表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ザ☆旅行記Ⅲ 愉快な仲間たち  作者: 小宮登志子
第1章 銀色の使者
6/66

一時休戦

 わたしがうっとりとメアリーの技に見入っていると、

「すごいでしょ、マスター」

 プチドラはまるで自分のことのように言った。わたしは黙ったままうなずいた。

「くそっ! では、これならどうだ!?」

 猟犬隊の若者が数人、手に手に武器を持ち、メアリーに討ちかかった。多人数で襲いかかれば勝機はあると思ったのだろう。しかし、メアリーは慌てず騒がず、目を閉じて魔法の言葉をつぶやき、指先からは数条の光線がほとばしった。その光線は若者の体を貫き、一瞬にして血気にはやった若者たちを黒焦げになってしまった。

 ……ひぃー! バケモンだ!……

 あちこちから悲鳴が上がった。味方は激しく動揺している。これではどうあがいても勝てるはずがない。

「突撃!」

 メアリーが号令をかけると、敵の軍団は雄たけびを上げ、襲いかかった。結果は言うまでもなくこちらの惨敗、騎士団も猟犬隊も散々に打ちのめされたのだった。


 その夜、大幅に後退したわが軍の本営では、作戦会議が行われた。わたしとプチドラを除き、みんな、表情に苦悩がにじみ出ていた。騎士団にせよ猟犬隊にせよ、まったくいいところなく打ち負かされたのだから。

「これはまずいです。あの女、これほどまでに腕が立つとは……」

 ドーンは悔しそうに声を絞り出した。ここでいいところを見せて、政治的発言力を強めようという野心があったとしたら、いい薬だろう。

 その時、本営に大慌てで伝令が駆け込んできた。メアリーが副官とともにやって来て、「総大将に面会させてほしい」と言っているそうだ。プチドラはわたしを見上げ、にっこり笑った。予定通り、メアリー自らが使者となって再考を促しに来たのだろう。

「通しなさい」

 しばらくすると、メアリーが副官を伴って現れた。

「何か御用?」

「今日の戦闘でお分かりかと思いますが、力の差は歴然としています。無益な戦いは止めにしませんか」

「なにっ!」

 猟犬隊や騎士団幹部は一斉に色めきたった。ドーンは腕まくりまでして、今にも飛び掛らんばかり。

「そう言われてもね、すぐには決められないわ。つまり、降伏しろってことでしょ」

「それなら、明日から7日間、休戦しませんか。その間に話し合っていただければ……」

「7日間ね。いいわ。明日から数えて8日目の朝までに返事する」

「分かりました。よい返事を期待しています」

 そして、メアリーは副官とともに帰っていった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ