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ザ☆旅行記Ⅲ 愉快な仲間たち  作者: 小宮登志子
第2章 グレートガーデン
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ありがちな再会

 振り向いた先にいたのは、ご隠居様のお城で後宮候補生だった頃のルームメイト、エレン・M・フィッシャーだった。

「カトリーナさんなの? こんなところに、どうして??」

「あなたこそ……」

 わたしとエレンは、お互いに半信半疑で恐る恐る近づき、指と指を合わせた。そして、相手が夢でも幻でも幽霊でもなく、正真正銘、本物のカトリーナでありエレンであることを確認すると、感動のあまり、力をいっぱいに込めて抱き合った。

「よかった。無事だったのね。心配だったんだから」

 そして、エレンは声を上げて泣き出した。


 わたしはご隠居様のお城出てから紆余曲折あったけど、エレンもそれなりに苦労を重ねたようだ。恐ろしい魔女がエルブンボウを盗み出したうえに隻眼の黒龍を篭絡し、あまつさえドラゴニア侯(御曹司のこと)の騎士団に甚大なる被害を与えて逃亡してから(世間一般には、わたしのことは、そう思われているらしい)、後宮候補生は大幅に規模を縮小され、場所も御曹司が治めるドラゴニアの都に移転された。その間、「恐ろしい魔女」のお仲間に有形無形の迫害があったことは容易に想像がつく。

 後宮候補生の再編の際、エレン(及びカトリーナ親衛隊の面々)は選に漏れて暇を出されたが(つまり、厄介払い)、エレンの実家はそんなに裕福な家庭ではなく、早い話が困ってしまった。そこで、御曹司のつてでグレートガーデンのメイドの仕事を紹介してもらい、ここでハーレム付きメイドとして働くことになったという。

 エレンの今のメイド服はオレンジ色で、なかなかオシャレ。わたしの漆黒のメイド服とは大違いで、華やいだ雰囲気だ。これはマーチャント商会会長の趣味だろうか。


「ところで、カトリーナさんは、こんなところでなにをしてるの?」

 エレンは不思議そうな顔つきで尋ねた。あまり大きな声で言える話ではないけど、エレンになら、正直に話しても大丈夫だろう。

「このお城に侵入する方法を考えてたんだけど、いい方法が思い浮かばなくて、困ってたのよ」

「侵入? そうなの、すごいね。でも、魔女でもできないことがあるんだ……」

 なんでもできれば苦労しないけど、そうならないのがお約束、伝統的な魔法少女に対するアンチ・テーゼだったりする。それはともかく、エレンはしばらく考えてから、少し躊躇しつつ、

「あのね、わたしと一緒なら入れるんだけど、でも……」

「ほんとに!? そうさせてもらえれば助かるわ。ありがとう、エレン」

 わたしはエレンをギュッと強く抱きしめた。とりあえず入れれば、あとはなんとかなる。誰かに見咎められたら「新人メイドだ」と言っておこう。それにつけても、日頃の行いがよければ、困った時には何かしら、神の御加護があるものだ。

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