表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ザ☆旅行記Ⅲ 愉快な仲間たち  作者: 小宮登志子
第4章 新たな仲間と戦後処理
25/66

捕虜の運命

 今回の戦いが終わり、メアリー、マリア等々、多くの人材を配下に加えることができた。マーチャント商会ウェルシー派遣軍からは、大量の武器や兵糧を取り上げたので、収支決算は大幅な黒字。ポット大臣によれば、「帝国公法上、敗れた軍が保有していた武器や兵糧の鹵獲は、勝者の権利として認められる」とのことだ。ついでに、(ポット大臣には内緒で)ウェルシー派遣軍の兵士が個人的に所持していた金品や宝石・貴金属の類も取り上げたのだが、これは帝国公法の類推適用として認められるだろうか。しかも、それに加えて……

「ドーン、頼むわ。手はず通りにね」

「任せてください」

 ドーンたち猟犬隊は、武装解除されたウェルシー派遣軍の護衛の任に着いた。帝国公法上、勝者には鹵獲の権利と同時に、捕虜を国外の安全な場所まで移送する義務もあるらしい。でも、わたしたちは法的にはアウトローな無法者集団、帝国公法などに構うことはない。

 わたしたち(騎士団を含め)は、ドーンたち猟犬隊を残し、一足先にミーの町に凱旋した。到着するや、住民の歓呼の声に迎えられたけれど、これはもちろん動員をかけた効果が大きい。


 武装解除されたウェルシー派遣軍のその後の運命については、次のとおり(ドーンの報告による)。

「さあ、おまえら、ここでUターンだ」

 国境付近に差し掛かると、ドーンは捕虜の行列を遮って言った。「何をバカな」、「ふざけるな」など、捕虜が口々に文句を言うと、ドーンは剣を抜き、

「逆らう者は、こうなる!」

 いきなり、近くにいた捕虜を斬り殺した。

「さあ、とっとと歩け! 言われたとおりにしないとぶっ殺すぞ!」

 捕虜に選択の余地はなかった。付近には町も村もない。通りがかりの旅人もいない(いたとしても、口封じのためドーンに殺されるだけ)。捕虜は既に武器を取り上げられ、戦闘能力は失われている。

 こうして、捕虜の死の行進が始まった。少しでも後れると、容赦なく斬り殺された。行き先は収容所、ゴブリンやオークと一緒にタダ働きしてもらおう。


 数日後、わたしがプチドラをひざの上に乗せ、エレン、メアリー、マリアとともに午後のティータイムを楽しんでいると、

「カトリーナ様、作業が終わりました」

 ドーンが戻ってきた。そして、わたしの耳元でヒソヒソと簡単に顛末を報告し、そそくさと立ち去った。

「今の人ってドーンさん? よく見ると、結構かっこいいね」

 エレンは無邪気に言った。捕虜を収容所に送り込んだことは、この3人に知らせていない。これは、プチドラでさえ知らない、わたしと猟犬隊だけの秘密だ。多分、ばれることはないだろう。ドーンには「できるだけ危険な仕事をさせ、できるだけ早く消耗し尽くすように」と言ってある。強制労働の過程で死んでしまえば証拠は残らない。ただ、歴史の闇の中に消えゆくだけ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ