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勅使来る

 次の日、わたしと隻眼の黒龍はトカゲ王国軍と別れ、帝国諸侯連合軍の本営に向かった。フサイン部隊長は名残惜しそうに見送ってくれた。トカゲ王国軍に帝国の言葉が分かる人は少ないので、仲間が一人でもいなくなるのは寂しいそうだ。

 諸侯連合軍の陣地の前では、ご機嫌のツンドラ候が待ち構えていて、本営まで案内してくれた。

「ツンドラ候、わたしに召喚状とは、一体?」

「それはつまり裁判なんだ。どういうことか、うーん、説明しにくい、いや、俺様にはサッパリ分からんのだが、とにかく、ドラゴニアの能無しのボンボンを政治的に抹殺するチャンスらしいぞ」

 何となく言いたいことは分かるが、意味不明。さすが「単細胞」。ツンドラ候の傍らでは、副官らしき小男が頭に手を当て「ああ」と天を仰いでいる。彼はツンドラ候に裁判等々の説明をしたのだろうが、ツンドラ候には理解できなかったらしい。

 わたしはちょんと隻眼の黒龍の体をついた。

「ねえ、プチドラ、裁判ということは、ツンドラ候が何か訴えたの?」

「うん、ツンドラ候か仲間の誰かが御曹司を告発したんじゃないかな。昨日見た召喚状には皇帝の印璽が押してあったし、とりあえず、行ってみれば分かると思うよ」


 諸侯連合軍の本営では、男が5人、プレートメールの上に赤いマントを羽織り、顔のある太陽が描かれた旗を持ち、わたしたちを待っていた。男たちの背後には、鷲の翼と上半身、ライオンの下半身をもつグリフィンが、人数分、大人しく控えている。

「あれは皇帝の勅使だよ。事件が大きいだけに、扱いも慎重なんだろうね」

 隻眼の黒龍が言った。赤いマント、顔のある太陽の旗印、赤色のドラゴンの三つは皇帝のシンボルだそうだ。ただし、費用等の関係で、ドラゴンではなくグリフィンを騎乗用・典礼用動物として用いているらしい。

「カトリーナ・エマ・エリザベス・ブラッドウッドと隻眼の黒龍をお連れしました」

 ツンドラ候は勅使に向かってうやうやしく一礼した。

「ご苦労であった。関係者が全員揃ったなら参ろうか。カトリーナ殿、そなたに乗り物は必要あるまいな」

「ええ、隻眼の黒龍がいますから」

 勅使は偉そうでも尊大でもないが、高級官僚的に事務的な感じがする。

「これから帝都に飛ぶんだ。大丈夫と思うけど、遅れるなよ」

 ツンドラ候はそう言うと、勅使と二人乗りで、グリフィンの背中に乗った(グリフィンは馬よりも二回りか三回りほど大きい)。同じ体勢で、御曹司もグリフィンに乗る。ただ、元気一杯のツンドラ候に対して、御曹司は青白い顔、なんだか心細そうだ。


「では、いざ、これより帝都へ」

 勅使のうち、多分、一番エライ人の号令で、グリフィンは次々に大空に舞った。隻眼の黒龍もわたしを乗せてそのあとに続く。さて、これから帝国の都、すなわち帝都。一体、どうなることやら……

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