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ザ☆旅行記Ⅲ 愉快な仲間たち  作者: 小宮登志子
第8章 裁判と帝国宰相
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プチドラ(隻眼の黒龍)の証言

 プチドラは帝国大法官の許しを得て、証言を始めた。内容は、御曹司の軍隊に殺害されたと思しきご隠居様の死体を見たとか、ご隠居様から「エルブンボウと黒龍マスターの地位をカトリーナに譲るのでよろしく」と後事を託されたとか、わたしの証言に符合するものばかりだった。さらに、「エルブンボウ及び黒龍マスターの地位と、爵位が分離した場合には、前者が優先するのがドラゴニア侯爵家の家法であり、帝国法務院の先例」とも陳べた。これは初耳だ。

「プチドラ、今の話は本当?」

「うん。100年以上前の話だけど、相続絡みで紛争があってね」

 プチドラによれば、何代も前のドラゴニア候が長男に爵位だけ継承させて隠居した後、自分の弟の庶子をいたく気にいり、しかもその子が武芸に大変優れていたので、その子を自らの養子とし、エルブンボウ及び黒龍マスターの地位を譲ったという。その結果、長男と養子との間で相続をめぐる紛争が発生したが、その時には、帝国法務院の判決により、ドラゴニア侯爵家においてはエルブンボウと黒龍マスターの地位が主であり、爵位はそれに付随するものとして、長男の爵位剥奪及び養子の爵位継承が認められたそうだ。


 一般的に裁判所では、同じような事例は同じように扱わなければならないことになっている。プチドラが先例の話をすると、こちらの弁護人の顔がみるみるうちに蒼ざめていった。弁護人は脂汗を流しながら分厚い書物のページをめくり、やがて、アババと泡を吹いて卒倒した。

 突然のハプニングだけど、帝国大法官はポーカーフェースを崩さず、法官の一人と何事かヒソヒソと話をした。そして、お互いに顔を見てうなづきあい、ひと言、

「弁護人が気を失ったため、弁護人不在とみなし、これより休廷とする」

 帝国大法官は法官を引き連れて法廷から去っていった。


 わたしには何がなんだかサッパリ分からないが、プチドラは倒れている弁護人を見下ろしてゲラゲラと笑っている。御曹司の弁護人はチッと舌打ちし、御曹司、マーガレットとともに帰っていった。ツンドラ候はだらしなく大口を開けて眠ったままだ。

「プチドラ、これは一体、どういうこと?」

「この弁護人のミスだよ。今になってようやく気付いたんだ。この人、弁護人に向いていないと思うな」

 プチドラによると、今回の裁判では、先例を援用し、わたしがご隠居様より適法にエルブンボウと黒龍マスターの地位を譲り受けたことを証明すれば、わたしの爵位継承が認められ、その場合、告発しなくても御曹司を無一文で追放することができるはずだという。弁護人は、先例を失念していたか知らなかったという、弁護人としておよそ許されないミスに気付き、気が動転して倒れたのだ。

「可哀相に。最初に指摘してやればよかったのに」

「訴状自体、法的に意味が分からなかったから、弁論を聞くまで待ってみたんだ。でも、やっぱり、この人の考えてることは分からないな」

 ツンドラ候が「単細胞」なら、この弁護人も、とんだ食わせ者だったようだ。プチドラが前例を思い出したからよかったけど、そうでなければ、どうなってたことやら……

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