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ザ☆旅行記Ⅲ 愉快な仲間たち  作者: 小宮登志子
第4章 新たな仲間と戦後処理
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不運な使者

 使者は尊大な態度で急ごしらえの謁見の間にふんぞり返っていた。

「皇帝陛下の使者をなんと心得ておるか! わしを待たせるとは何事か!」

「申し訳ございません。今しばらくお待ちください」

 ポット大臣は、特にへりくだることも逆に偉ぶることもなく、適切にかつ官僚的に応対していた。

 わたしはプチドラを抱き、ドーン、メアリーを連れ、謁見の間に赴いた。もちろん、最近お気に入りのオレンジ色のメイド服を着用し、およそ一国のトップとしては似つかわしくないいでたちで。

「使者ごときが何をいきがっている。用があるならきいてやるから、さっさと言いいなさい」

 わたしは急ごしらえの安物の玉座に腰掛け、無造作に言い放った。別に深慮遠謀があったわけではない。相手に合わせたまでのこと。

 使者は、当然のように、烈火のごとく怒り出し、

「この小娘が! 畏れ多くも皇帝陛下の使者を侮辱するとは言語道断!!」

 わたしは目でドーンに合図を送った。すると猟犬隊が帯剣に手をかけ、使者を取り囲んだ。使者はただならぬ気配に恐れをなしたのか、

「ま、待て…… 待ってくれ…… 恐れ多くも皇帝陛下の使者を斬ったらどうなるか、分かっておるのか」

「そんなこと、斬られる者が心配することかなぁ?」

 ドーンが使者の耳元でささやくと、さっきの元気はどこへやら、使者は「ひぃ」と小さく悲鳴を上げ、すっかり大人しくなってしまった。

 使者は猟犬隊に剣を突きつけられ、ブルブルと震えながら口上を述べた。要は、「わたしたちがウェルシーを不法占拠していることは明らかであるから、即座に武装解除して降服し、ウェルシーを引き渡せ。さもなくば武力行使も辞さない」ということだ。

 言い終わった途端、使者は猟犬隊にボコボコに殴られ、半殺しにされたうえで館からたたき出された。使者の従者が彼を適当に都まで送り届けるだろう。


 それを見ていたメアリーが怪訝な顔で、

「カトリーナ様、使者をこのように扱うのはいかがなものかと……」

「わたしたちがウェルシーを不法占拠している犯罪組織なら、帝国公法に使者の扱いに関する規定があるかどうか知らないけど、その適用は受けないでしょ。わたしがウェルシー伯なら話は別だけどね」

「確かにそのとおりですが……」

 ヘタレな使者だったが、帝国が正式に武力行使に言及したのは、すぐにでも攻めるぞという意思表示だろうか。あるいは単なるハッタリか。ドーンたちは喜んで「軍事演習をする」といって出かけたが、メアリーは怪訝な顔をして、

「おかしいですね。今現在、帝国にそんな余裕があるとは思えませんが」

 帝国にそんな余裕はない? 一体、どういう意味だろう。

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