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ザ☆旅行記Ⅲ 愉快な仲間たち  作者: 小宮登志子
第6章 南方の紛争
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印象的な中年のオヤジ

 宴会は、数人の捕虜を血祭りにあげ、神様へのイケニエとすることから始まった。リザードマンの間では、宴会の際に奴隷や捕虜を殺してイケニエにしたあと、その肉を客にふるまうのが定番らしい。

 宴会も佳境にさしかかると、エスニックな舞が披露され、リザードマンの領域では最高級の酒が盃に注がれた。でも、この酒はヒューマン向きではないという。メチルアルコールがかなり混じっていて、うっかり飲むと失明の危険があるかららしい。でも、ドラゴンはメチルアルコールでもブタノールでもプロパノールでも平気で、プチドラ(隻眼の黒龍モード)は酒の入った甕を頭からかぶり、文字通り、酒を浴びるようにがぶ飲みしている。プチドラがこんなに飲むなんて、正直、ビックリ。今まで猫をかぶっていたのだろうか。

 料理は、最初のイケニエの肉以外、常識的なものだった。魚介類、野菜、フルーツ等、通常一般の人間が食べても大丈夫そうなものばかり。なお、変わったところでは、恐竜の肉のステーキもあり、これはなかなか美味。恐竜を養殖し、その肉を帝国に輸出すれば、かなり儲かりそうな気がする。戦争が終わったら、リザードマンの王様に合弁会社の設立を持ちかけてみよう。


 宴もたけなわを迎えると、リザードマンは酔っ払ってラリルレロ状態、意味不明な叫び声を発したり、ひっくり返っていびきをかいたりしている。ただ、ラリっているのはリザードマンだけではなかった。それなりの数のヒューマンも、同じように酔っ払っていた。リザードマンとヒューマンで仲良く肩を組んで歌を歌っていたりもする。トカゲ王国では、ヒューマンでもリザードマンと同等の権利が認められているようだ。

 人種差別がないのは結構なことだけど、同じように品がないのはどうにかならないものだろうか。わたしがその乱痴気騒ぎに閉口して冷ややかな視線を送っていると、

「はじめまして、異国のレディ、リザードマン方式のパーティーは体質に合わなかったかな?」

 浅黒い肌でスキンヘッド、口ひげが印象的な中年の(ヒューマンの)オヤジが話しかけてきた。

「いえ、ここではセクハラ・パワハラがないだけでも、はるかにマシですよ。失礼ですが、どちらさま?」

「ははは。自己紹介がまだだったな。俺は騎兵隊第三部隊長フサイン。よろしく」

「わたしはカトリーナ。ぶしつけな気がして申し訳ないのですが、あなたとは言葉が通じるんですね……というか、わたしと同じ仲間?」

「確かに言葉の壁はあるね。ヒューマンとリザードマンでは全然違うからな。俺も最初は面食らったけど、慣れればなんとかなるよ」

 話によれば、もともとフサイン部隊長は帝国の生まれで、数年前にトカゲ王国に仕官したそうだ。その前は、帝国内で傭兵として各地を転戦し、抜群の軍功を上げていたという。しかし、悲しいかな、いくらがんばっても一介の傭兵、名誉とは縁がなく(報酬は得られるけど)、騎士や貴族に取り立てられる見込みも薄い(ゼロに近い)ので、ある日、思い立って、南方トカゲ王国の軍隊に仕官したとのことだ。

 トカゲ王国では、能力主義が徹底され、手柄さえ立てれば誰であれ出世することができ、しかも、もともとリザードマンの領域にはヒューマンが多く住んでいたことから、種族による差別も少なかったらしい。卓越した戦争の技術・知識を持つフサイン氏はトントン拍子に昇進を重ね、ほんの数年で現在の騎兵隊第三部隊長の地位に上ったそうだ。

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