アルトと女神ルナティック
海底神殿はそれなりに広さがある。
細かな部屋が数十室とその全てに繋がった中央大広間が神殿調の数百本の柱で支えられている。
そしてどう言う原理かは解らないが、おそらく創造神様の神力で水中に有るにも関わらず地上と同じように活動する事が出来る。
中央大広間の突き当たりにある扉の向こう側からその豪快な音はけたたましく聞こえていた。
神殿中に響き渡っていた。
ぐーーがぁーー!ぐーーがぁーー!
俺と共に巨大な渦潮を抜けこの神殿に命からがらたどり着いたり勇者アルトが、恐る恐る扉をあける。
ぐーーがぁーー!ぐーーがぁーー!
そこに居たのは……豪快にイビキをかきながら大の字で横たわる絶世の美女だった。
「え……え~と……ハーさん?」
アルトが困惑の表情で俺を見つめてくる。
そんな目で俺を見られても困る。
俺にとっても想定外だ。
しかし、とにかく話を先に進めなければと言う思いが俺の口を動かした。
「あ~、ゴホン!コイツが……この女が創造神ルナティックだ……よ?」
なんか心無しかアルトの目がグルグル渦を巻いているように見える。
混乱しているのかな~。
「うーんムニャムニャ、もう食べられないよ~ムニャムニャ」
うっわ~~コイツ言いやがった!今どきアニメやマンガでも言わないような寝言を言いやがった!
「ぐーーがぁーー!ぐーーがぁーー!」
再び豪快にイビキをかきはじめた駄女神に我慢の限界に達した俺の蹴りが炸裂した。
「いつまで寝てやがるこのクソ女神っ!!!」
俺に蹴り飛ばされたミスイビキは五回転ほどゴロゴロ転がって壁にぶつかった。
「ごふぅ!?」
微妙なダメージボイスをもらし、ヨロヨロと立ち上がる。
「え~~と?何事?……あと誰ですか?」
はい神感ゼロぉ~~
「俺だ、覇王竜……じゃない覇竜だ!」
「覇……竜……?だれ??」
こいつ……
「だ~か~ら~!!勇者ナイトと一緒にお前と昔冒険した覇竜だよ!!寝ぼけてんのか!!!」
半ギレで叫ぶ俺のセリフを聞いた瞬間、女神ルナティックは硬直した。
なんだ??
その直接
「ヒック……う、ウワァァァン!!ナイトのバカあああああっ!なんで私を置いて帰っちゃったの~~!!ウワァァァン!!」
……そうだった。
コイツ、ナイトに首ったけで四六時中ベタベタくっ付いてたわ。
泣きじゃくるルナティックの目とアルトの目が合う。
ハッとなるルナティック。
「ま、まさか……ナイト?ナイトなの!?帰って来てくれたのねー!!私、ずっとふて寝して待ってたんだからーー♡」
ルナティックは叫ぶや否や全力でアルトに突撃し力いっぱい抱擁した。
「あんた!うちのアルトに何すんのよ!!」
と、叫んだのは今はアルトの鎧として装備されているリビングアーマーの陽華だ。
陽華の鎧の特性の一つである全身の部位からトゲを出す効果が女神ルナティックに炸裂する。
「ギャーーーーっ!目がっ!私の目があああああっ!!」
血まみれになりながらのたうち回る駄女神様。
……大丈夫かコイツ?
「ぐぬぬぅ、よくも!!しかし甘いわね!この女神の奇跡の神力にかかればこんな怪我、秒で回復よ!!」
そう言うとルナティックの身体か輝きを放ち血まみれの全身が一瞬で回復、回帰する。
「さあ、改めてナイト!再会の抱擁を!!」
再び突撃しようとするバカを俺は無言で蹴り飛ばした。
「痛いっ!!痛いわっ!!何をするのよ覇竜っ!?まさか嫉妬!?!?」
「違うわボケがっ!!良く見ろ!そいつはナイトじゃねーよ!そもそも性別が違うだろーがっ!」
「あ、本当だわ!ごめんなさい、余りに魔力の質が似ていたもので……つい。」
「ついで抱きつかないでよね!大丈夫アルト?」
と陽華が心配そうに声をかける。
「あ、うん。僕は大丈夫だから。それよりルナティック様、今日はお願いがあって来たのですが」
「鎧までナイトそっくり……どう言う事なの?」
それから俺達は面倒臭かったが今までの経緯をルナティックに説明した。
と、同時に何でこんなところでコイツが眠りこけていたのかを説明させた。
どうやらこの駄女神、ナイトに置いて行かれたショックでふて寝して、しかも起こされないように神力で神殿に封印までして引きこもっていたらしい。
……300年も。
どうりで魔王軍が地上で暴れていても全く介入してこない訳だ。
「成程、現状は把握しました。そんな事になっていたとは……。魔王軍の進行に気が付けなかった私にも責任は有ります。ですので神の奇跡で人間達を復活させるのはやぶさかではありません。協力致しましょう。」
お、話がすんなり通って良かった。これで心置きなく……
「しかし、一つ問題があります。」
うお?なんだよ?
「さっきその鎧のコに刺された傷治すのに奇跡使っちゃったから暫くつかえませ〜ん♬テヘペロ☆」
……は???
「え……ちょ?マジかテメェ!?あんな傷普通に回復魔法使って治せるだろ!?」
「いやーついついノリで!でも仕方ないでしょ!イキナリ目の前にナイト似の魔力のコが現れてテンションが上がってしまったのだから!!」
そう言いながらアルトにスリスリし始める駄女神。
こいつ、ナイトっぽい奴なら何でもいいんじゃ……
「えっと、じゃあ本当に神の奇跡は使えないんですか?」
ルナティックに頰ずりされながらも素で質問するアルト。
お前も少しは抗えよ。。。
「まあ、使えないと言っても起こした奇跡が【傷の手当】程度だから一週間も待てばまた使えるようになりますよ。……あの……ちょっと……痛い、痛い!イタタタタタ!!…痛いわよ!チクチク刺さないでくれます?鎧の娘!!」
「どさくさで何してんのよ女神様!ウチのアルトにベタベタしないでよね」
「もう!良いじゃないの減るもんじゃ無し」
「減るわっ!何か大切な何かが減る気がするわ!!」
「え〜〜そんな大胆な鎧を着ているのに!」
不意打ちのファッションチェックに顔を赤らめるアルト。
「いや、ち、違います!コレは……」
「この姿はアルトが【一番魅力的に見える姿の形になる】っていう私の特殊性能よ!アルトだって好きこのんで……」
そこまで言って口籠る陽華。
「ず、ずぎ好んでわだしを着てるわげじゃないんだがら〜〜」
自分で言いながら涙ぐむリビングアーマーの少女。
女が3人揃うと騒がしいな、全く。
「まあまあ、陽華ちゃん。た、確かに始めは恥ずかしかったけど、今じゃ…少し慣れてきたし……。それに陽華ちゃんは僕の親友だよ!嫌々着たりなんかしてないから……ね?」
「う〜〜あるど〜〜!ありがど〜〜!!」
……なんじゃこりゃ。
なんか色々ごちゃごちゃ言っていたが、そんな事より陽華の鎧が泣き噦って流した涙がアルトの身体を伝って滴り落ちる様がなんかエロくて俺はそれどころでは無かった。
あ、いやごめんなさい。
「良かったわね、鎧の娘……いえ、陽華ちゃん!種族の垣根を越えた熱い友情!私も感動しましたよ!」
「め、女神様ぁ〜」
「ルナティック様!」
そう言うとルナティックは1人と1体を優しく抱きしめた。
「うわ〜〜〜ん!!」
陽華が感極まって泣き噦る。
「よしよし、思い切り泣きなさい。」
そう言ったルナティックの口元がニヤニヤしているのを俺は見逃さなかった。
こ、コイツっ!?俺と同じ邪な心で2人のやり取りを見てやがったな!!
種族の垣根どころか性別の垣根を越えた何かをするつもりじゃないだろうな!?
「ところで覇竜、この娘……勇者アルトを一週間私に預けてみませんか?」
「な!?性別の垣根を越える気か!?」
「は?あなたは何を言ってるのですか?」
しまった!心の声が!!
「勇者アルトに修行を付けると言っているのです。見たところ、身体能力や魔力は貴方が相当鍛えたようですが、アルトにはまだもう一つ才能がありそうですよ?」
「もう一つの……才能?」
俺が気が付かないアルトの才能だと?
「……お色気か?」
言って後悔した。
アルトが凄く冷めたい目で俺を見ている。
「まあ、その才能も有りそうですが……」
「ええ〜!?」
しどろもどろになるアルト。
「私が言っているのは【神力】ですよ」
つづく。




