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ザ☆旅行記Ⅲ 愉快な仲間たち  作者: 小宮登志子
第1章 銀色の使者
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メアリーの秘密

 プチドラはなかなか戻らなかった。ドーンたち猟犬隊は、早速、幹部が集まって作戦会議を開いた。ポット大臣は、今にも泣き出しそうな顔で書類の整理を始めた。

「大臣、いつものことだけど、悲観的なのね」

「あなたはマーチャント商会のメアリーの恐ろしさを知らないんですよ」

 大臣は、メアリーがいかにすごいかを語り始めた。たった一人で1万人の軍団を壊滅させたとか、身長20メートルの巨人とタイマンを張ったとか、バンパイアやリッチを魔法勝負で打ち負かしたとか、聞けば聞くほど味方にしたくなるような戦歴だ。

「でも、そんなにすごいなら、どうしてマーチャント商会に雇われてるんだろう。フリーランスでも十分にやっていけそうよ。それとも、よほどの高給をもらってるのかしら」

「一説によれば、身内を人質に取られ、仕方なくマーチャント商会に協力しているという話ですが」

 なるほど、「逃亡したり降伏したりすれば人質を殺す」と脅されれば、誰でも必死になって戦わざるを得ない。


 夜遅く、待ちくたびれたのでそろそろ寝ようかと思ったその時、プチドラが珍しく息を切らして戻ってきた。プチドラは、わたしの膝の上にぴょんと飛び乗ると、開口一番、

「マスター、お願いがあるんだけど」

「お願いって、なに?」

「メアリーを助けてあげたいんだ。」

 プチドラは今まで、姿を消してメアリーの肩に乗っかり、心と心で直接対話をしていたという(つまり、SF的にいうとテレパシー)。プチドラがメアリーから聞いたところによれば、数年前、妹のマリアがマーチャント商会に囚われたことが悲劇の始まりで(その詳細は話したがらなかったらしい)、それ以来、メアリーはマーチャント商会の尖兵としてこき使われているとのことだ。

「助けるのはいいけど、マリアがどこにいるか知ってるの?」

「場所はメアリーにも分かってたんだ。ただ……」

 マリアはグレートガーデンという町に囚われていて、それは最初からメアリーにも分かっていた。マリアを救出したくても、副官の小男がお目付け役として常に張り付き、行動を細かくチェックしているので、うかつに動けないらしい。

 ちなみに、メアリーとマリアの母親はご隠居様のご先祖、エマの妹で(そのため、メアリーとマリアはご隠居様の遠い親戚に当たる)、実はプチドラとメアリーも数十年か数百年か、とにかく長い付き合いとのこと(ドラゴンもエルフも寿命がものすごく長い)。しかし、ここ数年は連絡が取れなくなって、あまりよろしくないうわさが聞こえてくるばかりなので、心配していたらしい。メアリーはエマに似ているのだろうか。なんだか気になる。

 わたしは両手でプチドラを持ち上げ、顔を近づけて言った。

「わかったわ。許可します。でも、わたしも一緒に行くから、そのつもりでね」

 プチドラは「ええっ!?」と、目を丸くした。

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