表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ザ☆旅行記Ⅲ 愉快な仲間たち  作者: 小宮登志子
第8章 裁判と帝国宰相
51/66

開廷前の一週間

 それから1週間、それなりに神経を使う日々が続いた。弁護人との打ち合わせは、帝都にあるツンドラ候の館で行うこととして、宮殿で出された料理はすべてプチドラに毒味してもらった(プチドラ曰く、「ドラゴンに毒は効かない」と)。

「ここまでしなくてもいいんじゃない?」

 プチドラは少々あきれていたようだが、

「わたしは小心者なの。寒い国の、口ひげがお茶目な独裁者よりも、もっとね」

 意味するところが通じたかどうか分からないが、プチドラはウンウンとうなずき、

「マスターはエマよりも用心深いんだね」

 ほめられているのかけなされているのか判然としないけど…… まあ、いいか。


 ツンドラ候は毎晩のように晩餐に招待してくれた。北の広大な領地を治めているだけあって、それなりに豊かなのだろう、宝石や貴金属で装飾を施した食器や、今まで見たこともない料理が並んでいた。

「俺様は、今までいろんな相手と戦い、ことごとく打ち負かしてきた。しかし、残念ながら、ドラゴンと戦ったことはない。そこでひとつ、頼みがあるのだが……」

 ツンドラ候は酔っ払った勢いで、プチドラに勝負を申し込んだ。

「勝負? あ~い……」

 プチドラもこういう勝負は嫌いではないらしく、隻眼の黒龍モードで受けてたった。

 いくら何でもドラゴンが相手だから、ツンドラ候の惨敗かと思いきや、意外なことに、結構、いい勝負。両者は一進一退の攻防を繰り広げ、30分たっても1時間たっても勝負はつかなかった。

 そして、最後には、引き分けとすることで両者が合意した。なぜかというと、戦っている間、館にはかなりの物的被害が出ており、このまま勝負を続けると、館が完全に破壊されそうだったから。

 ただし、後にプチドラにきいた話では、「力は半分程度しか出していなかった」とのこと。それでも、「今まで戦ったヒューマンのうち、ツンドラ候が最強だった」との評。


 こうして、1週間が過ぎた。わたしはプチドラを抱き、エルブンボウを持って、ツンドラ候とともに帝国法務院に赴いた。弁護人は書類を両手一杯に抱え、よろめきながら、ついてきている。

「さあ、今日が運命の法廷だぜ。わくわくするよな」

 ツンドラ候が言った。わたしは内心、あきれ顔。「あんたは弁護人に任せきりで何もしていなかっただろう」と言いたかったけど、そこは我慢。愛想笑いを浮かべ、

「そうですね。ただ、正直なところ、そう簡単に勝てるとは思えませんが」

「いいんだよ。勝てないにしても、少しでも、あの能無しのボンボンをへこましてやれば。勝てればラッキーかな。まあ、そういうことだ。負けたら、俺様の後宮においでよ。何も不自由はさせないからさ」

「……」

 わたしは思わず絶句……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ