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ザ☆旅行記Ⅲ 愉快な仲間たち  作者: 小宮登志子
第6章 南方の紛争
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戦争の原因

 翌日の昼前から、例によって作戦会議が開かれた。プチドラとわたしの前に、御前会議のようにトカゲ王国軍の幹部が並び、今後の方針について議論を行った。なお、リザードマンの言葉を理解できないわたしのため、浅黒い肌にスキンヘッド、口ひげが渋いフサイン部隊長が通訳をしてくれた。

 会議では、まず、この地を守り抜くか後退するかが議論の対象となった。正面から戦ってなかなか勝てそうにないことは、誰もが認めているようだ。ならば、リザードマンの領域、沼地・湿地帯まで諸侯連合軍を誘い込み、ホームの地の利を活かしてやっつけるのが理に適っていると思う。誘いに乗ってくれるかどうかが問題だけど。

 会議は時折笑いも交えながら、のほほんとした雰囲気で続いた。リザードマンの気質だろうか。言葉さえ通じれば何度か突っ込みを入れていたかもしれない。戦争している気がしないが、そもそも、根本的な疑問として、

「フサイン部隊長、基本的なことで恐縮ですが、戦争の理由って、一体、なんだったのですか?」

「本当は、トカゲ王国も戦争する気はまったくなかったのさ。成り行きでこうなってしまったんだ。仕方ないね」

 部隊長によれば、トカゲ王国の王室は「王」を名乗っているが、帝国での爵位は子爵に過ぎないので、国力に比べて爵位が低すぎるという不満が昔からあり、抗議の意味で、周辺諸侯の領地に侵攻を繰り返してきたそうだ。トカゲ王国としては、帝国内で堂々と王を名乗らせてもらえれば万事OKなのに、今回、帝国が諸侯連合軍を送り込んできたものだから、退くに退けなくなって、困ったということらしい。


「プチドラ、ちょっと……」

 わたしは、ふと思い立って、プチドラ(隻眼の黒龍モード)の体を指で突いた。

「昨日はかなり飲んでたけど、大丈夫?」

「うん。心配ないよ。アルコール大王だからね。でも、心配してくれてたんだ、ありがとう」

 どうやら大丈夫そうだ。自分でアルコール大王と言うだけのことはある。

「本題だけど、わたしとあなたで御曹司を挑発すれば、つまり、わたしがエルブンボウを持ってあなたと一緒に、御曹司の前で『ここまでおいで、バーカ』ってすれば、どうなるかな」

「御曹司は地の果てまで追ってくるだろうね。疑り深いけど、目の前にエルブンボウとぼくがいるとすれば、本質的に執念深い人だから」

「そうなの、それなら、うまくいくかもしれないわ。単純なおとり作戦だけど」

 わたしはプチドラに思いついたことを話した。プチドラは、「きっと成功するよ」と、賛成してくれた。


 会議は夕方の早い時刻に終わった。作戦はプチドラが提案し、リザードマンたちも「神の使いの発議によるもの」として賛成した(なお、本音としては、「そろそろ撤退したい」ということもあったようだ)。基本は、諸侯連合軍をリザードマンの領域の沼地・湿地帯に誘い込み、身動きが取れなくなったところを攻撃するというありきたりのものだ。通常なら意図はミエミエだけど、いいところを見せたい御曹司とすればトカゲ王国軍に「逃げられた」では格好がつかないし、エルブンボウと隻眼の黒龍を見せられれば、それを取り戻すまでは意地でも引き揚げるわけにはいかないだろう。なんとかなりそうな気がする。

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