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ザ☆旅行記Ⅲ 愉快な仲間たち  作者: 小宮登志子
第6章 南方の紛争
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フロントライン

「まだなの?」

 わたしは隻眼の黒龍の背中でぐったりとしていた。館を出てから10日余りたっているが、まだ着かない。普段ならほとんど重さを感じることのないエルブンボウでさえ、持ってるのが億劫だ。

「マスター、この調子なら、今日の夕方には着くと思うよ。だから、もう少しの辛抱」

「でも、今のわたしには『少し』でも一劫だわ……」

 帝国の南方、トカゲ王国との国境付近までかなり時間がかかるとは聞いていたけど、これほどのものとは思わなかった。今になって、メアリーとプチドラに任せればよかったかと、ちょっぴり後悔。でも、仕方がない。

 わたしたちは、ミーの町を出てから南あるいは南南東方面に進路を取り、延々と続く不毛の荒地あるいは山脈の上空を飛行中。途中で休憩など挟みつつ飛び続けること、今日で10日余り……、しかし、まだ、着かない。


 そして、この日も夕方になった。西方、はるか彼方の地平線上に、真っ赤な太陽がゆっくりと沈んでゆく。プチドラ(隻眼の黒龍モード)は「今日中に着く」と言ってたが、なんだか、そんな感じがしなくなってきた。

 わたしはガックリとして「ふぅ」とため息をつき、

「暗くなってきたわね」

「うん、そうだね。でも、ようやく到着したみたいだよ。マスター、あれを見て」

 隻眼の黒龍が示した先には、見た目、米粒ほどの物体が、うじゃうじゃとうごめいていた。

「あれがリザードマン?」

「いや、あれは帝国の諸侯連合軍だろうね。リザードマンは、それより、もう少し離れて陣を敷いていると思う。諸侯連合軍に見つかると面倒だから、ちょっぴり回り道するね。でも、心配しなくても、今日中には着くから」

 隻眼の黒龍は少し西方に向きを変えた。


 わたしたちは諸侯連合軍を遠目に見ながら飛んだ。しばらくすると、諸侯連合軍がいるところから見て南の方角に、東から西へと延々と続く壁(あるいは堤防)のようなものが見えた。

「あれは?」

「なんだろう。リザードマンが作ったものだと思うけど、実は、この辺りの地理はあまり詳しくなくて……」

「とりあえず行ってみれば分かるでしょ」

 わたしたちは壁に向かって飛んだ。壁に近づくにつれ、だんだんとその正体が明らかになってきた。

 壁は、万里の長城には及ばないが、一応、要塞線だった。始点と終点は、はるか先の方でここからは見えない。5メートル程度の高さに土や石やレンガが乱雑に積み上げられ、一定の間隔で物見櫓が設けられている。

「壁自体は、結構、いい加減な造りね。でも、正面から無理矢理攻めかかれば、相当な被害が出そうだわ」

 わたしは、ふと、つぶやいた。よく見ると、壁の前には壕が掘られ、リザードマンの歩哨が巡回している。そのリザードマンは、こちらに気付いたのか、あわてて壁の向こうに逃げ込んだ。

「降りるよ」

「えっ?」

 隻眼の黒龍は高度を下げた。いきなりリザードマンの駐屯地の真ん中に降りる気だろうか。本当に大丈夫なのかな。

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