモに立てるのがも怪しかったが、俺は最後の力を振り絞りあるとの元へ走った。
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「あ……ふ、防げない……。」
正直まだ全ての力を使い果たしたわけでは無かった。
また動けるし技を放つ気力も魔力も神力も残っている……が、その全てをぶつけてもこの大魔王の技には抗えない。
そう感じてしまった瞬間、急に身体から力が抜けて……僕は地面に膝をついた。
「ハーさん、ごめんなさい……僕は……」
「オイオイ勇者さんよぉ、諦めるのはまだ早いんじゃねーか?」
聞きなれた……それでいて懐かしい声が不意に脇から聴こえる。
「え!?うそ??」
そこにはいつの間にか僕の最愛の……大好きな人が居た。
いつの間に……。
大魔王の技に目を奪われ気が付かなかった。
「アルト、お前にはまだ力が残ってんだろ?それを全部ぶつけるまでは諦めるな。」
「でも……残った力を全部ぶつけても……アイツは倒せないですよ……」
そう言って彼を見ると、出会った時と同じような怒った様な困った様な顔をしていた。
ズキン。
胸が痛い。
いろいろな感情が込み上げてくる。
「アルト、お前はまだ全力を出し切ってねーよ。お前は気がついてないかもしれないけど、ギデゴガが女の姿してるから遠慮しちまってるんだ。」
「遠慮?」
「同じ人間の形をした奴に全力で攻撃することにためらっちまってるんだよ。……大丈夫、アイツをお前が消し飛ばしちまっても、俺がイイ感じに蘇生魔法で弱らせた状態で蘇らせてやるから。」
彼の顔に優しさか混ざる。
ああ……和むな~。
大好きだな~。
「俺と、まあ癪だけど勇者ナイトと……そしてこれまた癪だけど女神ルナティック、俺達3人で伝え、鍛え上げたお前の力……アイツに見せてやれ!!」
彼が優しく僕の肩にに手を置いた。
これはもう……やる気を出さないわけには行かない。
いやむしろ、やる気が出ないわけがない!!
「お別れの挨拶は済んだか?覇王竜、そして勇者よ!では……サヨナラの時間だ。サヨナラだけが人生だっ!」
ネタが古いっ!
うねりを上げるギデゴガの黒い稲光が、全身を駆け巡り前方に集まる。
「神魔両断波!!!」
神をも討ち滅ぼす漆黒の超巨大黒雷光線が僕とハーさん目掛けて放たれた。
「今だ!全力で力を解き放て!今のお前ならば必ず出来る!」
「うわあああああああっーーっ!!」
魔力、気力、そして女神様から授かった神力を……僕は僕の前方で螺旋を描く様なイメージで混ぜ、練り上げる。
それはまるで……七色に輝く虹の様なエネルギーになった。
「覇王竜撃波っ!!!」
ズギャギャギャギャギャーーー!!!
僕と大魔王とから放たれた超巨大な二つのエネルギー波は両者のど真ん中でぶつかり合い……拮抗した。
「ぐっ!?ば、馬鹿な!神の力を得たとはいえ、たかだか人間ごときが余の必殺技と渡り合うだと!?」
「ぐっ!!ま、負けないっ!!絶対に負けない!!!ハーさんは僕が護るんだっ!!」
少しでも気を抜くと押し返されて一瞬で消し飛ばされてしまう。
その時、ハーさんが叫んだ。
「パーちゃん!さっきコッソリ伝書バットで伝えた作戦結構だ!」
伝書バットとは、思念を手紙に変えて特定の相手に届けてくれる魔族御用達のアイテムだ。
魔王軍では年末年始の挨拶に便利だとか何とか。
魔族も大変だなぁ。
なんだかわからないけれどちょっと躊躇する様な表情でおずおずと立ち上がるパーデスさん。
この後、彼が叫んだ言葉は僕の想像の域を超えていた。
「大魔王ギデゴガさんっ!私はっ!貴方が好きですっ!愛していますっ!私とお付き合いしてくださーーーーいっ!!」
「なっ!?!?ななななっ!?何を言っておるんだ貴様っ!?!?」
ギデゴガがあからさまに動揺する。
「今だアルトっ!」
ハーさんの支持に若干の心苦しさを覚えた……が、チャンスはやつの意識がそれている今しかない。
僕は残っている全ての力を前方に向けて放出した。
「いっっっけええええええっーー!!!」
「な!?し、しまっ……」
ズバババババババババババアアッッ!!!
両者の技の均衡は一気に崩れ、僕の覇王竜撃波は、地を裂き空を破り大魔王を虚空の彼方へ消し飛ばしたのだった。
つづく。
次回、クライマックス




