魔王城と巨乳娘
いよいよ最終決戦!……最終決戦??
荒れ狂う漆黒の海を抜け、島を囲む断崖絶壁の山々を越え、沸々と謎の泡を発している毒沼地の中央部分に居城・魔王城は高々とそびえ立っている。
俺が根城にしていた1年数ヶ月前とは違い、大分ヒビ割れ老朽化している。
理由は恐らく先程からも度々起きている地響きと振動のせいだろう。
立っていられる程度のモノでは有るが、こうも回数が多いと蓄積されたダメージも大きいのだ。
オレ、元魔王の覇王竜と愉快な仲間たち……大魔神官パーデス・執事の赤竜は、謎の復活を遂げ留守なのを良い事に人の城を乗っ取って踏ん反り返っている300年前の大魔王ギデゴガをぶっ飛ばす為に海を越え山を越え沼を越えはるばるやって来たのだった。
さぞ手厚い歓迎が待っていると思いきや、城の城門は開け放たれ魔物も配置されていなかった。
「あれ?おかしいですよ?先日は確かに三本角の真っ黒い魔物が大量にウロウロしていたのですが……」
首をかしげるパーデス。
こいつ一人ならともかく、赤竜までいて誤情報である筈が無い。
俺たちは城の一階から最上階までくまなく調べた。
もちろん、俺の自室である魔王ルームも例外ではない。
「いったい何処へ消えたのでしょう?」
「これだけ探していないとなると……もうココしか無いな。」
そう言うと、俺はおもむろに玉座を一回転させる。
すると玉座の後ろの床が大きく開き、地下に繋がる巨大な階段が現れた。
「……え!?な、なんですか??この仕掛けは!?ち、地下通路?」
パーデスと赤竜が目を見開く。
「いやー!魔王城と言えば玉座の後ろの隠し階段が定番だろ?ドラ◯エとかで良くあるじゃん?だからコッソリ作ってみた。」
「いやド◯クエは良くわかりませんが……しかし執事の私ですら気がつきませんでしたよ」
「いつか勇者とかが来た時に地下で待ち受けたかったんだけどな。結局誰も来なかったな〜。まさか自らが攻め込む事になるとは思わなかったぜ。」
さっそく踏みいろうとする俺を、パーデスが制止した。
「待って下さいハーさん!ワタクシ、超天才的なアイディアが浮かんじゃいましたよ!!」
こいつのこーいう時はロクなことを言わない。
「大魔王ギデゴガが地下にいるなら、この入り口から水魔法で大量の水を流し込んで水死させるってのはどうでしょうか!?」
……こいつ……マジか……。
いや、まあ確かに楽だけど……楽だけどさ〜〜。
それをやると何か大事なものを無くしてしまいそうな気がするw
「いや、さすがにそれはゲス過ぎるんじゃ無いでしょうか!?」
思わず赤竜が突っ込んだ。
まあそうだよね。
「いやいやいや、そもそも私達魔物ですよね?ベースライン悪ですよね?別にゲスくても構わなく無いですか〜?⤴︎」
語尾上げムカつくなぁw
まあそうなんだけどさあ〜、なんか小者感が半端なく無い?
「う……た、確かに!」
え!?ちょっと赤竜さん!?
「言われてみれば我々は魔物……執事である前に……魔物だ!!パーデス様っ!目からウロコが落ちましたっ!!」
おーーーいっ!マジか!?レッドドラゴンの誇りは何処いった!!
「お!流石赤竜さん、合理的で話が早い!では早速私の大魔法をお見舞いしてやりましょう……地下室にっ!!!」
はあ〜〜、マジでやるんすね
「大いなる水流よ!全てを飲み込むウネリとなれ!!バ〜クス〜イ〜マ〜〜〜……」
水系魔法の最上位に当たる【バクスイマーズ】
この呪文をパーデスが相変わらずの長ったらしくて締まりの無い呪文詠唱で唱えようとしたその時……
「アホかーーーっ!!!」
「ギャーーース!!!」
パーデスはおもいっくそぶっ飛ばされて3回転くらいして壁に叩きつけられた。
黒くそそり立つ三本のツノ、漆黒の翼、禍々しい第三の目、闇のオーラ、そして……豊満な胸……え?……胸??
いや俺はてっきり大魔王ギデゴガが余りのアホさに突っ込みに来たのかと思ったんだが……?
「……あ、アホか!アホなのか!?余が地下に居るから水攻めとかどう考えても反則じゃろうが!?普通は余の所まで必死こいてたどり着いて正々堂々対決じゃろ!?それを地下だから水入れて水死させよう!……とか!蛮族!?お主ら蛮族なの!?」
胸をたゆんたゆん揺さぶりながら突然現れた女が怒りをあらわにしている。
「えーと……お怒りのところ大変恐縮なんですが……どちら様でしょう?」
一瞬固まるたゆんたゆん女。
あれ?なんか変な事聞いちゃったかな?
「あ、いや姿形から何となく大魔王絡みのヒトなのはわかるんだけどね?」
「……ふ……ふふっ、ふふはははっ!」
暫しの沈黙の後、笑い始めるたゆんたゆん女。
何この娘?メッチャ怖いんだけど……
「馬鹿め!お前馬鹿め!お前本当に……えっと、馬鹿めが!」
こいつボキャブラリー少ないな。
「余こそがその大魔王本人じゃ!大魔王ギデゴガじゃ!この!……えっと、馬鹿め!!」
たゆんたゆん女の言葉は、はっきり言って意味不明であった。
つづく。




