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ザ☆旅行記Ⅲ 愉快な仲間たち  作者: 小宮登志子
エピローグ(後日譚)
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賊の正体

 わたしたちは、あっという間に川を背にして賊に包囲されてしまった。これこそ本当の背水の陣。メアリーたちは馬車の周囲に集結し、武器を構えた。すると、

「カトリーナ様!」

 賊の一人がフードを取り、馬を降りた。

「あら!?」

 わたしは思わず身を乗り出した。その賊は、まさに、捜していたアーサー・ドーン、その人だった。


 その夜、

「ドーン、あなた意外と知恵もあったのね。こんな秘密基地まで作るなんて。まあ、飲みなさいよ」

 ここ、ドーンの山塞では、わたしたちの再会を祝し、酒宴が開かれている。南方に送り出した当初は非常に心配だったけど、ドーンは立派に務めを果たし、この地で山賊の親分として地道に強盗や略奪を繰り返していたようだ。

「カトリーナ様の言いつけ通り、戦闘部隊は相手にせず、輜重隊や隊商を襲撃していました。そのうちに降参した敵兵の中から仲間に入りたいという者も現れ、今では200人か300人か、え~と、かなりの数の猟犬隊隊員がいます」

 ドーンはほんのりと顔を紅く染め、胸を張った。なるほど、出発したときよりも隊員の数は大きく増えている。ドーンが多少でも将としての才覚を身につけてくれたなら、喜ばしい限りだ。山塞には、戦利品として、酒や食糧や金銀財宝のほか、武器や防具も蓄えられていて、経済的利益もそれなりに大きい。

「ところで、カトリーナ様、あの…… エレン殿は、いかがお過ごしで?」

「エレンなら元気よ。一緒にあなたを捜しに行きたいと言ってたけど、学校を作ってそこの先生に納まっちゃったから、今回は町で留守番してる」

「おお、先生ですか! さすがです。今度、勉強を教えてもらわねば。よし、張り切って勉強しよう」


 宴は続いた。子犬サイズになったプチドラは、酒樽に体ごとすっぽり収まっている。猟犬隊とメアリー配下の精鋭たちは、酒を酌み交わしているうちに、だんだんと打ち解けてきたようだ。なお、ほぼ野郎ばかりの中で、メアリーとマリアの人気は絶大で、周囲には人だかりができていた。二人とも、きれいだから……

 そして、宴がますます盛り上がり、ハチャメチャ度を高めていこうとしていた矢先、若者が一人、大慌てで駆け込んできた。

「お頭、ただいま戻りました」

「おお、今まで偵察ご苦労だった。酒や料理はまだまだあるぞ。好きなだけ飲め!」

「いえ、それよりも……」

 若者はドーンにヒソヒソとささやいた。さっとドーンの顔色が変わる。ドーンは若者の口を押さえ、目を動かしてキョロキョロ周囲を見回した。どうしたのだろう。緊急事態の勃発だろうか。

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